↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺はイサーンからWokeして異世界へ  作者: ilxamz


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/7

第1章 石の裂け目と、太古からのささやき

「俺はイサーンからWokeして異世界へ。前世の知識こそが、俺に残された唯一の武器だ!」

魔法と恐るべき魔物が実在する新世界。しかし、論理的思考を信奉する元イサーンの野生児(サバイเบอร์)にとってみれば、そんな化け物どもは極上のプロテイン源であり、工夫次第で何でも美味しくいただける「食材」にすぎなかった!

必要なのは、少しの勤勉さ、運命に抗う不屈の精神、そして生き残るための合理的なロジックだけ。

神秘的なオカルト信仰と、科学的な知性が激しく衝突しあう困窮の時代の中で——。

これは、隠れ里「ドンバン村(大霊の森の村)」の村長の息子であり、かつて自身の魂が慣れ親しんだ故郷を「バーン・ノーンヒン(石の池の村)」と呼ぶ、七歳の少年・アルティウス(Arthius)の物語である。

彼は前世の知識という全財産を注ぎ込み、荒れ果てた大地を蘇らせる。土手を築き、貯水池を掘り、古代の原始的な農業を「新時代」へと塗り替えていくのだ。発酵や塩漬けによる食糧保存の知恵を広め、完璧な灌漑(かんがい)システムを構築する。

これらのかけがえのない基礎科学と、魔力を合理的に運用する技術を武器に、彼は村を繁栄へと導く。そして、襲いかかる天災、飢饉、そして民を苦しめる苛烈な搾取から、愛する人々を絶対に守り抜いてみせる!

挿絵(By みてみん)

 激しい嵐の雨音が、途切れることなく叩きつけていた。吹きすさぶ風に、藁葺き屋根の小屋がぎしぎしと震える。湿った土の匂いと雨のしぶきが、暗闇の中に濃く立ちこめていた。


 その真夜中、幼い少年は不意に飛び起きた。息は荒く乱れ、痩せた体は冷や汗でぐっしょりと濡れている。外の空気は骨身にしみるほど冷えきっているというのに。


 またあの光景だ……。燃えさかる真っ赤な炎。鳴り響く銃声。前世で政治的な対立がこじれ、果てしない暴力へと膨れあがっていく中で飛び交った、狂ったような罵声。そして、大地を揺るがす轟音の爆発。


 記憶の中の彼は、混乱した群衆にまぎれて必死に逃げ惑っていた。周りには、自分たちは神聖な正義のために戦っているのだと信じて疑わない人々がいた。やがてすべてが真っ白な虚無の光に呑み込まれ――気づけば、彼はこの新しい世界で、少年の体に目を覚ましていた。信仰と魔法と、説明のつかない神秘に満ちた世界で。


「アティウス……どうしたの、また?」


 耳元で、優しく穏やかな、気づかいに満ちた声がした。アティウスは身じろぎして、この世界での母を振り返る。新しい世界で、誰よりも自分を愛し、世話を焼いてくれる女性だ。


「なんでもないよ、母さん……ただの夢」


 できるだけ素朴な言葉で答えたが、胸の内は激しく波打っていた。彼は母に本当のことを言わなかった。あれはただの夢ではない。魂の奥底から掘り起こされた、前世の痛ましい「記憶」なのだ。


 この体の名はアティウス。村の長の息子である。村の名は「ヒドゥン・フォレスト・ヴィレッジ(隠れ森の村)」。その古い呼び名を初めて耳にしたとき、彼は魂に染みついた癖で、思わず「ドンバン村(バーン・ドンバン)」と口走ってしまったものだ。


 ここは大きな森のほとりにある小さな村で、アスカ王国の辺境に位置している。周囲は半砂漠の草原が広がり、人類文明の黎明期のメソポタミアによく似た風景だった。魔法が手に触れられる現実として存在し、凶暴な魔物が人の命を奪おうと待ちかまえ、数えきれないほどの宗教や教団が村人たちの心の拠りどころになっている。もっとも、理屈を重んじる元青年の目には、そうしたものはときに迷信じみて、道理に合わないものに映るのだったが。


  *


 翌朝。昨夜の雨が残した湿り気がまだ消えないうちに、村の警報用の青銅の鐘が、けたたましく打ち鳴らされた。間断なく響き渡る音に、人々が浮き足立つ。


「黒牙イノシシが森から出てきたぞ! みんな、柵のところへ急げ!」


 最前線から怒鳴り声が飛んでくる。アティウスはためらわず、村長である父の後を追って走り出した。七歳の短い足を、必死に回して。竹と丸太の柵にたどり着いた彼は、目の前の光景に思わず目を見開いた。


 巨大なイノシシが、柵の前に立ちはだかっていた。体は成獣の野牛よりもはるかに大きい。両の目は、鍛冶炉の中で燃える炭のように真っ赤に見開かれ、唇を突き破って伸びた湾曲した長い牙は、鋼の剣のように鋭く頑丈に見えた。


「低級の魔物だが、力はとてつもない。人間なんぞ、あっさり殴り殺されるぞ」


 父が張りつめた険しい声で言う。愛用の青銅の槍の柄を両手で固く握りしめ、血管が浮き上がっていた。


 屈強な村人たちが取り囲み、青銅の槍を突き立てる。だが、まるで効き目がない。刃が当たるたびに、石板を突いたような硬い音が響く。魔物の皮膚は水牛の革を幾重にも重ねたように分厚く、古びた青銅の武器など、いとも簡単に跳ね返してしまうのだ。


 アティウスは後ろに身を隠したまま、黙って状況を見つめていた。鋭い視線で周囲を観察し、活路を探す。ふと、村の青銅炉のそばに、まだ消えきっていない熱い炭の山が目に留まった。


 ――その瞬間、サバイバルに慣れた元イサーン人の頭の中で、情報がつながり、閃きが走った。


「父さん!」アティウスは声の限りに叫んだ。「肉の脂を煮出した湯を、あいつの目の前の地面にまいてください、急いで!」


「ん? なぜ脂の湯などをまくのだ?」


 父が戸惑って振り返る。


「いいから早く! 僕を信じて!」


 奇妙な思いつきばかり口にするが、不思議といつも結果を出す息子だ。父はその信頼から、すぐさま指示を飛ばした。村人たちは脂を煮出した湯を汲み、イノシシの前の乾いた地面に素早くぶちまけた。地面はたちまち、つるつるに滑るぬかるみへと変わる。


 その間にも、アティウスは時間を無駄にしなかった。炭かき棒をつかむと、まだ赤々と燃える炭を集め、風上にあった乾いた草と湿った木くずの山へと放り込んだのだ。魔物のすぐ近くである。


 白く濃い煙がもうもうと立ちのぼり、つんと鼻を突く刺激臭が魔物の目と鼻孔を直撃した。黒牙イノシシは慌てふためいて鼻息荒く鳴きたてる。煙が目にしみて、何も見えない。そのうえ、突進しようとした足が泥に取られ、バランスを失った。巨大な四本の脚がつるりと滑り、ごろんと横倒しになる。


 父はこの千載一遇の好機を見逃さなかった。村人たちを率いて一気に飛びかかり、鋭利な青銅の槍を、柔らかい腹の急所へと突き立てる。


 森じゅうに断末魔の絶叫が響き渡った。巨大な魔物は、泥の中にどうと崩れ落ち、そのまま動かなくなった。村人たちは安堵と喜びに、いっせいに歓声を上げた。


「どうやったんだ、アティウス?」


 父は息子のもとへ歩み寄り、しゃがみこんで、その知恵に舌を巻きながら尋ねた。


 アティウスは少し言葉に詰まった。魔法も呪文も使っていない。この世界の身体能力を高める「技(テクニック)」すら、ひとつも使っていないのだ。ただ、身の回りの知識と観察を使っただけである。


「だいたいの動物は、煙と火が怖いんだよ、父さん。それに、ぬかるみだと踏ん張りがきかなくなる……それだけなんだ」


 あまりにも単純で、自然の理にかなった答え。周りの村人たちは、困惑して顔を見合わせた。この七歳の子どもの理詰めの考え方は、神聖な呪文を唱えるのと同じくらい、不思議で得体の知れないものに映ったのだった。


  *


 その日の夜。村は静まり返り、虫の音だけが響いていた。


 ドンバン村の祈祷師――獣皮の衣に奇妙な護符をじゃらじゃらと下げた老人が、アティウスの寝所を訪ねてきた。老人は彼の前に座り、白く濁っていながら底の知れない深みをたたえた目で、少年をじっと見据える。


「わしには見えたんじゃ、おんしの魂の中に……誰かが、おんしの夢を通して、じっとこちらを見ておる」


 しわがれた声に、部屋の空気が一瞬で冷え込んだ。老人はゆっくりと、しわだらけの手を開いた。そこには、漆黒の石板が一枚。その表面には、幾重にも重なる円の文様が刻まれ、美しくも不気味な気配を放っている。


 アティウスの指先が石板に触れた、その瞬間。奇怪な幻影が、頭の中で轟音とともに炸裂した!


 それは壮大な大都市の姿だった。天を突き刺す、巨大な鋼鉄の塔。想像上の最先端の機械のような、奇妙な建造物。そして、その栄華を極めた都の上空に、巨大な黒い影が覆いかぶさっている。すべてを滅ぼし尽くす凶兆のように。


「来訪者よ、旧き世界からの……ついに、お前を見つけた……」


 かすかで、しかし力強い声が、鼓膜の奥で反響する。


 アティウスは恐怖に全身を跳ねさせ、慌てて石板から手を離した。石板は地面に落ちて音を立てる。老いた祈祷師の顔は、紙のように青ざめていた。体は震えている。やがて、老人は、少年の平穏な日々を永遠に揺るがすことになる、決定的な言葉を口にした。


「百年前……おんしと同じように、別の世界からこの地に生まれ変わった者がおった。そしてその男こそが……『科学技術』と呼んだものによって、大陸の半分を滅ぼした者じゃ」


  *


 はるか彼方、底知れぬ闇に沈む深い森の奥。冷たい風が吹き抜ける。


 真夜中、一対の金色に輝く目が、ぱっと開いた。今、それは何か不思議な合図を受け取ったのだ。そして静かに身を起こし、音もなくドンバン村へと向かい始めた。

私自身はタイのイサーン(東北地方)出身なのですが、ここでの暮らしはどこか「異世界」に通じるものがあると感じています。

作者はまだ日本語が未熟ではありますが、どうしても皆さんにお届けしたい物語があり、執筆に挑戦しました。

もし文章の表現でお見苦しい点や不自然な部分がございましたら my_apology ล่วงหน้าด้วยครับ。これからもより良い作品をお届けできるよう、精一杯精進してまいります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。