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脱出鬼ごっこ。  作者: 桜餅葉 杏
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夏川のお迎え

「そういえば、保健室前から動いたらさっくん気づくかなぁ」

「保健室前にずっといたら紗羽先生にまた誰かが捕まっちゃうよ」

「あ、そっかぁ。じゃあ携帯に連絡すればいっかぁ」


携帯。スマートフォンの存在をすっかり忘れていた。

私は制服のポケットに手を入れる。何も無かった。

走ってるうちに落としたのだろうか。

いや、最初から無かったのかもしれない。


「普通制服に入ってたら重みで気づくだろう」


体育館の壁に寄りかかって冬里くんは言った。

しゃがんで草を引っ張ったり結んだりしている紅葉ちゃんの横に並んで、私もしゃがむ。


この世界に連れてこられ、机の上で目が覚めた時。

誰かに連絡しようとか、ゲームアプリで遊ぼうとか、SNSにこの事について呟こうとか思わなかった。


「えぇ〜、不便だよ。」

「今更何を」


冬里くんは深くため息をついて、呆れたというように腕も組んだ。


フェンスを越えたら、全てが消えたように真っ暗な闇が広がっている景色を見る。

見慣れたな、と思う。

動かない月も、キラキラ輝く星はLEDなのではないかと思うし、それでもここは現実なのだ。


何、当たり前なことを考えているのだろう。

そう、夢ならもう醒めているはずだ。


今は何時だろう。

お腹は不思議と空いていない。

眠いと思うこともない。


ただ、鬼に捕まる恐怖心から人を裏切って。

私が描いた絵のように、美月先生の言ったように絶望が希望にかわること。


希望はまだわからない。

たしかに、絶望は味わったのだ。

それならあとは、元の世界へ帰るという希望が訪れるだけだと思う。


「この世界って雨降るのかな」


根から抜いた雑草をさらに細かくちぎりながら紅葉ちゃんが言う。


「わからない」


冬里くんが変わらない姿勢で応える。


「雪は降るのかな」

「まず季節は変わるのかな」

「わかんないよ」


あはは、と紅葉ちゃんと笑う。

この世界はわからないことだらけだ。

そのわからないことは仮面に聞いてまで知りたいことではない。


「誰か夏川くんのこと、迎えにいく?」


私が聞くと、2人はお互い顔を見合わせた。

そして吹き出す。


「ちょ、何さ」

「自分から犠牲になりに行きますっていわないでしょ」

「ということでうめちゃん行ってらっしゃい!」


は、と声が押し出た。

きっと今の私は間抜けな顔をしているだろう。


「なんでさ、冬里くんは」

「ちょっと遠慮」

「紅葉ちゃん」

「あいつ嫌い」


私だって遠慮したいし、去年のクラスメイトっていうだけだ。


「うめちゃんは裏切って裏切られた仲でしょ」

「いや、えぇ・・・・・・」


これはもしや、言い出した私が悪いのか。

2人はもう行く気が無いのかいっせーのーせ1、と声が聞こえた。


しかたない、と立ち上がる。

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