一八八 鐘楼から見る光景
教会の鐘楼から、ダレロは広場の戦況を見つめていた。
広場の戦闘において、南口から雪崩れ込んで来る爬神軍を食い止めるために、ラビッツと隊士たちが奮戦しているのがわかる。彼らの働きは素晴らしい。しかし、いくら食い止めようとしても、押し寄せる爬神軍の勢いを止めきれるわけでもなく、新たに広場に入ってきた神兵たちは徐々に広場中央付近にまで広がって、疲れの見える隊士たちに襲いかかっていた。
その光景を、ダレロの背後に立つキキアとルドスは涙を流しながら見ていた。
巨大で圧倒的な力を持つ神兵と腕力に優る蛮兵を相手に死に物狂いで戦い、どんなに傷つき疲弊しても、それでも立ち向かっていく隊士たちの姿に、二人は胸を震わせ感動しているのだった。
俺もあの中で戦えたら・・・
キキアはそう思い、
次は俺も・・・
ルドスはそう心に誓う。
ダレロは右手で顎を摘むようにして戦況を見極めていたが、
「うん」
何かに納得して頷くと、キキアとルドスに振り返った。
「私はこれから第二陣と合流する」
ダレロがそう告げると、二人は〝いよいよその時が来た〟と思い、気を引き締めた。
「キキア、我々の準備ができたら煙を上げる。お前は中央広場に上がる煙を確認したら、ルドスに鐘を鳴らすよう指示を出せ」
ダレロはそう命じ、
「わかりました」
キキアは緊張した面持ちで返事を返す。
「ルドス」
ダレロはルドスに優しく声をかける。
「はい」
そう応えるルドルの顔が、気負いすぎて強張っていた。
「ラドリアの街全体に響くくらいに、力一杯鐘を鳴らすんだぞ」
ダレロはそう言うと、緊張で固くなっているルドスを安心させるような、そんな笑顔をみせた。
それが効いたのか、ルドスは表情を緩め、
「はい!」
と大きな声で返事をし、胸を張るのだった。
「二人とも、任せたぞ」
ダレロはそう言い残し、鐘楼の階段を駆け下りていった。