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退路の確保からがセオリーだな

 まあこいつが知らないのは仕方がない。


「姫様は第4王子のヘイベスと一緒の時に聞いているが、俺の体は魔女にかなりいじられていてな」


「まさか“魔略”様ですか⁉」


「いやいや、そんな大物じゃないよ。多分な」


 時機を考えれば、あの時点で”魔略”は王室特務隊だ。

 あんな小さな自治区の実験に長期間参加するとかありえねえ。


「普通の――と言ったらおかしいが、まあ別の魔女じゃないかな。一介の自治区に雇われる程度だよ。この辺りの話は、お前が足を怪我して療養していた時に大体ばらされていてね」


「確かに聞いていましたが、そこまでとは知りませんでしたよ」


 いや姫様、ジト目は止めて。


「“魔略”程の実力と比べて良いのかは知らんが、魔女の使う呪術は根本を変質させるものだ。人を豚に、水を毒にってね。まあそれだけ言うと錬金術に近いようにも聞こえるが、そこは言うまでもないだろう」


「カオスか理論かですね」


「そいういう事。方程式に従う錬金術や数式のように正確な魔術と違って、呪術は感性だけで扱う。だから数は少ないし、無茶苦茶な分、対策を取りずらい。魔法の障壁など、魔女からしたらあったりなかったり。それこそ魔女の感性次第だ。ただ逆もまたしかり。魔術の攻撃を防げるかもまた、魔女次第だな。そんなでたらめ連中が好きにいじくり回したんだ。体の中は無茶苦茶だよ。さて、こんな話はどうでもいだろう。先ずは仕事だ」


「今は……そうですね。では改めまして、ありがとうございます。兄の件、あたしにさせないようにしたのでしょう?」


「あの状況ではあれが最適だっただけさ。何せあれを逃がすわけにはいかなかった。だから、ああなった。それだけの話だよ」


「そうですか……でも、ありがとうございました」


「私としては何か誤魔化されたような気もしますが、あの人型の魔物ですけど、なぜ一発で体を止められたのですか?」


「ああ、骨の伸び方から、どうも中核のような位置があると予想出来たのでね。それが体を構成している事も予想がついた。後は繋がろうとするときに、何処が中心になっているかを観察すればいいだけさ」


「なるほど……中心ですか。他の人型の魔物もそうなのでしょうか?」


 そこがちょっと気になったのだけどな……。


「それなら楽なのだがね。連中は全てがオリジナル。オンリーワンの個体だ。だから増えないが、その分すべてが別の魔物だよ」


「面倒ですね」


「そうそう会うものじゃないから今は気にしても仕方ないだろう。さて、そろそろ休息は大丈夫かな? 姫様、この魔物が入らない所にゲートはあるか?」


「……2か所ありますが、1箇所は入った事が無いのです。そこは王族の特別な場所で、いくつかルールがあるんです」


 まあある事自体に疑いは無かったが、ルールねえ。

 一応、役には立たないだろうが聞いておくか。


「詳しく教えてもらえるかな?」


「はい。先ずあたしの区域もそうですが、親兄弟でもそれぞれの区域は立ち入り禁止です。会う時は、食堂や来賓の間などの共通の場所だけとなります。ただそれぞれ忙しい事もあって、家族が集まるのは年に数回程度です」


 確かに公務で城を離れる事も多いだろうし、そんな風に不可侵領域を設けられたらそれぞれ独自の行動を始めるだろう。

 それもまた、テストって奴なのかもな。


「そういう様な場所なので、お父様の許可が無ければ立ち入ってはならない場所なんです」


 まあ許可を破れば何かしらの方法で分かるのだろうが、おそらく今回は無視して良い状況だろう。


「もう1つが、特別な権限がないと行けない場所という事ですね」


「それはたぶん大丈夫だと思うな」


「あたしもそんな気はします」


 おそらく王権を得て始めて入れる場所。

 子供には見せられないものや、触れてはならないものなんかもその辺りか。


「多分そうだと思ったよ。そこに関しては無視していいだろう。プリズムポイズンワームがそこにいるなら別だが、そりゃないだろう」


「ですよね」


「そうだ! 王城を貫いた巨木というのはどうなっているのでしょう?」


「ここに魔物の気配はしないから、おそらく迎賓館の方じゃないか?」


「そう思います。ここは城といっても王族の居住区ですからね」


「確かに……お城とは少し離れていますか」


 俺が城の見取り図を知っているのは職業柄だが、姫様とフェンケは確認するまでもないな。

 何せここで生活していたんだ。


「では先にゲートの確認に行くとしよう。万が一のことを考えて両方チェックする。その後は外だな。とにかくプリズムポイズンワームを取りにいかなきゃならん」


「心当たりはあるのですか?」


「昔働いていたというレベル屋とか?」


「それはどうかな。他のレベル屋に居たと思われる魔物が徘徊しているんだ。あれもその辺をうろついている可能性はあるさ。ただ性質は知っているからな。もしあのレベル屋にいなくても、探す術はあるよ。ただ問題がなあ」


「何か問題が?」


「おそらく、さっきまで魔物に指示を出していたのは人型の魔物だろう。あれがいながら他が指示出しするとは考えられん」


「魔物の性質ですね」


「ああ。特殊個体はなにより優先される。だがそれは消え、そして今は俺たちを見失っている。もうそろそろ指示は切れている頃だ。人間との違いでね、指示は確実に実行するが、細かな命令は出来ない。何より指示する側が出来なくなったらそこでストップ。もう本能に従った自由行動だ。自主的に命令を遂行するって思考は無いんでね」


「確かにそうですね。すると今は何が命令を出しているんでしょう?」


「そうだな……他に人型の魔物がいない限り、一番レベルの高い奴だ」


「今この王都で一番レベルの高い魔物ですか……ああ、いましたね、厄介なのが」


「どんな魔物です」


「さっき自分で気にしていた奴だよ。城を貫いているロータスツリーだな。あれが一番レベルが高いと思うぞ。なにせプリズムポイズンワームより上って話だからな」


「あれもまた魔物なんですよね……聞いた限りの大きさだと……」


「とても排除は出来ないだろうな。ただ植物型の知能は分からん。既に指示は出していないかもしれないが、もうこれ以上のミスはしたくない。先ずはゲートへ行こう」


 こうして別のゲートへという事にはなったが、どうしても気になっていた。

 人型の魔物だ。

 確かに姫様のレベルはかつての人類なら究極と言っていいだろう。

 だがあの魔物は? とても災害レベルとは思えない。

 そりゃあ、個体差がある事は分かっている。

 しかもそれぞれがオンリーワンの人型だ。ただね……まあ、考え過ぎであればそれでいいのだが。




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