一六二 コンクリの失望
ギィアウォオー!
騒然とする広場。
生贄の柩の両脇に立つ二人の神兵が生贄の柩に手を伸ばしたそのとき、中央通路を走ってきた白髪の娘が飛び出し、目にも留まらぬ速さでその二人の神兵の鳩尾を刺し、喉を刺した。
神兵は二人とも口から血を流して地面に仰向けに倒れ絶命した。
広場の隊士たちは何が起こったのか理解できず呆気に取られ、広場は静まり返る。
「愚かな・・・・」
教会堂入り口に置かれた椅子に座って広場の様子を眺めていたコンクリは、白髪の娘が神兵を斬り殺す様を見て険しい表情でそう呟いた。
中央通路を駆け抜けて生贄の柩に向かうその娘の姿に、広場に整列する護衛隊、そして教会前に整列する親衛隊は、ドラゴンに気を取られ誰一人気づかなかったのだ。
コンクリは生贄の柩をじっと見つめ、
これも天の計らいということのなのか・・・
苦々しい顔で首を横に振って「ふぅー」と長い息を吐き、鋭い眼差しで宙を睨んだ。
「ならば・・・」
コンクリはそう呟くと、顔を上げて広場の一点に視線を向けた。
コンクリの視線の先にはステラ・ゴ・ステラの姿があった。
ステラ・ゴ・ステラは広場が騒然とする中、従者を引き連れ、中央通路を悠然と歩いていた。
ギィアウォオー!
ドラゴンが上空で咆哮する。
コンクリは生贄の柩の前で爬武官と睨み合う白髪の娘に視線を向け、その姿を憐れむかのような笑みを微かに浮かべると、静かに立ち上がって左に立つ従者に声をかけた。
「弓と矢を」
コンクリがそう言うと、従者は抱えていた弓と矢をコンクリに手渡した。