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そういう事なんだよね



 後片付けも慣れたもの。ちゃちゃっと《洗浄》祭りして、作った〈土〉属性物は、《解放》して元に戻すだけ。


 バーベキューの片付けって結構面倒で、焦げついたり、炭の後処理とか、食器類もベタベタになる。水回りの設備が近くにあればいいけど、そうでないと、もう大変。ラップやアルミホイルを活用しても、大変な事に変わりはない。


 楽しんだ後の片付けだから、仕方ないんだけど、揉める原因にもなるからね。人それぞれにやり方や拘りがあったりなんかしちゃったりしてね。


 でも大丈夫。ここは魔法の在る世界。ひゃっはー! 《洗浄》魔法が大活躍。汚れ? 1発ですが? 焦げ付き? 問題ないね。片付け? アイテボックスに収納するだけ。うーん。ないすっす。これならもっとキャンプも流行るのに。


 虫? 煙? 暑い? 寒い? 関係ないね! 《エアカーテン》で万事解決。快適空間を確保します。明かりだって、任意の場所に灯し放題だよ? 露天風呂もあっという間に出来上がり。ふふふ。


 これのどこにマイナス要素があるのでしょうか。俺には思い当たらないね。魔法って凄いね?


 あ。MP関係なしでここまで出来るのは、俺だけかもしれないや? あはは。 



  * *



 2人には、『旅人の小屋』で仲良く休んでもらう事にした。そう言えば、こんな感じで野営するのって? こっちの世界に来た時以来かな? あれも野営って言えるよね? でもなぁ、安全を考えて壁とか作って囲んじゃったらからな。微妙だよな。


 それ以外では、シェルター作って地下に潜ってたしな。おお。これはこれで、新鮮かも。でも、この状態での1人の夜は怖いかも。試しに明かりを消してみた。月明かりしかないからね。ネオンなんて見える訳がない。森の静寂。風の音。大自然。魔法が使えなければ、多分こんな事はしないと思う。だって、怖いの嫌だから。うん。オイラ、デリケートなんだよ?


《照明》点けよ。いや。ここはやっぱり《ランタン》の方がいいのかな。キャンプと言えば、松明か? いや、キャンプファイヤーはやり過ぎだし、やっぱり《ランタン》にしよう。



 ふー。まだ夜は長い。スマホの電波が通じれば、暇潰しなんてあっという間なんだけど。いつの間にか空が明るくなってたなんて、今ではいい思い出だ。アホやね。さて、何をしようかな。寝ちゃダメだし。今日はお昼寝させてもらったから、交代はなし。終日オレのターン。


 魔法の検証するのが一番なんだけど、集中し過ぎると危険だからな。ちゃんと見張りもしとかないといけないし。と言う事で、夜の見張り中だけど、穏やかな夜で眠たくなってきたので、オデルローザでの地下施設作成の報酬として受け取った『験者(げんじゃ)の石』。こいつを(いじ)ってみる事にした。


 ずっと気にはなってたんだけど、やっぱり怖かったからね。名前からして一癖ありそうだし。


 しかも、『所持している者により効果が変わるとされている謎の石』。なんて説明されたら、特別感あるよね。俺に合わせた効果って何なのさって感じ? あんた、あの子のなんなのさ?


 この石が身代わりとなり、命を救われた。

 この石のお陰で、捜し物が見つかった。

 この石のチカラで、特殊な能力を授かった。


 なんて怪しい言い伝えまであるんだよ? あくまでも言い伝え。オイラ実験台だよ? 実験するのは好きだけど、されるのは初めての体験だからね。凄いイヤ。だって怖いから。


 報酬として貰った物だし、奴隷商のセバイスさんが手配した、俺が間違いなく驚く事になるっていうお墨付きの石だからね。しかもその後、俺から感謝される事間違いないって、自信満々だったからね。


 断れる訳ないよね? あはは。セバイスさん。実名は『セバスチャン』だからね。『セバスチャンさん』って笑いながら呼んだ日には、首が飛んでくからね? もちろん物理的な意味で。あはは。呼べねー。人物像にピッタリな良い名前だと思うんだけどなぁ。残念です。



 大きな期待はせずに所持はしてるんだけど、アイテムボックスの『1枠』を使うっていうのも、気になるんだよね。何か特別な意味があるんだろうね。


 そう言えば、『スペード』と名乗っていたという『奴隷狩り』の1人も、アイテボックスの『1枠』を使って、『隷属の首輪』を15個も所持していたんだよな。まとめて袋にでも入れてしまえば、『1袋』として『1枠』で済むのにね。うーん。どうでしょう? また長嶋さんですか?


 この辺は考えても答えは出ないよね。うん。止めた。


 でもなぁ。全世界から感謝のお便りが届くレベルのプライスレスな価値のある代物ってさ、そのお便り見たいよね? 若干ではあるけど、騙された感じがするのも仕方ないよね?


《スルー》したにも関わらず、まだ気になるレベルだからね。でもさ、こんな面白そうな物を渡されちゃったらさ、弄りたくなるのがオイラの悪い癖。


 爆発したらイヤだけど、この前の〈MP注入〉実験は上手くいったからね。万が一の時には、その『ありがた~い言い伝え』の通りに『身代わりになって助けて』くれるんでしょ? 新たな能力って言うのも捨てがたいけど、命の方が大事だからね。お願いしますよ?



『験者の石』。不思議な所が隕石(いんせき)みたいな感じ? 神秘的って言うのかな? どす黒い石の中に、深い赤色が所々に混じり合っている。脈打ってはないよね? 何か不気味にも思えてくる物体だな。でも、ずつと見てられるような気がしなくもない。


 魔石と言われれば、魔石だと思うんだけどな。変な名前が付いてるけど、もしかしたら、まだ知らない高ランクの魔石なのかもね。魔石のランクは、『緑→赤→青→黒』まで分かってるけど、その上? 黒の中に赤色が混ざった魔石。うん。有り得るな。あくまでも予想だけどね。予報じゃないよ?



 さて。ここからが本番だ。ゆっくり注入していけばいいかな。両手で験者の石を持ち、《MP注入》。出来るだけゆっくりと。じわりじわりと注入だ。


 …………


 …………


 ……



 放送事故かと思われるくらい反応がない。屍のようだ。石だからね。

 


 あっ。アイテムボックスの『□MP専用貯蔵庫』のMPが無くなった。おう。地味に効くねぇ。せっかく貯めてきたのに。ミラの貴重な協力により、毎日貯めてきたんだよ。凄いな。まだ注入出来そうだぞ。これは、あれだな。また1つ課題が増えたって事だな。何となくだけど、入るモノは入れときたい?


 魔石と同じなら、一段と強く光ってお仕舞いなんだろうけどね。それでも万全の状態にしておきたいと思ってしまうのは、何でだろうね。オイラ、デリケートだからかね? 臆病なんだよ。ぐはっ! 《スルー》


 ノリツッコミからのダメージ回避。これからのトレンドになる事間違いなし。



 日課がまた1つ増えた所で、妄想タイムは終了です。



「どうしたの? アリー。眠れなかった?」


 眠そうな顔したアリーが起きてきたみたい。


「あ、はい。目が覚めちゃいまして。まだ眠いですけど、タビトさん1人で見張りも大変だろうから、様子を見に来ました。お邪魔でしたか?」


「いや。邪魔ではないけど、眠いなら無理しなくていいからね。環境が変わってばかりだから、体にも良くないと思うんだけどね」


「はい。もう慣れたと思っていたんですが、あの岩山部屋が快適過ぎました。安心して眠れるって、本当に贅沢な事だったんですね」


「はは。そうだね。町の宿屋でも何が起こるか分からなかったし、それに比べて洞窟部屋や岩山部屋はいいよね。静寂と安心。余程の土魔法の使い手が来なければ、まず侵入は難しいと思うからね。家具さえ整えてやれば、快適な住環境である事は間違いないよね」


「はい。そうです。あんな凄い物を簡単に作っちゃうなんて、タビトは規格外です。ふふふ。もちろん、良い意味でですからね」


「ははは。褒め言葉として受け取っておくよ。あ。じゃあ明日からはシェルターを作って、そこで休もうか。そうすれば見張りなんてする必要なかったよね? あはは、何やってんだろうね。バーベキューなんてやっちゃって、その勢いでキャンプする気でいたんだよね」


「えー。何ですかそれは。いつもみたいにシェルターを作らなかったから、何か意味があるのかと思いましたよ。小屋まで出して点検してましたし。あはは。タビトさんでも、そんな事があるんですね」


「えー。こんなモンだよ? つい、うっかりなんて、いつもの事だからね? 気が付いたら教えてね? アリーの方がしっかりしてると思うからさ。ははは」


「ふふふ。はい。分かりました。これからは、何か気が付いたら言うようにします。でも、そんな一面もあるって知れて、何か嬉しいです。起きてきて良かったです」


「えー。そんな事で喜ばれても嬉しくないよ? まあいいけどさ。どうする? 何か飲む? それとも、また眠れそう?」


「はい。何だかスッキリしました。ぐっすり眠れそうです。ありがとうございました。では、おやすみなさい」


「うん。おやすみ」



 オイラは、もふもふしようかな。


 違った。毛布毛布、どこやったっけ?


 ちょっと寒くなってきた? 夜明けも近いのかな。《全身空調》発動させてるから、寒さは感じないはずなんだけどね。


〈全身空調〉。体に〈風〉を纏わせ空気の層をつくり、各属性で空気を調整する。断熱性、遮音性あり。空気を循環させ吸排気も行う。〈火〉暖房〈水〉加湿〈風〉除湿〈雷〉防虫〈氷〉冷却。


 こんな便利な魔法まで在るこの世界。魔法も道具も使いよう。俺は、生活を豊かに、楽しく生きて行けるように活用するのであります。



  * *



 ちゅん、ちゅん、ちゅん


 中、中、中。来る時は連続でツモルものであります。それも、切った後に限ってね。ふん。やれやれ。麻雀やりたいな? こっちの世界にもあるのかな?


 この鳥は、何て言う名前なんだろうか。どこに行っても居るよね? 鳴き声も同じだし。朝しか聞こえて来ないけどね。今日も良い天気だ。もう、雨なんて降らなくてもいいんだよ? せめて、旅の途中で大雨とかは止めて下さいね? フラグじゃないからね?



 特に異常なし。穏やかな良い夜でした?



「うーーん。流石にちょっと眠いかな。《洗浄》×3」


 うーん。スッキリっす。いいよね〈洗浄〉。もう止められない、止まらない。かっぱのマークだよ? 綺麗さっぱり、お口の中までスッキリなのであります。


 何でも、俺の〈洗浄〉は特別らしく、普通は着ている服まで綺麗には出来ないらしい。何でだろうね? やっぱりそれも『生活魔法』クオリティ? 良くも悪くも生活魔法。俺は好きです生活魔法。ありがとう生活魔法。



 さてと。今日も1日、頑張って移動しますかね。



  * *



「おはよう。ミラ。よく眠れたみたいだね」


「おはようなのじゃ、タビト。今日もグッスリなのじゃ。こういう小屋での寝起きも悪くないのじゃ。

 それより、昨日は1人で大丈夫だったかの? わしも交代すると言うたのに、無理する必要はないと思うのじゃ。今日からは、しっかり交代制にするからの。1人に負担を掛けるのも、いい気はしないのじゃ」


「うん。ありがとう。でも、良い事思い付いたから、もう大丈夫だよ。交代制の見張りは要らなくなると思うから。今日からは、シェルターを深く作って、そこに馬車も入れちゃうからね。早く気が付けば、昨日の見張りも要らなかったんだけどね。ははは」


「なんじゃ。そんな事も出来るのか。まあ、それもそうかの。おぬしの規格で考えれば不可能ではなさそうじゃからの。小屋を出したから、そこまでの事は出来ないのかと思ったのじゃ」


「まあ、まだやった事はないけど、多分いけると思うよ? それなりに強化されたからね。まあ、夜のお楽しみ? 張り切って作ってみるよ」


「まあ、おぬしがいけると言うのなら、いけるのであろうな。それなら安心なのじゃ。おぬしもゆっくり休めるからの」


「うん。ありがとう。気を遣わしちゃってたみたいだね。見張り役も初めての事だったから、それなりに良い経験になったと思うよ。やらなくていいなら、もうやりたくはないけどね」


「そうじゃろうの。決して楽しいモノではないのじゃ。わしも、敢えてやりたいとは思わんのじゃ」


「ははは。やっぱりそうだよね。疲れるだけだしね。

 あっ、おはよう。アリー」


「おはようございます。タビトさん。ミラさんも、おはようございます。ちょっと寝過ぎちゃいましたか?」


「あい、おはようなのじゃ。まだ日が昇ってきた所なのじゃ。まだ早いくらいじゃから、気にする事はないのじゃ」


「うん。そうだよ、アリー。気にしなくていいからね。急ぐ訳でもないし、ゆっくり眠れたのなら良かったよ」


「はい。ありがとうございます。もうグッスリでした。じゃあ、早速朝食の準備をって、……もう出来てますね。すいません何から何まで」


「ははは。これも気にしないでいいよ。ずっと起きてて、やる事なかっただけだからね。じゃあ、みんな揃ったから早速食べようか。2人とも座って、座って」


「うむ。では、いただくとするのじゃ。旅の途中で、こうして温かい物が普通に食べられるというのも贅沢な事なのじゃ。タビトには感謝じゃの」


「はい。感謝しかないです。いつもありがとうございます。これからは私もお手伝いしますからね。というか、私に任せて下さい。こういうのは、私の大切な仕事ですから」


「うん。分かった。出来る時は手伝うけど、これからはアリーに任せようかな。その方が食事も美味しいからね」



 俺の場合は、出来合いの料理をマジックバッグから出してるだけだからね。盛り付けとかにも華がないし、出してる料理も、その時の気分で適当だからな。


 それに比べて、アリーの料理や盛り付けは、栄養とかも考えられてるし、美味しそうなんだよな。笑顔でやってくれるから、余計にそう感じるんだよね。愛情たっぷりってヤツなのかな。その言葉の意味がよく分かる気がするよ。ありがとうね。



「じゃあ、食べようか。「「いただきます!」」」



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