↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら無敵になったけど、服が拒否されました  作者: 榊シロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/125

89話  ~お金稼ぎ~


 マズイ。あまり近くにいかないようにしよう。

 そう決意した直後、宿泊予定の赤い屋根の建物が見えた。


 なんと、となりだった。


「なんだありゃあ? うるせー奴らと隣か」

「そ……そうみたいですね……あはは」


 気の強そうなお嬢様だ。

 この調子だと、しばらくキィキィ喚くだろう。


 もう忘れられてる可能性もあるが「世も末」「変態」などと、また罵られたらたまんらない。

 なるべくバッティングしないようにしよう、と心に誓う。


「ま、ちゃっちかろうが、虫が出ようが、寝られるベッドがありゃあいい。さっさと湯を浴びて、服も洗濯しちまいてぇ」

「ヴィルクリフさんって、意外とキレイ好きですよね……」


 とにかく、休む場所の用意だ。

 預かった赤いカギを、小屋のドアへと差し込んだのだった。




「やっぱ、テーブルとイスがある場所っていいよなぁ」

「ええ……野宿が続くと、つくづくありがたみがわかるわね……」


 しみじみと二人が酒を酌み交わしているのを、口にパンを突っ込みつつ頷いた。


 時刻は夜だ。

 テーブルの中央には、いくつもの皿が並んでいる。


 エリアスとテルルが見繕ってきた食料を、備え付けのコンロで調理した簡易的なものばかりだが、熱が通り、キチンと調味料で味付けされたものは、やはりうまい。


「まあ、食料品の価格は高めだったがのぉ。こういう場所だし、仕方ないかもしれんが」

「アスタリカさん様様でしたねぇ」


 むぐむぐと、テルルが焼きソーセージを頬張りつつ頷いている。


 彼らの買い出しは無事に済み、テルルの言う「高め」の金額も、アスタリカに支給された分で事足りたらしい。


「しっかし、金の問題っつーのはこれからもついて回るよな……それこそ、傭兵するなり、仕事受けるなり、なんか金稼ぐ手段ってのは考えとかねぇと」

「……一理あるわね。とはいえ、あまり顔を売るのは得策じゃないし」

「お金、かあ……」


 RPGでは、魔物を倒すと手に入るのがふつうだ。

 この世界で魔物をぶっ飛ばした時、お金を落としてはいなかったと思う。


 いや、落としたかもしれないが、それを確認するどころではなかった、という方が正しいか。


 あとは、転生物ではギルドとかに所属して、討伐報酬という形で金銭が出ることも多い。

 前回の町ではギルドらしきものは無かったし、この世界にはないのか、ちょうどない場所だったのか。


「えっと、旅の方々ってどうやってお金を稼いでるんですかね……?」

「そうだな……旅人っつっても、だいたい商人か、それの警護の傭兵っつーのがふつうだからな。いわゆる、ホントに旅が目的ってヤツは滅多にいねぇし、いたとしても、腕が立たなきゃ魔物か盗賊に殺されちまうのがオチだしな」


 ヴィルクリフは、酒をあおりつつなにかを思い出すように目を細めている。

 その横で、エリアスもうーんと唸った。


「まあ、腕が立つ人は、だいたいどこかで傭兵や兵士として声をかけられるし……それを断って旅しているようなモノ好きも中にはいるでしょうけど、合間合間に、やっぱり傭兵まがいの仕事はしているんじゃないかしら」

「この中に、商才がある者でもいれば楽なんじゃがなぁ」


 テルルは、まるきり他人事のようにのんびりと笑った。


「アッハッハ、商才なんてあったら、もとより傭兵なんてやっちゃいねぇわな」

「あたしも……ちょっと……そっち方面はからきし……」

「右と左に同じですねぇ……」

「ふむ。どうしようもないということじゃな」


 絶望的な話の方向性になったところで、バシッ、と手を叩いた。


「やめましょう、この話。……えっと、最終手段としては、どっかの町で臨時の仕事でもするとして……今はアスタリカさんに頂いたお金があるし、あまり深く考えないでおきましょう。悲しくなるし」

「それもそうだな……どのみちここじゃ、仕事なんてねぇしな。せっかく久々のベッドもあることだし」

「あまり楽観もしてられないけど……とりあえず、ゆっくり休むとしましょうか」


 食器類をササッと片付けて、外を見る。

 空はすっかりと暗く、風も出てきているようだ。


 ぼーっと外を見ていると、ふわあ、と大あくびが聞こえた。


「そいじゃ、オレは寝るぞ」

「そうね、休みましょ。ハナ、テルル、眠れないにしても、横になるくらいはした方がいいわよ」

「ああ、ちょっと試してみますね。おやすみなさい」


 二人は、軽く手を振ってそれぞれの寝室へ入って行った。

 この建物は掘っ立て小屋ではあるが、案外部屋数は多い。


 私とテルルはどうせ寝ないしと二人に部屋を譲ったが、あと一室、ベッドが三つ置かれた部屋もある。


「せっかく、ああ言ってもらったんじゃ。お主、ちょっと試してみたらどうじゃ?」


 同じくリビングに残ったテルルが、行儀悪く姿勢を崩しながらイスにもたれている。


「まー、でも眠くないですしねぇ……むしろ、神力を蓄えるって意味でも、テルルが寝た方がいいんじゃ?」

「寝れば回復するというものでもないしのぅ……まあ、お主の話相手くらいにはなってやろう」

「ありがたき幸せー」


 ふんぞり返るテルルに苦笑を返しつつ、のんびりと窓を開けた。

 ざわざわと森の木々がしなるざわめきと、遠く、鳥だか獣だかの鳴き声が聞こえてくる。


「いやー、しかし、まさか城から魔女の話が伝わっているとは思わなかったですねぇ」

「魔女、なぁ……お主、よほど女王に警戒されておるようじゃのぉ」

「いやぁ……こっちとしては、ただひたすらに逃亡してきた、ってだけなんですけどねぇ」


 しょっぱな牢屋へ投獄され、いきなり処刑だ。

 それに、エリアスの方だって、部隊を壊滅した村に送り込んで責任を取らせる、なんてあくどいことまでやっている。

 よほど、女王の方が魔女らしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。