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第21話 ループの始まりと、奇妙な既視感【改訂版】

カーテンの隙間から差し込む朝日が、静かに僕を目覚めさせた。

……暖かい。

けれど、それ以上に――

布団の中で、何かが動いている気配がした。

ゆっくりと布団をめくると、そこには小さな女の子が僕に抱きついて眠っていた。

彼女はゆっくりと目を開けて、僕を見上げる。

「おはよう、フリお兄ちゃん〜」

柔らかな声。

「おはよう、ユメ」

そう返すと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

その笑顔だけで、胸の奥が不思議と落ち着いていく。

ユメはベッドから飛び起き、そのまま部屋を出る前に振り返った。

「早く準備して、フリお兄ちゃん! 遅刻しちゃうよ〜」

僕は軽くうなずく。

そのあと、ふと窓の外の空を見上げた。

……なにかが起きる気がする。

懐かしいような、でも思い出せない感覚。

「……気のせい、か」

そう呟いて、階段を降りた。

リビングでは、ユメがテーブルを整え、母が料理をし、父が新聞を読んでいた。

「おはよう、父さん、母さん、ユメ」

「「おはよう」」

三人の声が重なる。

母が微笑みながら言う。

「さあ、みんな。早く食べないと学校に遅れるわよ」

家族で食卓を囲む。

父が口を開いた。

「ラフリ、ユメ。今日は学校まで送ろうか?」

僕とユメは同時に首を振る。

「大丈夫だよ、父さん。ありがとう。もう子供じゃないから」

「うん、私たちもう大丈夫!」

そう言って家を出ようとしたとき、母に呼び止められた。

振り向くと、二本の傘を差し出してくる。

「今日は雨が降るかもしれないから」

「いってきます」

「気をつけてね」

母の優しい声が背中に届いた。

道を歩きながら、ユメと他愛のない会話をする。

天気のこと、学校のこと、どうでもいいようで大切な時間。

やがてバス停で別れた。

「じゃあね、フリお兄ちゃん!」

「またあとでな」

バスが来て、僕は乗り込む。

料金を払った、そのとき――

「はぁ、間に合った……!」

扉が閉まる寸前、ひとりの少女が飛び込んできた。

彼女を見た瞬間――

なぜか、ユメと重なって見えた。

同じ制服。似た雰囲気。

彼女は慌ててICカードを出すが、残高不足で反応しない。

「えっ……うそ……」

焦る彼女。

……その瞬間、僕の体が勝手に動いていた。

「――俺が払うよ」

自分でも驚くくらい自然に、そう言っていた。

彼女は目を見開く。

でも、恐れる様子はない。

むしろ――安心したように微笑んだ。

「ありがとうございます、先輩」

「……先輩?」

「同じ学校の制服ですし、それに年上ですよね?」

彼女はそう言って、くすっと笑う。

その笑顔もまた、どこか懐かしい。

「俺、ラフリ・パシャ。ラフリでいいよ」

「私は――宮子パ…」

そこでバスが止まり、学校に到着した。

言葉は途中で途切れる。

僕たちは一緒に降りると、彼女は軽く頭を下げて走り去っていった。

校門の前は騒がしかった。

一台の高級車が止まり――

そこから一人の少女が降りてくる。

黒く長い髪、赤い瞳。

圧倒的な美しさと気品。

周囲のざわめきが聞こえる。

「氷の姫……ユナ様だ」

「入学試験トップらしいぞ」

……でも、僕は興味を持たなかった。

人と深く関わるのは、面倒だ。

過去、トラウマ、倫理、立場……

関係はいつも複雑になる。

だから僕は――

誰とも深く関わらないと決めている。

教室、1年3組。

席表を確認すると――

教室の一番後ろ、窓際。

まるでアニメの主人公席みたいだ。

……運がいいな。

クラスメイトが次々と入ってくる。

その中で、ひときわ目を引く男子がいた。

「YOYO」と名乗る、インドネシアから来た生徒。

でも彼は――

教室も、生徒も見ていない。

まるで……

“読者”や“作者”を見ているみたいだった。

「……俺が読者を見てるって、思ったでしょ?」

彼が突然そう言った。

僕は思わず苦笑する。

冗談だろう、こんなのは。

その隣には、柔らかな雰囲気の少女――セラ。

「また会えましたね、ラフリくん」

……会ったこと、あったか?

記憶にない。

そして僕の隣の席には――

あの少女。

ユナ。

「……さっきから、なんで私を見てるの?」

「なんか……君、フィクションのキャラみたいで」

すると彼女は、かすかに何かを呟いた。

「だって、私たちは――」

けれど、その声は聞き取れなかった。

そのとき、教室の扉が勢いよく開いた。

「トワキエ様、ご到着〜!」

明るく元気な少女が入ってきて、ユナの隣の席に座る。

彼女は僕とユナを見て、楽しそうに笑った。

「あなたたち、面白そう」

……なにがだよ。

やがて、教師が入ってくる。

威厳に満ちた声。

「私はこのクラスの担任、ヤドクだ。ヤドと呼べ。天文学も担当している」

教室の空気が一瞬で張り詰める。

出席が始まる。

名前が一人ずつ呼ばれていく。

そのとき――

僕は窓の外の空を見た。

青い空。

けれどそこに――

何かが、繰り返されているような違和感を感じた。

この世界は、どこかおかしい。

それでも――

僕はまだ、その意味を知らない。

だけど、確かに感じている。

この感覚は、初めてじゃない。

これは――

何度も繰り返してきた世界の始まりだ。

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