第7話 外
俺がレベルを確認して、すぐ次の階層の靄が晴れた。
まさかの連戦かとも思ったがそういうことではないらしい。
その先にはこの足元に転がっている龍が簡単にくぐれそうな門があった。装飾の類がなく、黒光りするその門に正直ビビった。
少し休憩しよう。扉の先に何があるかも分からないしな。
魔力も三分の一切ってる。8時間くらい休めば回復するな。
「咲機取り」
言い終わるのと同時に一回、ドクン、と俺の中で大きく心臓が鳴る。正確に言うと8時間分の回数の心臓の鼓動が、通常の鼓動一回分の間に素早く繰り返されたのだが。
この魔法は肉体の時間を経たせる速度を上げる、というだけの魔法だ。つまり俺は魔法を使わなかった俺より約7時間59分59秒先の姿になったのだ。こうすれば魔力やHPは8時間休んだのと同じ分回復する。ちなみに”運動の速度”ではなく”肉体の速度”なので超高速移動ができるわけではない。
だがしかしこのまま使い続けるとせっかく”願い”で手に入れた寿命もすっからかんのジジイになってしまう。なので、
「戻退」
また肉体の時間を戻す。
これじゃあ意味がないって?実は肉体には時間が経つほどステータスの魔力を回復させる効果があるのだが、こちらの魔法は〇時間前の肉体にする。という魔法なのだ。
つまり、人生ゲームとかで駒を進めるごとに少しずつ魔力というお金が増えていく。それをアクセラで全体的なスピードを〇倍速に速める。だが、バックトラックという”ふり出しに戻る”マスをわざと踏んで、様々なマスをもう一回踏めるようにする、つまり時間を巻き戻す、ということをしても所持金自体は変わらないよね。という理屈なのだ。
長ったらしい脳内解説も終わり、忘れていたレッドドラゴンと壊れたハルバードをアイテムボックスに入れる。
準備はできた。
行こう。
神経を尖らせ、多分20本目位のハルバードを構えて段を上がる。
すると一切の音を立てず、門はゆっくりと開き始めた。魔法のパワーなんだろう。きっと。
門の中は、まばゆい光があふれ出していた。
行っていいやつなのか?コレ?
そう思いながらも門をくぐると、草原が広がっていた。敵は……いなさそうだ。後ろを振り返ると、門が開いたまんまだんだん薄くなり、消えていった。更に奥には先ほど俺がいた谷がある。龍の血痕まで同じだから別の谷ってことはないと思う。改めて見ると谷っていうか地面に入ったバカでかい亀裂って感じだな。
つまりここはその谷もしくは亀裂の外、自由な世界ってとこか。
どこに行こう。というかどこに何がある?
……めんどくさい。ここは古風にハルバードを立てて、倒れた向きに一直線に進もう。
ハルバードよハルバード。俺の行くべき方角はど~っち?
ボスッ。
……谷を後ろとしたときに右斜め前ってとこか。
よしこの方向にいざ前進!
アレ?なんで俺、谷を後ろとしたときに左よりは少し前位の方向に進んでいるんだ?
やべぇ。無理やり動こうとしても全くもって自由にできない。
『お久しぶりです~』
あ!いつぞやの女神さん!
『はいその女神です。そしてこれまたいつぞやの運命の改変です』
え?ここ一年何もなかったのに、ですか?
『不定期の借金の取り立てみたいなものなので、ビーッ!ビーッ!……時間があんまりないですね。手短に行きます。え~あなたは本来なら今から好きなことをしています。しかし運命が変わったことで今から合う相手を仲間にしないといけなくなりました。それ以降はまた運命の改変が起きるまで自由の身です』
……それを守らなかったらどうなるんです?
『今のように最低限運命が守られるよう、勝手に体が動きます』
なるほど。で、この勝手に動くのはどうやったら治るんですか?
『自分からその方向に動こうとすればザ、ザザーーーピーーーープツン!』
なんか切れ方が違う気がする。この方向に動けば___おお!動ける!
そしてそのまま1時間ほど草原を歩いて、出会ったのは、
すんげえでかいゴーレムだった。第一印象は
……鎧の巨人ってこんな雰囲気だったんだろうな~
である。




