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ここから探すのは当然だね

 そんな訳でハイ、懐かしのレベル屋だ。

 面倒だったが、ただそれだけだったな。

 聞いた通り見事にロータスツリーに貫かれているが、魔物の脱走などに備えて壁は高いし複雑だ。死角に困らないのは良い事だね。


 親方はあのレベルだから死んではいないだろうが、さすがに無人だな。誰かが立ち入った様子もない。

 新しくレベル屋を立ち上げたとかいう話は聞かないが、そもそもプリズムポイズンワームがいなければ以前のようなレベル屋なんてアレには無理な話だ。

 つーか、扱う事も出来ないしねえ。

 0からやり直せるような人間でもないだろうが、まあ金には困っていないだろうしな。今頃は何処かでのんびり余生でも送っているだろう。


 それはともかく、姫様達にはここには居ないだろうと言っておいた。

 間違いじゃないんだけどね、本当に、ここに居ない確率は非常に高い。

 ただ、半分は姫様達が付いて来ないようにするための方便だ。


 当ても無く彷徨うならともかく、目的地がハッキリしているなら力押しで突破しかねないからな。

 そうでなければ、短時間なら囮になるとか言い出しかねん。

 護衛対象にそんなことをやらせたら、俺の首が飛ぶわ。

 自由を知る前にあの世行きってのも、なんだか納得できなくてね。


 だが、俺は今ここに居る。

 理由は簡単。巣になっている可能性もまた高いからだよ。


 確かに自由の身になったし、これからはどこにでも行ける。

 他の魔物と同様に肉食なわけだし、まあ出ただろうな。

 だがそれも、大円の範囲まで。

 ボス格以外は絶対に出ないし、ボス格も滅多に出ない。

 仮に出たとしても、今の大円はあのロータスツリーの影響下。見た感じ王都を少し超えた程度だろう。

 中に対しては手を出せなくとも、そこから1匹が出てきた程度ならすぐさま王国兵が処分する。

 人間だって、決して甘くも愚かでもないからね。


 そんな訳で、今の連中はある意味で自由であると同時に、ここに閉じ込められているともいえる。

 そしてここは、俺が手塩にかけて改良した連中のポップ地点。

 下手に暴れられると大変だからな。連中にとって最高の環境に作ってある。

 かつての坑道のように、そこが最適であれば出る事は無いのだよ。

 まあ空を飛んだり走り回ったりと活動的な奴はさっさと小円から拡散するが、アイツらは基本芋虫だ。

 食い物である人間が全員逃げていないとなれば、戻ってくる可能性は高いわけだよ。





 中に入ってみるが、かつては王都で最も立派といわれたレベル屋も今は完全に廃墟。

 人の栄華とは虚しいものだねえ。

 結局、金も権力もいつかは失うのだ。最後までしがみ付いても、いずれは死という結末からは逃れられない。


「欲しがる奴の気が知れないね」


 入口周辺は何やら気配があったので、懐かしの3階まで壁を駆け上がる。

 そしてそのまま飛び込んだのは懐かしの部屋。ここからお別れした親方の執務室だ。

 有っても無くてもどうでも良いが、やはり親方の骨の欠片すらないな。

 部屋は完全に荒らされているが、戦ったような形跡もない。単純に魔物が入り込んだだけか。


 中にはまだ数体の魔物の気配がするが、どれも知っている魔物だな。

 先ずは中央にあるぶっ壊れたエレベーターから飛び降り、途中に居た大型の甲虫を一撃で仕留めておく。

 着地と同時に切り離した首だけ落ちて転がって行ったが、まあいいだろう。

 連中が高レベルを警戒するとはいえ、気配を消した俺に意識を向けない事は、もうカーススパイダーを入手した時に確認した。


 それに魔物は死ぬ。

 事故でも死ぬ。魔物同士で戦っても死ぬ。基本的に連中は種類こそ違っても、等しく魔物。同じ魔物同士での殺し合いは無い。だが相手に対する配慮も無い。

 大型の魔物は平然と小型の魔物を踏み潰すし、何かの理由で興奮したり狂暴化すれば、敵も味方も無く暴れまわる。

 その結果として相手が巻き込まれて死んでも気にしないってわけさ。

 種類によってまちまちだが、一応寿命だってある。

 だからね、連中は気にしないんだよ。魔物自体がいくら死んでもね。

 流石に人間に殺されたと分かれば集まっても来るが、そんなヘマはしなければ良い。


 落下した先は地下2階。

 無惨に壊れたエレベーターの上だね。

 俺は音も無く着地したが、首はなかなかに良い音を出した。

 しかし連中は気にはしない。

 あれは何かが落ちただけ。地下だけに少し響いたが、そんな自然の音にいちいち反応していたら、野外では何も出来ない。

 その分、生物が発する継続的な音には敏感だがね。


 まあ仮に死体を見つけても、食って終わりだろうさ。

 連中は確かにいざとなったら上位の命令には従うが、単純なものだけだ。

 人語を理解するほど賢い奴もいるにはいるが、基本的に魔物の知能は高くないのでね。

 そして、命令が無ければ魔物は魔物の生活をする。

 食えるものがあれば、同族の死骸でも食っちまうのもそうだな。


 そんな訳で、今の俺はそこそこの緊張感はありながらも気楽なものだ。

 問題は目的の物があるかだが、ポップを待っているわけにはいかない。

 無かったら面倒だが他の奴を仮死状態にして運搬だな。

 良かったよ、散々扱って知っている魔物で。

 知らん奴を仮死状態にしろなんて言われても、俺には無理な話さ。




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