【プロローグ】
ドンドンドンドンッ!!
ピンポピンポピンポーン!!
「居るんでしょ!開けなさい!」
なんでこんなんことになってるかというと。昨日の飲み会で僕に彼女が居るなんてことになったから。実際には居ないのだが、そういう雰囲気になってしまった。それで、仲の良い女友達からこんな仕打ちを受けているところ、というわけだ。いや、説明になってないな。
「居るけどさ。なんの用事なのさ」
僕はドア越しに三条文香に聞く。
「なんでって!だって私!」
ん?あ、あー……、もしかして……。
思い当たる節があった。でもあれはそういう雰囲気でも何でもなかったような。でも、そう取ろうと思えば取れなくもない。
ガチャ……
「文香、あ、あの……」
「許せない!誰よ!彼女って!」
僕の弁明を聞く前に抱きついて来て半泣きになっている。
「いや、だからさ。それは友達にそういう事にされたというかさ。だからなんでもないんだって」
「本当?」
「いやいや、ホントホント」
「じゃあ、確かめる!」
と言ったかと思ったら、靴を脱ぎ捨てて僕の横をすり抜けて家の中に入って行った。
「全く……」
「そうね。全く、よね」
「え?」
「久しぶり。健斗」
「真冬⁉︎何でこんなところに⁉︎」
「何でって。健斗のお母さんに聞いた。それで、さっきのは誰?彼女?」
「いや、彼女というか何というか……」
面倒な事になった。誰だと聞かれたら何て答えたら良いのか。何て思っていたら、洗面所から出て来た文香と目が合った。
「誰」
凄み圧が強い。そんな低音で言われるとビビる。
「あ、お気になさらず。私、健斗の幼馴染で島凪真冬って言います。最近、こっちに帰ってきて、挨拶に来たんだけど……。あなた、健斗の彼女さん?」
「私は……」
幼馴染と聞いてたじろいだのか語気が弱まる。
「ねえ、健斗。私は健斗の何?」
おっと、僕にボールが飛んできた。これは何と答えたものか。彼女?なのか?でも、大学のピロティでお似合いだとか言われて満更でもないような何かを言ったような記憶があるだけで。文香的にはそれで十分だったようで。
「そのさ。交際しましょうってハッキリと……その……」
「健斗、約束……」
真冬が僕の腕を掴んで少し寂しそうな顔をしている。
約束
「ずっと一緒だよ!約束だからね!私、絶対に帰ってくるから‼︎」
そう叫びながら去っていった車。僕は被っていた帽子を大きく振って、それを見送った。
真冬とは小学校も中学校も一緒で、いつも一緒にいた。でも高校に上がる前に親の都合で海外に行ってしまったのだ。しばらくの間はメールやらで連絡を取り合っていたが、時間が経つにつれてその件数も少なくなり……。高校三年に入ってからは全く連絡を取っていなかった。
間に挟まれた自分はどうしたら良いのか分からなくなってしまった。が、先約は真冬になるが……。いやいや、あー、でもな……。
あーでもない、こーでもないと考える。そんな自分に向かって真冬が一言こう言ってきた。
「健斗とは結婚を誓い合った仲なの」
「……⁉︎健斗?どういうことなのか説明してもらえる?」
説明、か。幼馴染で良くある将来お互いに一人だったら結婚しよう、みたいな感じ?でも結婚なんてワードは出ていなかった。
「真冬、結婚までは言ってなかっただろ⁉︎」
「そうね。まだ私達は恋人同士、止まりだもんね」
大きく言って小さく収まる。してやられたような感じだが、文香はそんなことは関係ないとばかりに僕の腕に自分の腕を絡めてきた。
「今は私の!」
「健斗?私との約束は?」
「ええっと……」
優柔不断、いや、この場面はそういうものではない。この場でどちらかを選ぶというようなものでもない。と、思う。
「ちょっと落ち着こう?」




