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次はもっと楽をしたいね

 そのまま従業員たちに治療されながら、プリズムポイズンワームの説明をした。

 こいつに関しては全部俺がやるといっても、やはり最初から最後までをすべてやるのは無理だ。

 もちろん死骸も猛毒。俺が追放される原因になった排泄物もそうだ。

 魔物は食べなくてもいいはずなのに、匂いなどで食べるものがあると判ると食べたがる。

 そしてそのまま与えなければ共食いだ。面倒くせえ。

 人間という連中にとって魅力的な餌が常にある環境では、どうしても避けられない問題な。

 死骸の方は言うまでもないね。殺してレベルを上げるわけだし。


「それで、ちゃんと用意はしてくれているのか?」


「まさか今から用意するつもりだったのかねぇ……クヒヒヒ」


 聞くまでもなかったな。

 連中の部屋や潰したレベル部屋の掃除までやっていたら、体が幾つあっても足りない。

 だから魔法で加工した特殊な防護服を着る事になる。

 それでも長くやっていれば僅かな浸透で体調不良。そして死だからな。

 親方は従業員の命に無頓着だったし、その分俺がいた。ただ今はそうはいかない。


「経費の分だけ、レベル上げの料金は高くなるぞ」


「当分は国家関係者しか使わぬよ。それに暫くは予約が詰まっておるわ……ウヒヒヒヒ」


「いつそうなった」


「1日で、ここも見事に変わったであろう?」


「そりゃな。正確には半日程度だ。幾らアンタでも無茶し過ぎじゃないのか?」


「そこまではせんわ。ヒヒ。やったのは我が弟子たちよ。半分くらいはここに来おるわい」


「普通の領主だったら泡を吹いて倒れていそうだな。何人くらいだ?」


「30人といったところかねえ」


「意外と多いな!」


 俺の治療をしながら聞いていた従業員が真っ青になっているぞ。

 まあ判るけどな。

 魔法使い、治療術士、錬金術師……魔術を使う中でも、魔女は特に異質。

 数も魔法使い千人に対して魔女は一人って所だろう。

 それだけ、世の中の(ことわり)から外れる事の出来る人間は少ないって事だ。

 そして外れるって事は、俺の体をいじりまくった奴のように……。


「そこまで意外かい? ヒヒヒ。これでも保護と管理をしていてねえ。フヒヒ。なにせ個性的な連中ばかりだて」


「どいつもこいつも、個性的な連中の一言ですまないだろうな。なるほど……要はそいつらのレベル上げをしろと」


「こいつは特権だねえ。将来は王室特務隊になるか、国に仕えるか、独自の研究に走るか、何処かで悪逆を尽くすか、それは分かりゃしないよ。だがね、ここを本格的に改造するには、それなりにレベルっていう体力が必要でね。ヒッヒッヒ」


「最後が笑い事じゃねーぞ」


 もっとも、魔女ってのはそういう生き物だ。

 確かに、ユニークスキルが無ければ王室特務隊にはなれはしない。そういう意味では狭すぎる門だな。

 この国に雇われないか、仕える気が無いか……そういった連中はやがて独立するのか。

 敵対者には雇われて欲しくねえな。起きたらカエルになっていたなんてのは無しだ。


「ふと気になったんだが、アンタにも師匠っていたのか?」


「当然さね。魔女っていうのは突然に自分で分かってしまうもでねえ。その時の衝撃というものは相当なものさ。もっとも、心がどん底まで堕ちなければ分からないから、その時点でもう壊れているんだがねえ、ヒヒヒ」


 顔にもかかる、黒にも見える紫の混じった長い髪。そのせいで表情は分からないが、かなり真面目な話をしているのは分かる。


「だけど魔女に目覚めても呪文も何も知らないからねえ。心が壊れたまま静かに死ぬならマシで、歪んだ魔女の魔力を暴走させて魔女の恐怖を撒き散らすのもいるのさ。まあ、全ての魔女が恐ろしいものっていうのは変わらないがねえ……クヒッヒッヒ」


「笑えねーな」


(ことわり)から外れるなんてのはそんなもんさね。だが……この”魔略”はどちらにもならなかった。拾われたんだよ、先に魔女となった女にねえ」


「それが師匠か。今でも健在なのか?」


 口調はともかく見た目はただのロリっ子だが、これでも161歳だからな。いや、もう162歳か。

 その師匠となれば何歳だ?


「もちろんさね。あれは殺しても死なない女さね。ヒヒヒヒヒ」


 どこまで言葉通りに取って良いのか分からんな、こいつの場合。


「参考までに聞きたいが、味方になり得そうか? それとも敵対しそうか?」


「魔女にそれを聞くかい? クヒヒヒヒ」


「全くだな。意味が無かったわ」


 魔女なんて何処か必ず壊れている。

 この“魔略”がむしろ“善人”過ぎて少し油断していたわ。


「ただそれよりも、急いだ方が良いねえ。ここは戦場になるよ。それもかなり大規模なね」


「はあ……うぜえ。一応、細かな話を聞いておこうか。





 ◆   ◆   ◆





 家に戻ると、実に豪勢な食事が用意押されていた。

 姫様とフェンケは先に入浴を済ませていたようだ。


「お帰りなさい」


「お帰りなさいませ」


「ああ、ただいま。こちらの方は終わったよ」


 すでに大量の料理が用意されている。

 先に食べ始めていてくれても良かったんだけどな。


「それは僥倖(ぎょうこう)ですね。いつから出来そうですか?」


「卵自体を種にポップしない事はもう前例で分かっているからな。1週間か1ヶ月か……その辺りは予想が付かない。ただ“魔略”でも分からなかったが、“神知”なら分かるそうだ。正確な時期が分かったら、もっと詳しく話せるな」


「では、新しいレベル屋はそこからですね」


「ああ。規模も速度もカースドスパーダ―とは違うからな。多くの高レベル者が生まれる事になるさ」


「それでこんなにも町が拡張されているのですね」


「平和が一番なんだがね。まあそれならこんなレベル屋なんていらないよな」


 高レベルの人間が増えれば魔物が動く。

 それに、ここが高レベル兵士の発生源となれば、戦火は必ずこの町を包むだろう。

 そりゃ周囲は味方の領地で囲まれているけどね。戦火っていうのは必ずしも大規模な軍隊が攻めてきて起こるとは限らない。

 だが――、


「今は作戦の成功を祝おう」


「そうですね。今日はとにかく喜びましょう」


「明日も明後日も喜びますよ! ここから平和が生まれるんです!」


 フェンケの前向きさには毎度助けられるな。

 初めて出会った時は杓子定規な奴だったが、本来の姿はこの未来に対する絶対の自信だ。

 さて、今後もこうだと助かるのだが……まあいいや。今は乾杯だ。作戦は成功したんだ。ババアも文句は言うまい。

 新しい問題を持ってくる可能性はあるけどな!

これにて第2部完。

ただ今第3部をゆっくりと執筆中。

正確には次と合わせて第2部だったのですが……。


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