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異世界転移したら無敵になったけど、服が拒否されました  作者: 榊シロ


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65話 ~魔力測定~

(赤、炎属性かぁ……)


 色で属性、光り具合で魔力量が判断されるようだ。


 私は回復魔法しか使えないが、魔力量は半端ないらしいし、どういう風に診断されるのだろう。


 彼女たちの様子を伺いつつボーっと眺めていると、


「この魔力量ですと、初心者でも、こちらに陳列されているものが適切かと」


 店主が先頭に立って、奥の方へ歩いていく。


「炎属性だそうなので、宝石の色はルビーがおススメですね。あとは、持ちやすさや装飾の違いですから、お好きにお選びくださいませ」

「ええ、ありがとう。じゃあ、さっそく選ぶとするわ」


 三人は奥まった棚の前に立ち、品物を選び始めている。

 店主は彼らを案内した後、いつの間にか姿を消しているし、さすが魔法の店だなぁ、と舌を巻いた。


 このまま、三人が杖を選んでいるのを観察していても仕方がないので、神鳥を肩に乗せたまま、反対の方へ歩いていく。


「う~ん……杖、どうしようかなあ……」


 棚に置かれている杖は千差万別だ。

 もちろん金額もピンキリで、デザインが凝っているほど高価格の傾向にあるようだ。


 金額の単位は、ファンタジー世界でよくある『ゴールド(G)』らしい。

 物価がまだよくわからないが、市場で見た限り、100G=100円くらいのようだ。


「杖を買って、どれだけ使いこなせるかわかんないし……とりあえず、安いのを一本買えばいいかなぁ……」


 所持金には、限りがある。


 アスタリカからもらった金額はまだちゃんと確認していないが、ザッと見た限り50000Gくらいあった気がする。

 今後の生活を考えると、とても無駄遣いできない。


「よし……一番安い、初心者用の杖を一本……」


 と、改めて初心者用の棚へ向かおうとした時だった。


「お客様、なにかお探しで?」

「ぅわっ!?」


 真後ろからそーっと声をかけられて、思わず跳びあがった。


「驚かせてしまって、申し訳ございませんねぇ……」

「い、いぃい、いえっ! と、とんでもない……!」


 どもりつつ振り返ると、さきほどの三つ編みメガネの女性。つまり、いかにも魔女ないで立ちの店主が、後ろに立っていたのだった。


「ふーむ……それにしても、なんとも前衛的な恰好をされていらっしゃいますねぇ」


 彼女は、こちらを上から下まで眺めた後、しみじみとそんなことを言った。


 前衛的。すごくボカしてくれている。


「え、えぇ……まぁ……えぇ……」

「……ん? おや、その肩の鳥は……まさか、あの伝説のテルペロン鳥様では……?」


 と、彼女はハッと目を見開いて、今まで誰も気づかなかった神鳥にまで気づいた。


 あっこの人、本当にすごい人かもしれない。


 ちょっとビックリして黙った自分に代わり、テルペロン鳥がバサリと羽を広げた。


『ほお……さすが魔道具を扱う店の店主よのぉ』

「……! まさか、テルペロン鳥様のお言葉まで聞けるとは……」


 彼女は被っていた帽子を脱ぐと、優雅に一礼した。


「初めまして。魔道具専門店の店主をしております、グランチェスタと申します。以後、お見知りおきを」

「あっ……こ、こちらこそ。えっと、私はハナで、こっちはその、テルペロン鳥様です」


 彼女にならって頭を下げると、店主――グランチェスタは、ニコリと笑みを浮かべた。


「ハナ様ですね。しかし……なるほど。テルペロン鳥様とご一緒ということは、あなたもただ者ではございませんね?」

「えっいや、ただ者……で、ありたかったっていうか……こういう方面でただ者じゃなくなりたくなかったっていうか……」

『ぐずぐず言ったところで伝わらんぞ』

「うっハイ。すいません!」


 うだうだと訳のわからないパワーを授けた対象に文句を言っていると、ペシリと軽く羽で叩かれる。

 そんなこちらの様子をニコニコと眺めた彼女は、ふと、懐から水晶玉を取り出して見せた。


「それでは、さっそく魔力を図って頂きましょうか」

「……えっ? それってお金とかかかるんじゃあ……」

「いえ、測定にお金は頂きませんよ……さあ、どうぞ」


 メガネの奥の瞳をキラリと輝かせ、彼女はズイッと水晶玉を突き出してきた。


 そんなノリでやっちゃっていいものなのか。


 そーっと、こわごわ指を伸ばして、水晶玉に触れよう――と、した瞬間だった。


「……うわあっ!!」


 ピカァ、と水晶玉がまばゆく白く光ったかと思うと――バキィン!!


 爆音を立てて、内側から破裂した。

 そう、破裂してしまったのだ。


「うっ……うわぁ!? ご、ごごごごめんなさいっ!! べ、弁償……弁償!?」


 触れていない。が、触れる直前で壊れたということは、きっと私のせいなのだろう。


 水晶玉って弁償できるものなのか。

 そもそも、いくらくらいかかるんだろうか。


 申し訳なさと困惑と焦りでしどろもどろになっていると、眼前でぽかんとしていた店主が、ふいにクツクツと笑い始めた。


「いやぁ……なんとも……ふふ」

『まったく……お主は本当に規格外よのぉ』


 と、なぜか肩に乗っている神鳥まで半笑いだ。


 こっちは本気で焦ってるのに!? とビックリしていると、


「弁償は結構でございますよ……予備は大量にありますので、ね」


 店主はバキバキに砕け散った水晶玉に向かって、杖を取り出し、振った。


「お、おぉお……!?」


 すると、それはまたたく間に一か所に集まって、彼女の杖の動きに合わせて、ごみ袋とおぼしき紙袋の中へ飛び込んでいった。


 すごい。まさに魔法。


 呆然とその光景を眺めていると、彼女はフフッと再び笑った。


「こんな逸材、いったいいつ以来でしょうかねぇ……もしかして、史上初、でしょうかねぇ……」

「えっ、し、史上初……!?」


 もしや、水晶を割るってすごいことなんだろうか。


 そう思ったところで、元の世界で読んだファンタジー転生系の話がいくつか浮かんだ。


(そういえば……学校の入学式とかで、水晶玉を割ってた話けっこうあったかも……!!)


 そして、軒並みそういう主人公は無双していた。

 つまり、自分もとんでもない魔力量ということなのだろう。


 なんか、おおごとになってきたぞ。

 身構えた自分に、グランチェスタはスススッと近づき、手首をつかんできた。

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