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はじめてのダンジョン

 初のダンジョン攻略から一夜明けた翌日、時間が惜しい僕らは早速同じダンジョンへと赴いた。大変な目には遭ったけど、全三層という大きさの割に魔物が多く戦闘経験を効率よく積めるダンジョンを知れたのは幸運だったとも言えるだろう。


「この世界には数多くのダンジョンがあり、その内容も多岐にわたりますが、それらの成り立ちは大きく二種に分けられます」


 そんな小ダンジョンの一層目、動きの遅いスケルトンや小さなケーブバットが時折現れるだけの比較的安全な通路を進みながら、スズのダンジョン講義が続いている。


「ひとつは、天然の洞窟や打ち捨てられた城に瘴気が溜まり、魔物の巣となった『自然発生型』。私たちが今いるこのダンジョンもそちらでしょう」


 基礎的な部分については、僕も本で読んで知っている。自然発生型のダンジョンは深さも魔物の強さも比較的良心的で、代わりに眠っているお宝も相応だと何かの本に書いてあったはずだ。言ってみれば初心者向けのダンジョンになる。


「そしてもう一種が、力ある魔族によって築かれた『城塞型』。宝や経験値を餌に人間を誘い込んで殺すことを目的に作られているとされます。こちらは規模も魔物の質も圧倒的で、長い年月に渡って在り続けるのが原則です。特に魔王が作るような強大なものになると、莫大な瘴気が周囲に溢れ出し自然発生型のダンジョンを生み出すこともあります」


「ってことは、ここも?」


「ええ、『暁光の迷宮』の余波で生まれたものでしょう。それだけ巨大なダンジョンということです」


 ダンジョンとしては小さめとはいえ、もし家なら大豪邸と呼べる広さの階層を三つも持つ地下迷宮が『余波』。大英雄ヤマト・クゼハラが現れるまで人間の侵入を拒み続けた迷宮の凄まじさを実感させられる話だ。


「ボクのイメージだと、魔王っていうのはだいたいみんな陰気な地下迷宮に引きこもってるものなんだけど、それだと城塞型とやらが結構な数にならない?」


 クニーさんがもっともな質問をするけど、印象と現実というのは往々にして噛み合わないものだ。魔王がいつも迷宮の奥にいるわけじゃないし、「みんな」という表現も実は誤りかもしれなかったりする。


「魔王は毎回、それまでと違う趣向を凝らした方法で人間を滅ぼそうとするんだよ。もちろん地下に大迷宮を作って魔物を送り出すこともあるけど、おどろおどろしい城を建てて姫様を人質にとってみたり、いきなり大国の真ん中に現れて首都を乗っ取ったり、ある時なんか人間に化けて大商人になった後で大恐慌を起こしたり、もう厄介なことはだいたいやってるんじゃないかってくらいやりたい放題だ」


「クラトス殿の仰る通りで、迷宮に篭もる魔王の次は搦め手で翻弄する魔王、さらにその次は自ら打って出る魔王といった順序で現れることが多いようです。どうやら魔王というのは先代までの魔王の記憶を持っているらしく、全て同一人物であると唱える人も多くいます。数百年おきに訪れる魔王の出現が『復活』と呼び習わされているのもそのためです」


 ちなみに『暁光の迷宮』を作った魔王は、何十年も最奥に居座って人間を苦しめた末にヤマト・クゼハラに討たれたと伝わっている。つまり法則通りに行くなら、次の魔王ははかりごとで勝負する知略派の魔王だ。ジークとの戦いはさぞ壮絶な騙し合いになることだろう。


「なるほどねー。それにしても、騎士の娘と英雄譚マニアが並んで解説してるって図はなかなか面白いね」


「ぴぇー、むつかしいことばがいっぱい……」


「分かっていただけなかったことは、よく分かりました」


 ……まあ今回の相手は魔王じゃなくて勇者だし、ダンジョン攻略に必須の知識ってわけでもないからそのくらいの受け止め方でもいいんだけど。なんだろうもやもやする。


「でもここからは攻略の上で重要だから聞いてね。多くのダンジョンは複数の層に分かれてるけど、僕らがこれから再挑戦する第二層からは、本気で殺しにかかってくるから」


 話しながら進み続けた僕らの目の前には、昨日踏み込んであえなく撤退を余儀なくされた、第二層への階段が口を開いていた。

ほとんどのキャラはあまりカタカナ言葉を使わせないようにしていますが(伝わりやすさや語感優先の例外はあり)、クニーさんは割とカタカナ言葉を使います。

意識が高いからではありません。技術者だからです。異論は認めます。

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