一八七 南口へ
ガシッ!
ミカルは蛮兵の太刀を受け止めると、一度強く前に押してから、さっと左後ろへ引いて相手のバランスを崩しながら背後へ回り込み、
バサッ!
「ギャッ!」
その背中から斬り捨てた。
「ふぅ・・・」
ミカルは大きく息を吐いて呼吸を整える。
ミカルは戦況を見極めるために、折り重なって倒れている神兵の屍の上に立って広場を見渡した。
広場中央から北側一帯は護衛隊の隊士たちの奮闘で神兵、蛮兵の数も大分減っているのがわかるが、勢いのある神兵たちが少しずつ広場中央付近まで押し寄せていて、状況はかなり厳しいと言わざるを得ない。
広場の南側ではラビッツを中心に死闘が繰り広げられていて、ラビッツの茜色のバンダナの数ももう僅かしか見えなかった。
時間の経過と共に戦況はどんどん悪くなっていて、活力漲る神兵たちは、疲弊した隊士やラビッツの霊兎たちを簡単に殺していくように見えた。
その中で、ミカルが気になったのはタヌとラウルのことだ。
このままでは、タヌとラウルが危ない・・・
「ドゴレ!」
ミカルは近くで戦っているはずのドゴレの名を叫んだ。
「なんだ!」
ドゴレの返事が聞こえた。
ドゴレは返り血で服を真っ赤に染めていて、その肌につく乾いた血がドゴレの顔を赤黒くみせていた。
広場南側の戦場では兵士たちが入り乱れて戦っていて、ぐちゃぐちゃの状態だ。
広場に立ち込める血の臭い。
「南口で戦うぞ!」
ミカルがそう叫ぶと、
「おう!」
ドゴレはそれに応え、二人は広場南口へ向かって移動を始めた。