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ラビッツ  作者: 無傷な鏡
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一七〇 コンクリの放つ矢


 ギィアウォオー!


 ドラゴンは広場に土煙を巻き起こしながら空高く舞い上がり、北西の空に飛び去っていった。


 コンクリはドラゴンが飛び去るのを確認すると、広場中央の動きを注視する。


 コンクリは左手に弓を、右手に矢を持ち、険しい表情で椅子の前に立っていた。


 赤の爬神が白髪の娘の頭を引き千切り、それを口の中に放り込んだ。


 コンクリはその様子を表情を変えずにじっと見つめていた。


 そこに赤褐色の霊兎が駆けつけ、黒の爬神と剣を交える。


 その向こう、広場中央から南口へ向かう通路を、ステラ・ゴ・ステラが従者を引き連れ悠然と引き上げていく姿が見える。


 東西に伸びる舞台には左腕に茜色のバンダナを巻いた霊兎たちが立ち並び、赤褐色の霊兎の戦いを見守っているのだった。


 その中には銀色の霊兎の姿もある。


 イオス、お前が一緒なら、心配はいらないだろう・・・


 コンクリは銀色の霊兎を見て微かな笑みを浮かべる。


 そして、舞台東側にいる亜麻色の霊兎を見つけ目を細めた。


 どこにいるかと思ったら、こんな所にいたのか、クルカよ・・・


 赤褐色の霊兎は黒の爬神の繰り出す太刀を、黒の爬神を見もせずにゆらゆらとした動きで躱していた。


 相変わらず見事だな、ジアヌ・・・霊兎族最強と謳われた男・・・


 赤褐色の霊兎は黒の爬神の繰り出した太刀を躱すと、その頭上に跳び上がり、眉間めがけて剣を振り下ろした。


 黒の爬神はその素速い動きに反応できず、眉間に太刀を受けるとうつ伏せに倒れ、絶命した。


「遥か昔、ラドリアの戦いでお前を失っていなければ・・・お前が私をかばって命を落とすことがなければ、その後の歴史は変わっていたはずだ・・・」


 コンクリはそう呟き、懐かしそうに赤褐色の霊兎を見つめた。


「そして今ここに、私が存在することもなかった・・・」


 コンクリは口元に笑みを浮かべると、弓に矢を番え、斜め上空に向かって構えた。


 これが私の最後の仕事だ・・・


 コンクリは広場南側の一点を睨みながら弓を引くと、


「後は任せたぞ・・・」


 そう言って矢を放った。


 ヒューーン!


 矢は緩やかな弧を描きながら鋭く飛んでいく。


 矢は広場中央を越え、真っ直ぐに通路を南口へと引き上げるステラ・ゴ・ステラの後頭部めがけ落ちていく。


 ブスッ!


 矢はステラ・ゴ・ステラの後頭部、首の付け根に突き刺さり、矢尻がステラ・ゴ・ステラの口から飛び出していた。


「うごっ、うう・・」


 ステラ・ゴ・ステラは目を見開いて呻き声を漏らし、膝から崩れるようにしてうつ伏せに倒れると、そのまま絶命したのだった。


 ステラ・ゴ・ステラが矢に倒れる姿を目撃した赤の爬神が、慌てて神兵たちに号令をかけ、戦闘が始まった。


 ガシャッ!ガシャッ!ガシャッ!


 剣と剣がぶつかる金属音が広場中に響き渡る中、コンクリは弓を従者に渡し、広場に背を向け引き上げる。


 コンクリは従者を待たず、自ら教会堂の入り口の扉を開けると、ゆっくりとその中へ消えていった。


 従者の二人は慌ててコンクリを追って教会堂の中に入ったが、そこにコンクリの姿はなかった。


「コンクリ様?」


 驚いて教会堂の中を見渡したが、やはり、どこにもコンクリの姿は見つけられなかった。 


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