表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら無敵になったけど、服が拒否されました  作者: 榊シロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/81

62話 ~服2~

(服……このファンタジー世界観において問題ないような……いたってふつうの服……!!)


 警備隊に通報されず、町の人からもヒソヒソされないような、マトモな服――。


(魔法……魔導士……ローブ……そうだ、ローブだ!!)


 ピカッ、と脳内に電球が浮かんだ。


 魔法使い、魔導士といえば、ローブだ。

 黒色の、シンプルで、地味なローブ!


(コレだ……! ローブなら、さほど難しい構造じゃない……形状的にはポンチョみたいなモンだし……!!)


 手に持った羽根に、グッと意識を集中させる。

 羽根がほどけて、ふわふわの綿毛が服を形作っていくようなイメージ。


 集中。集中。

 体に流れている魔力を、一点に集中させる――!!


「……ハアッ!!」


 ぽふんっ


 軽快な音と共に、手元が光る。

 だんだんと光は服の形になっていき、そして――。


「あ、はは……で、できたっ!!」


 ひらひら、と、眼前に服が舞う。

 両手でガシッと握りしめ、バッ、と開く。


「や、やったー!! まともなものができ……あれ??」

『……まとも……??』


 横から、疑問の声が上がった。


 ローブはできた。できた、が――。


「……なんか、めっちゃ光り輝いている……というか、ゲーミングしてるんですけど……!?」


 月明かりの元、両手で広げたそのローブは、異質だった。

 一見、子どもがお遊戯会で着るような銀色のローブ――と思いきや、明らかに発光しているのだ。


 そう、発光している。

 それはもうド派手に。クリスマスツリーかくや、という感じで。


 しかも、よくよく見ると丈も短い。これは羽根が足りなかったからかもしれない。


「これはひどい」


 これを着用して、通報されることはないだろう。

 絶妙に寸足らずではあるものの、一応、全身を覆ってはいる。


 ただ、なにか、大切なものを失う――そんな気はする。


『着るのか……それ』

「うっ……まぁ……今のエプロン姿よりはマシ……だから……」


 フリフリ水色裸エプロンよりはマシだろう。

 本当に『マシ』程度であるし、マイナス100がマイナス50になる程度の違いでしかないが。


 バサッ、と上からゲーミングローブをまとい、いそいそとエプロンを脱いだ。


「あ~……エプロンをしまっておく袋がない……!」

『む、預かろうか?』

「へっ?」

『一応、神鳥じゃからのぉ。モノを出し入れできる空間というのを持っておるのじゃよ』

「ほほぅ、そういう便利枠……」


 なにもかもが理不尽な世界だと思っていたが、まさかのサポートだ。

 確かに、よくある転生モノでは、そういう『異次元ポケット』的なモノがよく出てきていた気がする。


「あっじゃあお願いしまーす……あ、えっと、ティアラと黄金バナナもお願いしていいですか?」

『ティアラはともかく、この黄金バナナは手放してもいいのではないか?』

「いやー、どっかで高値で買い取ってもらえるかもしれませんし」

『バナナをか……まぁ、構わんがのぉ。じゃ、保存するぞ』


 と、神鳥はひとつ頷くと、クチバシの先でコツンコツン、とアイテムをつついた。


「えっなにを……うわっ!」


 ピカピカッ、とティアラとバナナ、そしてエプロンは白く光ると、あっという間に姿を消した。


 その場に残ったのは、呆然とするゲーミングローブを着た私と、神鳥の二体だけ。


「おぉぉお……」

『よし、これでいいじゃろ。……お主のその姿は見慣れんが……とりあえず、町中を歩くことはできるようになったの』

「そうですね……とりあえずは……はぁ……」


 深々と、ため息をつく。

 一回目だし、よくできた方――か? とりあえず、服の形としてはできた、と思いたい。


「初回がこんなだったですけど……何度も回数を重ねれば、ちょっとはマシになっていきますよね?」

『……まぁ、たぶん……きっと……』

「えっ、なんでそんなフワフワした感じなんです?」

『回数をこなせば、確かに経験値は貯まる……が、まぁ、センスというモノがあるからな……』

「えてこれ、私のセンスじゃありませんから! 私、もっとシンプルな黒い地味ローブを想定してましたから!!」


 それなのに、いったい全体どうしてこんなド派手ローブになってしまったのか。

 

 わめく自分に対して、神鳥はさも興味なさそうに毛づくろいした。


『まぁ、しょうがない。時間も時間じゃ。今更宿を探しても仕方がない……もう少しして日が昇ったら、屋台か市場のある中央広場にでも向かうかのぉ』

「おお……いきなりひと目のあるところへ……」

『コソコソしとったら、その方が怪しいじゃろう。堂々としておれ、堂々と』

「うぅぅ……ハイ……」


 神鳥は励ますようにツンツンと指先をつついた後、肩の上にヒョコリと乗った。


「あっ、ところで、テルペロン様はどうしてここに? その……バルシュミーデ家で保護してもらった方が安全なんじゃ?」

『言ったじゃろう? 神力が尽きそうじゃ、と。あそこにいたら、知らぬ間に力が尽きて、消え去ってしまうわ』

「あー、そういえば……ということは、テルペロン様はずーっと私といっしょにいなきゃならないんですねぇ」

『そういうことじゃのぉ。神力を自力で生成できるほど、わたしはまだ回復しておらぬし』

「ああ……そう、ですか」


 よかった、と。不謹慎ながら、胸を撫でおろした。


 エリアスも、ヴィルクリフもいなくなり、また一人きりに戻って。

 この地にすっぱだかで放り出された当初の心細さ――当時はいっぱいいっぱいでそれどころではなかったが――が、じりじりと心を焼いていたのだ。


 しばらくは、テルペロン鳥がそばにいてくれる。

 そう思うと、嬉しい。


 ニコニコと機嫌がよくなった私を見てか、神鳥は肩にとまったまま、羽をそっと畳んだ。


『……本当に、変な女じゃの、お主は』

「えっ……ど、どこらへんが……??」

『なにもかも変じゃろ、お主は』

「くっ否定したい……否定できない……ジレンマ……」


 路地裏でのんびり空を見上げながら、夜はさらに更けていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ