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ラビッツ  作者: 無傷な鏡
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一三〇 宿命の矢


 夜、シールはなぜだか寝付けなかった。


 部屋の入り口からそよ風が吹き込んでくると、シールは外の様子が気になった。


 シールが外に出ると、弓術場の近くにトマスが立っているのが見えた。


「えっ」


 シールは驚いてトマスに近づいていく。


「トマス?」


 声をかけると、トマスはシールに背を向け歩き出した。


 トマスは弓術場の脇を抜け、神殿に向かって歩いていく。


 シールはトマスに導かれるように、その後を追いかけた。


 不思議とトマスを引き止めようとは思わなかった。


 トマスがどこか神秘的に見えたからだ。


 トマスは神殿前の〝聖なる井戸〟の前で立ち止まった。


 シールはトマスに追いついて、聖なる井戸の手前で立ち止まる。


 トマスはシールに振り返ると、虚ろな眼差しでシールを見上げ、無表情のまま笑みを浮かべた。


 シールはトマスのその表情に驚いた。


「トマス?」


 シールのその呼びかけにトマスは何も応えず、ゆっくりと神殿の入り口を指差した。


 シールがトマスの指差す先を見ると、神殿の入り口の扉が微かに開いていた。


「あれ?」


 こんな夜中に入り口の扉が開いてるはずがない。


 シールはそれをおかしいと思った。


 そのとき、


 ヒュッ!


 と、風を切る音がして、


 ブスッ!


 シールの左胸に矢が突き刺さったのだった。


「うっ・・・」


 シールは自分の胸に突き立つ矢を見て、目を見開いて驚いた。


 矢の刺さったシールの左胸が青白く光り、そしてその光はゆっくりと消えていった。


 シールがトマスに目を向けると、そこにトマスの姿はなかった。


「どうして・・・」


 それがシールの最後の言葉だった。


 ドサッ。


 シールは目を見開いたまま膝から崩れ落ち、その場に仰向けになって倒れたのだった。


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