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予想通りだよ

 魔光に照らされた石畳を音もたてずに走る。

 気配は何もない。やはりここに魔物は入れない様だ。

 なら、さっさと確認をするとしよう。





 ……という訳で、戻ってきました先ほどの部屋。

 そこにあるのは無惨な遺体が5つと他が2つ――なのだが。


「やはりな」


 額にナイフを刺したまま、第二王子クランツは這うように部屋を動き回っていた。

 姫様には見せられないねえ。

 躊躇なく、既に死んで――というか、とっくに死んだようなものだった第2王子の頭からナイフを回収し、首を斬り落とす。


「まあ、予想通りか」


 ナイフは酸か何かでかなり溶けている。

 まあ所詮は投げナイフだ。回収する事は最初から考慮してはいない。

 ただ問題は首の断面だ。

 そこには、人型の魔物と同じくヘチマのような断面で、枝のような骨が密集していた。


「やられたって感じだな」


 とはいえ、戦っている段階でもう分かってはいた。

 人型の魔物が、体の中にもう一匹魔物を飼っていたとは思えない。

 あれが弱点とかなら楽だったのだが、どう考えても本体だったしな。

 となれば、人型とは言い難い。


 あれは所詮、別の魔物。

 おおかた、死者なりなんなりに寄生するタイプだろう。

 俺も見た事はないがね。

 クランツ王子がいるんだから、あの体自体は魔物にカウントされないのだろう。

 ここのセキュリティから見ても、ただの死体扱いとも考えられる。魔国のスケルトンと同じだな。

 その中に入り込んで、ここまで来た。

 まるであの侯爵の味方であるかのように。


 どの時点でそうなったのかは知らん。

 もうどの死体も口をきけないからそんなものだ。

 だからここから先は単純な推論だが、ここは普通の魔物は入れない訳だよ。

 なら、あの皮となっていた死体にセキュリティを突破するだけの能力があったのか、それともそれを遥かに超える存在にここまで連れ込まれたか……。


 まあいい。

 体だけになっていたクランツ王子はまだ這いまわっていたので、一応中を確認。

 解体しても結構動いていたが、やはり中にあれはいない。

 再生しないから当たり前か。


「血が出ないし内臓も無いから、野菜を切っているのと変わらんな」


 ただばらばらにしてもまだ動く――ふむ。

 さっきも頭が半分になるまで動いていたから驚きはない。

 ただ沈黙している頭が気になる。


 ……どうせ首だけは残すわけにはいかないしな。


 迷わず頭を裂くと、後頭部の当たりに種のような物が入っていた。

 同時に暴れ出す頭。


「なるほどねえ」


 種を潰すと、完全に動かなくなった。

 これはおそらく、ロータスツリーの種か。

 つっても、あれもまた魔物。魔物が種を自分で作るような真似はしない。湧いて出るのだからな。

 だが自然に朽ちた死体と違って、こいつを作ったのはロータスツリー。文献とも合致する。

 栄養を向こうから来させるためだが、その為の誘導機関があってもおかしくは無いな。

 それに、これで同じタイプは怖くなくなった。

 人語を話す寄生タイプ付きは厄介だが、これ自体はもはや無害だ。


 姫様の前ではやれなかったが、これで本当に仕事の1つは完了。

 あとは本物の人型魔物とプリズムポイズンワームだが、まあ人型の方は”出来れば”だ。

 会わない事を願おう。





 ◆   ◆   ◆





 面倒ごとが先送りになったと考えるべきか、纏めて相手をしなくて良かったと考えるか……考えるまでもない。後者だ。

 あの部屋にいたのは人型魔物ではなく、単にそれに擬態しただけの存在だった。

 確かに普通の人間なら即死させる初見殺しではあったが、あれを災害級とは言うまい。

 もう少し侯爵から話を聞きたかったが、焼けてしまっては仕方あるまいよ。


 まあどうでも良いさ。今考えるべき事ではない。

 そろそろ出口だ。


「おっと」


 いきなり雰囲気の変化を感じ、咄嗟に止まる。

 魔法に関する感覚は鈍いが、目の前がいきなり窓のある廊下になればさすがに分かる。


 窓とは言っても、アーチ形の穴。それが”今までなかった”廊下に沿ってズラリと並んでいる。

 差し込む光は強く、まだまだ夕方にもなっていない。

 そして聞こえてくる無数の何かが蠢く音。まあ分かるけどね。


 こっそり外を確認すると、美しかった城の中庭には魔物が徘徊している。

 無惨なものだな……。

 ここからだとロータスツリーは見えない。影も見えないから、反対側か。

 なら運が良かったな。


「では始めようか」


 3階ほどの高さだが、飛び降りる事に問題はない。

 気配を完全に消し、相手に合わせて動きを変える。

 俺にとって一番良かったのは、全ての魔物の感知範囲を知っている事だ。

 視界、熱、音、匂い……それぞれの複合で連中は周囲を確認している。

 知らない奴にはどうにもならないが、逆に知っていれば死角はすぐに分かるのでね。


 ただリアルタイムで変わりまくるからな。

 気配感知で全ての敵を把握しながら、死角から死角へと移動する。

 地面だけでは無理だ。木も利用し、立体的に移動する。

 木の葉一枚でも落としたら危ないが、軽業のスキルを生かせば音も衝撃も与えない。

 そうこうしながら城の内側の壁を突破。

 飛行する奴もいるし、ここは防衛のために通路もある。

 なかなかの難関だが、速度は落とせない。

 縦に3つの目玉と強力な電撃を放つ魔物がいたが、あれは目しか探知能力がない。

 木からそいつの真後ろに着地し、そのまま下へと降りる。

 全ての魔物を知っているわけではないが、こうやって知っている魔物ばかりだと助かるね。


 こうして町に入ると、やはり状況は変わらない。

 ただかなり減ったな。

 当然か。王墓に集まってきた数は多すぎた。

 魔物は大地が埋まるような無限湧きをするわけではない。

 小円、大円。ちゃんと数は決まっている。

 確かにレベル屋のせいで全体の数が多いのは分かるが、それでも限界はある。


 王墓に集まった魔物まだ完全に散ってはいないだろう。なら人間を見つけない限り、連中は動かない。

 今のうちに、プリズムポイズンワームの所へ行かないとな。




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