予感
お茶会から1か月ほどすぎました。エドガー様、お手紙なら大丈夫かも。話、弾んでいます!紙は素晴らしいわ。じっくり考えられる。
先日は、読んだ小説について書き綴ると、エドガー様のおすすめの本の話が返ってきた。ファンタジーの名著に関してはとても盛り上がった。他の話題も、噛み合っていないようで噛み合っている。
手紙って素晴らしいわ。
でも今日は、令嬢方とのお茶会。
お茶会は考える暇はない。思慮深く、それでいて素早く話さないと。それから、ノーモア・カンカラカン。昨夜はバッチリ寝ました。アロマ炊いたりアイマスクしたりして。音楽かけたら一発だったわ。ありがとうオーケストラ。
招待いただいたご令嬢は、優しげな同い年の方々だった。
前回の皆様とはまた別のご令嬢ばかりだけれど、気を引き締めなければ。
「最近、王都では花をモチーフにしたブローチが流行っているそうですわね」
「ええ。でも王都の西のお店、少々お高いでしょう?」
「そうなんですの。ですがーー」
会話は滞りなく続いている。ちゃんと話せている。周りの話を聞いて、返しながら自分の話もする。
カンカラカンもしない。
大丈夫。
「そういえば、最近流行りの舞台なのですが、皆様ご覧になられまして?」
あぁ、しまった。見ていないわ。でも知ったかぶりはもっといけない。
冷静に、大丈夫よ。
「いえ、私はそちらはまだ拝見しておらず……どのような作品なのですか?」
「あら、そうなんですの?私は先週観劇に向かいましたわ。有名な歌姫がいると評判で、とっても素敵でした」
知らないなら、聞けばいい。
商売と同じかもしれない。
カトラリーをゆっくりと置いて、人知れずほっと息をついた。
「あのお花、とても綺麗ですわね。なんという種類ですの?」
あ。知っている、わ。
「あの、もしかしてサキョウキクではありませんか?東洋のお花の」
間違っていたらどうしよう。
主催者の令嬢は目を丸くして言った。
「そう!そうですわ!よくご存知ですわね!父が取り寄せたものですの!」
ふわり。
風が吹いた気がした。
「本日はとても楽しい時間をありがとうございました。またご一緒させてください」
「えぇもちろん」
笑顔の柔らかいご令嬢のもと、お茶会は今度こそ和やかに終わった。
次はもう少し上手くできるかもしれない。
でも疲れたものは疲れた。
家に帰り、ずるずるとソファに倒れ込む。「お嬢様はしたないですよ」と聞こえた気がするが気にしない。
「おてがみです!」
ミリーがにこにこと近寄ってくる。印章はグランデン家。
封を切ると堅い大振りな字が見える。
あぁ。
手紙って、素晴らしいわ。
非同期って、素晴らしい。




