暇を持て余した神々の校則
『毎週新しい世界を創造すること』
神々の世界で毎週っていうのは語弊があるけど、噛み砕いて理解を優先すればそんな感じなのが神の通う学校(学校というのも語弊があるけれど)の唯一にして至上の決まり事、いわゆる校則だ。
創造神コースの学生はこれに苦しめられている。
「神~、今週の課題は目途たった?」
「ああ、神、なんとかね。どこまで運営していけるかわからないけど」
「神は新しい世界を思いつくの早くて羨ましいね」
同級生の神(学生なのでまだ固有の名称を与えられていない)が、言ってくるが、実際はそんなに余裕がないばかりか、常に自転車操業である。
神(この場合の神は一人称、『私』と置き換え可、というか推奨)は早い段階で世界創造のコツを掴んだ。
たまたまある程度文明が発達した世界で、多数の創作者が生まれたのだ。
その創作者が描く世界は、その世界そのものであることが多いが、別世界の構築のきっかけとなるアイデアが含まれたりすることもある。
神は創作活動が活発になるように多少、神として世界に介入しつつ、ヒントを貰って新しい世界を構築する。
新しい世界でも文明が発達するように介入すれば、またその世界で創作が行われ、神にヒントをもたらす。
元となる世界が異なれば、その世界の創作者が思いつく世界はまた違ったものになり、新しい世界作りのきっかけになるのだ。もちろん、何千万、何億という有形無形の創作の中で神に有益なのは一握りだけれど。
「神の課題、そろそろネタギレなんじゃないか? 今週はこれで合格とするが、来週から気を付けるように」
恐れていた時がやってきた。
薄々は気づいていたが、バリエーションに多様性がなくなってきたのだ。
世界Aの創作者が世界Bや世界Cのネタとなる物語を創作し、とそれをネタにして新世界を増やしていったが、新しい世界で創作される世界は、既存の(神が過去に作った)世界のどれかと代わり映えしなくなってきた。
「どうせ、創造した世界の創作をネタ元にしているんだろう。まあ神ならば皆通る道であり、それを如何に乗り越えられるかが当面の課題だ」
担当神には見抜かれていたようだ。
「なんでこんな面倒な課題があるんでしょうね」
神は愚痴る。
「それは神のみぞ知ることだ」
担当神が口にした神は単なる神ではなく所謂最高神。神などでは恐れ多くて直接会うことのない存在だ。
それはともかく、神に取れる方法は大きくふたつ。
担神の言うとおり、根底から方法を抜本的に改革すること。
そうしてもう一つは……。
とりあえずのその場しのぎ、延命。
神のもつ多数の世界の創作者の創作意欲を刺激すること。
神の介入によって、あらゆる世界の創作者は飴やらムチやらを与えられたり社会への感謝や不満を抱くようになるだろう。
だが、仕方ない。すべては校則が悪いのだ。