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守護獣ニーズヘッグ

※昨日、16時に一度書きかけを投稿してしまいました。

その後、19時過ぎに追記版を再投稿しておりますので、その3時間の間に読まれた方はお手数ですが前話にお戻りいただけると幸いです。

 僕らは一斉に第七十二層へと躍り出た。


「退却!」


 そして飛び退く。

 階段通路へ身を隠したと同時、僕らが立っていた場所を黒い衝撃が薙ぎ払った。見れば、石の床が大きく抉れて谷のようになってしまっている。


「尾のひと振りでこの威力とは……」


「さすが、世界樹の根っこをかじってる竜は格が違うね」


「ぴぇぇ……」


 世界樹とかは神話とも現実ともつかない話だけど、そんな伝承が付くだけのことはある。危うく様子見で全滅するところだった。


 でも、これでひとつ確認できた。


「ニーズヘッグは死と呪いを振りまく地底の竜だ。つまり、腐竜や火竜みたく広い空間でブレスを撒き散らす竜種じゃない。クゼハラ家の文献にあった通りだね」


 もしブレスを吐けるのなら、今吐いておけば侵入者(ぼくら)をたやすく殲滅できただろう。やはりクゼハラ家の記録は信頼できるとみてよさそうだ。


「なら、予定通りかな」


「うん、スズとニーコに危険な役割を任せて申し訳ないけど……」


「クラトス殿は我らの指揮官です。堂々と後方に構え、勝つための指示をくださればそれでよいのです。ニーコも、大丈夫ですか?」


「スズちゃんとがんばる!」


「ありがとう。……じゃあ、行くよ」


 全員が身構え、階段通路の出口を見据える。作戦があるといっても、ニーコがニーズヘッグを翻弄し、それをクニーさんが援護することでスズのための時間を稼ぐというごく単純なものだ。チャンスは一度きりだし、踏み出した先は時間との戦いになる。


「【教練の賜物】!」


 強化をかけた瞬間、ニーコが弾丸のごとく広間へ突っ込んだ。猛烈な吹き返しの先で、ニーズヘッグの初撃がニーコの尾羽根を掠めて空を切る。


「【疾風怒濤】!!」


 ニーズヘッグの意識が頭上のニーコへ向いた瞬間を逃さずスズが飛び出す。加速の職能(スキル)で一直線に駆け抜け、一体めの石像に右手を触れた。


「眼か牙、どっちだいリーダー」


「眼だ!」


「了解」


 クニーさんの銃が鉛玉を吐き出し、ニーズヘッグの両目を襲う。四発の弾丸は難なく避けられて背後の壁に突き刺さったが、視線は虚空へと逸れた。


 ニーズヘッグの武器はその巨大な体躯と猛毒の牙、そして呪の力を持つ魔眼だ。中でも魔眼は、ブレスに代わる奴の遠隔攻撃手段。潰すまでできなくても、牽制はしておかないとスズが危険だ。


「よし、クニーさんも睨まれないよう注意して!」


「珍しく注目されるかと思えば相手は黒蛇だなんて、職人っていうのは本当に日陰者だね」


「ニーコ! 目を閉じたまま飛び回って! 自分から敵に突っ込まないようにだけ気をつけてね!」


「ぴぇぇぇぇ!!!」


 気合とも悲鳴ともつかない声をあげながら、緑色の有翼人(ハルピュイア)が無茶苦茶に飛び回る。目を閉じても高速で移動できる彼女は、目を合わせることで発動する『魔眼』という能力への強力な対抗手段たり得ている。


「リーダー、キツネさんが二体めに触れた。あと一息だ」


「クニーさんも移動の用意を! 僕らの足の遅さで失敗するわけにはいかない!」


 スズが仕掛けを起動して第七十三層への階段が開いたとしても、そこまで全員で辿り着けなければ意味がない。僕とクニーさん、使役職と生産職のふたりがどれだけ速く走れるかが、実は作戦の最後にして最大の難関なのだ。


 そのことに僕の意識が向いた一瞬、強化職能(スキル)の効果がごくわずか薄まった刹那を、しかしニーズヘッグは見逃さなかった。


「ぴぇ!?」


「跳ん……ッ!?」


 ニーズヘッグが、跳ねた。

 蛇の中には飛び跳ねるように移動するものがいると聞いたことはあるけど、まさかあの巨体が地面から浮くなんて。予想外の事態に固まる僕の目の前で、太い胴がニーコに迫る。このままじゃニーコが天井とニーズヘッグの体で押し潰される。

 いくらニーコの速度でも避けきれない。クニーさんの弾丸で逸らせるような質量でもない。

 何も、できない。


「ニー……!」


 名前すら呼び終わらないまま、大蛇が天井を打つ衝撃に迷宮が揺らいだ。


 天井を打った大蛇は、そのまま重力に引かれて石床へと落下する。迷宮を揺るがす二度の衝撃に倒れ込んだ僕の隣で、クニーさんが広間を見据えて舌を打った。


「くっ、なんてデタラメな!」


「ニーコ、ニーコは!?」


 ぶつかった瞬間はニーズヘッグの巨体に隠れてよく見えなかった。ニーコがどうなったのか確かめようと上を見上げる僕の顔を、しかしクニーさんが無理やり地上に向けさせた。


「落ち着いてくれリーダー。残念だけど今はキツネさんの状況を……え?」


「なっ……」


 ニーコはもう助からない。その犠牲を無駄にしないよう、スズの支援に集中しろ。クニーさんはそう言おうとしたのだろう。

 一歩遅れてそれを理解した僕の目に、理解しがたい光景が飛び込んだ。

※本作は過度なグロテスク描写や殺人描写はありません


蛇といえばうねうねと蛇行して進むイメージがありますが、あれができるのは日本にいるような小型~中型の蛇だけだったりします。

大型のものは筋肉の力で鱗を立てたり寝かしたりして地面をひっかくように進みます。

また踏ん張りの効かない砂地に棲む蛇は、横向きに跳ぶようにして進むそうです。

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