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『暁光の迷宮』

「『暁光の迷宮』は二百年以上前に攻略されたダンジョンです。今となってはその構造は最下層に至るまでほぼ解き明かされ、特に安全な区域には観光ツアーすら組まれているほど。特に危険な箇所を避ければ、私たちのレベルでも最下層まで行くことは可能でしょう」


 巨大な城塞型ダンジョンの通路を、下へ下へと早足で進む。先日の小ダンジョンと比べるとこちらの上層は昼間のように明るく、また現れる魔物も貧弱だ。こんな場所で時間をとるわけにはいかない。

 天井も高くニーコの行動に支障が無いのは幸いだった。


「その最下層って第何層だったかな?」


「七十二層です」


「ぴぇ……?」


「この前行った、骨がたくさんのダンジョンを二十四個ぶん進まなくてはならないということですよ、ニーコ」


「いっぱい?」


「すごくいっぱいです」


「ぴぇ……」


「……歩くだけでもしんどそうだね」


「あはは……。罠を逆に利用したショートカットもあるから大丈夫だよ」


 ヤマト・クゼハラがこのダンジョンを訪れた時点では、人間はまだ二十層も攻略できていなかったと伝わっている。地図も情報も、もちろんショートカットもない残り五十層以上を、彼はたった三人の仲間とともに踏破してしまったということだ。大英雄と呼ばれるだけのことはある。


「それはありがたいね。で、だ。ボクらの足が救われると分かったところで、なんでそんな掘り尽くされたダンジョンに、ええと」


「『祝福されし呪針(パドジナミア)』?」


「そうそれ。そんなお宝があるんだい?」


 本当は事前に共有しておくべき情報だったと思うけど、クニーさんはこの三日間ほとんど工房に篭りきりだったのだから仕方ない。手持ちの装備を全て【教練の賜物】の強化に耐えうるよう改造するには、三日というのは本当にギリギリだったそうだ。


「『暁光の迷宮』はね、全七十二層じゃなかったってことだよ」


「さっきの言葉を三分で覆したね」


「世間には全七十二層と公表されているのですから間違ってはいません。しかし、クゼハラ家を含むごく一部の家にはその全貌が伝わっています」


 全九十六層。


 隠し通路の先にある二十四層を加えたそれが、『暁光の迷宮』の本来の姿だ。


「主である魔王が斃されて二百年も経ってるのに、このダンジョンには今も魔物がいるよね。ダンジョンを作った魔王の力があまりに強大だったから、って世間では言われてるけど、実際はその最深部二十四層の影響らしいんだ」


「ふーむ、なるほど。それで、あんまり聞きたくないんだけどそれを隠した理由は?」


「ひとつは、そこに眠る常軌を逸した魔導具の数々を盗掘から守るためです」


 スズによると、悪用されれば危険な魔導具を隠す時にもここは使われてきたのだそうだ。

 かつて『祝福されし呪針(パドジナミア)』の持ち主だった英雄シプラスも、自身の死後、それが邪な心の持ち主に渡ること危惧してこのダンジョンに隠したのだという。


「なるほどね、だからそんなお宝がここにある、と。それでもうひとつは……いや、なんとなく察しはついた。言わなくていい」


「現実から目をそらしても何も変わりませんよ、クニー殿」


「キツネさんが厳しい」


「一応教えておくけど、そこに棲んでる魔物がそれこそ常識を外れてるくらいに凶悪なんだってさ……」


「やっぱりか……」


「じょうき? じょうしき?」


「ものすごく危ない、ということですよ、ニーコ」


「ぴぇぇぇ……」


「やったね、地獄行きの観光ツアーだ」


 笑えない冗談を言っているうちに、僕らの足は『公称の』最深部間近へと迫っていた。

エジプトでピラミッドに入ったことがありますが、あれとか完全にダンジョンでした。盗掘防止のために入り口は隠された上に通路が巨石で塞がれてたりして。

結局、どてっぱらに穴を開けられて盗掘されたんですけどね。

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