いたのはいいが余計な奴までいるとは
そして階段を使って地下8階へ。懐かしいねえ。
臭く薄汚い石の廊下。もはや染みついて消えない猛烈な悪臭。
それに自由に動き回っているのか、あちらこちらに猛毒の糞が落ちている。普通の人間なら、ここで息を吸っただけで死亡だねえ。
しかし完全に乾いているな。
おおかた、残っていた餌でも食ったのだろう。
魔物は食わなくても平気だが、それはそれで食わないと狂暴化する。場合によっては共食いまで始めるからな。
連中の考えなど知った事ではないが、まあそんな物だと覚えておけばいいだろうさ。
必要なのは、レベル屋での知識だけだからな。俺は別に学者になるつもりはない。
そんな訳で目的地に進むにつれ、複数の気配が強くなってくる。
やっぱりこいつらは動いてねえなあ。
どうせ命令が来た時も、適当にこの辺りを動きまわっていたって所だろうな。
そんな所には親近感があるねえ。
――見たところ11匹か。
キラキラと見る角度によって色を変える美しいプリズムカラーの皮膚。
まあ真っ暗なので今は地色の白としか分からんがね。
ただ艶やかで健康そうだ。精神、肉体共に問題は無いか。先ずは一安心だな。
あまり狂暴化していると、不確定要素が増えるのでね。
ただ問題なのは持ち帰るのをどれにするかというよりも、目的の“モノ”があるかが重要だ。
無いと本気で面倒くさいんだよなあ。
一度一掃してから確認したいが、そのリスクは高い。
俺がというよりも、今後がなんだよね。
現在減っているのが、果たして他の魔物とやり合った結果なのか、それとも別の場所――まあこの建物に気配は無いから外なのだが、そっちに移動したかだ。
どちらにしても、ここに居ない連中が今も生きている確信が無い。
つまりはここで全滅させてしまうと、最悪の場合、プリズムポイズンワームの入手が不可能になってしまう。
そもそもは異界からの生還者が持ち込んだそうだが、そいつはとっくに死んでいる。
じゃあ次は誰が取りに行く? 俺はごめんだね。そういうこった。
だから今回の事が失敗した時の為に、必ず連中だけは残しておかなきゃいけない訳だよ。
そういった意味では、連中が残っている事に安堵するね。
俺が魔物を指揮するものだったら、アイツらは全滅させておくからな。
なにせ、今の人類を強化した最大の功労者だ。
逆に考えれば1体でも残っていればいいわけだが、不慮の事故ってのはあるからねえ。
荒事を避けつつ任務を果たす――1番めんどうくせえ。
大体、一番欲しい奴には気配がねえ。
次点は小さな幼体だが、群れの中から一匹引き抜くのは大変だ。
アイツらは見た目通り芋虫並みの知能しかないが、芋虫と違って馬鹿ではない。
いや馬鹿なんだけどね。何というか、人間や他の動物とは単純に知能を比べられないというか……まあいいや、気にしたって仕方ない。
そもそも、幼体が居なければこれもご破算。
流石に成体を袋詰めして持って行くのは無理があるぞ。人さらいじゃないんだし。
大体、すぐに気づかれる。成体を仮死状態にするのはほぼ困難というか、事実上無理だ。
相手が1体ならそれも可能といえば可能なのだが、やはり大きいとそれだけ負担がかかる。相手にな。
そんな訳で、仮死状態には出来るがリポップまで生きていてもらえるかは運だ。
献身的な治療とかは無いぞ。俺には無理だし、治療できる奴は触ったら死んじまう。
まあこれ以上考えるのはいいわ。それでは確認する事にしますかね。
そう考えながら一歩を進めようとした時だった。
自然と体が止まる。全神経が、背後から察した気配に集中する。
攻撃は来ない――だが、ゆっくりと、それでいて最大限の警戒をしながら振り返る。
そして、それはそこに居た。
一見するとミノムシのような茶色い板状のものに身を包んでいる。頭まで含めてな。だがそれは、明らかに金属の光沢を放っていた。まるで銅だな。
そして1つの頭。一対の手足。何処からどう見ても人型だ。
こいつがそうか? 実際、レベルが判別できない。さっき出来たのは、ただの魔物だったからか?
だとしたら、状況は最悪だ。
ここで戦ったら、間違いなく芋虫共も巻き込んでしまう。
逃げるか?
だが隙が無い。
しかしそれは、すぐさま襲い掛かって来る事はしなかった。
ただついて来いと手招きをすると、そのまま踵を返して歩いて行った。
うん、正直無視できないものだろうか?
どんな意図があるのか知らないが、絶対にろくなことにならないのは子供でも分かるわ。
やつが人型の魔物なら、ここで最強の存在だ。
素直について行ったら囲まれましたじゃあシャレにもならない。
とは言ってもな、結局はあれをどうにかしないとプリズムポイズンワームを回収するなど出来なさそうだ。
何の用かは知らないが、前の奴は会話する知性があった。
あの時点では見た目が人型だから驚きはしなかったが、今回の奴はどうだ?
少なくとも、いきなり襲い掛かって来る事はなかった。
それに他の魔物……特に、そこで群れていた芋虫共をけしかけては来ない。
他の魔物が来る様子もないな。
何とも奇妙な事だね。
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