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脱出鬼ごっこ。  作者: 桜餅葉 杏
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保健室の先生

「夏川くん、保健室前にいるんじゃないかな」

「そういえば、朝の時間にそんなこと言っていたっけ」


職員玄関から校舎内に戻って保健室前へと向かう。

作戦会議の時、報告し合うために集まろうと言ったのは夏川くんだ。ダメもとでも行く価値はあるだろう。

夏川くんが扉に体育座りしているのが見えた。


「夏川くん」

「さっくん」


2人で名前を呼んで気づかせる。

夏川くんは立ち上がると片手をあげた。


「うめちゃんがこの世界から脱出する方法を考えたんだよ」

「出られるかわからないけど」


紅葉ちゃんが私の考えを説明した。

夏川くんは目を丸くするとにやりと笑った。


「んで、それを報告するには冬里を探すしかないと」

「心当たりはある?」


私がそう聞くと、夏川くんはまたその場に座った。


「探しに行くんでしょ、なに座ってんのさ」


紅葉ちゃんが立ち上がらせようと、夏川くんの背中を膝で押した。

夏川くんはそれを気にする様子もないまま、廊下の壁に背を預けた。


「作戦会議の時、冬里もいたろ。あの話を聞いていたなら来てくれるだろ」

「冬里くんのこと、信用してるの?」

「この世界から出るために集まんなきゃいけねぇんだろ、仕方ねぇよ」


夏川くんは吐き捨てるように言った。

冷たいなと思っていると、保健室の小窓から人影が見えた。

鬼かと体を強ばらせる。

ガラリと戸を開けて出てきたのは冬里くんだった。


「保健室の先生に捕まった」


冬里くんは早口でそう言うと廊下を走った。

なんで焦ってるんだ、と夏川くんが呟く。

保健室の扉に目を移すと、白衣を着た紗羽先生が出てきた。

そうだ、先生は生徒を捕まえたら目覚めまで待たなければいけないんだ。

それなら保健室内にいるはずだ。


夏川くんはバランスを崩しながらも立ち上がり、私たちは冬里くんの後を追いかけた。

紗羽先生の靴音も、後ろからカツカツと聞こえる。


ふと頭によぎる、先ほど夏川くんと冬里くんに突き飛ばされた光景。

だめだ、そんなことは。

わかっているけれど、体は言うことをきかなかった。


少し先を走る夏川くんの左腕を掴む。

引き寄せるように力を入れた。

紅葉ちゃんに目配せすると、紅葉ちゃんの目は笑っていた。


「ごめん、さっきのお返し」


私はそう言って夏川くんの先を走る。

後ろから捕まえたと声が聞こえた。

ふざけんなよと背中にぶつけられた。

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