002 ハリー・トンプソン
私はハリー・トンプソン。
歳は51、米国で魔法学者をやっている。
私自身が強力な魔術師であり、研究者としての顔と合わせてかなり有名人である。
魔法を安全に制御する装置、魔法の痕跡を感知する装置、魔法を止める装置などを世に広めたことでいち早く魔法によって生じた社会の混乱を沈めたことで有名になっている。
しかし、公式には発表されていないあらゆる装置も各国の政府に高値で売りつけており、世間で噂されている以上にかなりの金を持っている。
メディアに見せる顔は老けメイクをしているが、実際は自分の肉体を魔法と機械を使い、30歳程度に留めている。英国人のような顔つきで、かなりのイケメンということもあり、今でも女遊びは絶えない。
「さて。これからどうしていくかな」
流石の彼も年相応の落ち着きが出始めてきた。これからの人生の方針をふと考えてしまう時がある。
何かヒントを得られないものかと、普段はあまり読まない文学を漁ってみたが、魔法研究や女遊び以上にそそられることは浮かばなかった。
「魔法戦争でも起きてくれれば、大活躍できるんだかとな」
魔法研究ばかりで、実際に自分が魔法を発動して活躍するという機会はあまりなかった。これからの人生に刺激を与えてくれるのはそんなぶっ飛んだ話くらいかもしれない。
ハリーは数分で読破してしまったつまらない本を閉じ、いつも見ているバラエティー番組を見ようとテレビを点けた。
しかし、そこに写っていたのはハリーの好きな番組ではなく、意味不明なニュースだった。
「ホワイトハウスが襲撃され、ただ今占拠されているとのことです。さらに、大統領の命令で占拠されたホワイトハウスにミサイルを撃ち込むとの情報も入っています」
「ほう…」
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ある日の昼頃、ホワイトハウスの執務室。
アメリカ大統領は戸惑っていた。
当然だ。この状況で戸惑わない、変人が大統領になれるわけがない。
現在、ホワイトハウスの執務室の中央の席に座る彼の眼前には5人の侵入者がいた。彼らはこそこそと潜入してきたわけではない。堂々と正面から入ってきたのだ。
当然ながら、その侵入を拒むためにアメリカのあらゆる戦力が行動を起こした。しかし、近く者はことごとく殺され、銃やミサイルを食らっても傷一つつかなかった。
大統領の他に執務室にいる侵入者に銃を構えたシークレットサービスや軍人が撃たないのも無意味だと理解したからだった。
「何が目的だ…国家転覆か?」
大統領は震えそうになる声をどうにか抑え、絞り出すように5人に向けて言い放った。
「いいえ、違うわ。国家…ではなく世界制服かしらね」
中心に立っていた少女が答える。
癖のついた長い金髪、青い眼の少女。まだ中学生くらいだろう。容姿の美しさは形容しがたいほどで、人ならざる天使を思わせた。
高級そうな白いコートとミニスカートを身に付けている。
「世界制服だと…何者なんだお前たちは。この国の人間か?それとも他国の侵略者か?」
「そうねぇ。異世界からの侵略者と言ったところかしら。とにかく、まずはこの国を奪うわ。さっさと降伏して、この国を渡しなさい」
「どういう能力をお前たちが備えているのかは知らんが、今この場では私達に勝ち目はなさそうだな。しかし、国を渡すなど私でも1人で判断できることを遥かに超えている」
「ええ、分かっているわ。だから、チャンスをあげましょう」
「チャンスだと…」
「この国を奪うわれない為に、私達を倒すチャンスよ。まずはこのホワイトハウスとやらを明け渡しなさい。1時間以内に必要な物を持って全員退去して。その後に24時間あげるから、この国を私達に渡すという決定をしたおきなさい」
「それのどこにチャンスがあるんだ?」
「私達は24時間の間、ここに留まるわ。どんな攻撃でも仕掛けてきなさい。私達がもし生きていたら、その後に交渉といきましょう」
「なるほど。我々がどんな攻撃をしても、無駄だと分からせるというわけか」
「そうよ。侵入してこない限りは抵抗もしないから、遠慮なく攻撃してきてね」
「随分とお優しい条件だな」
「でも、もし私達を殺せなかった場合は報復と見せしめをするわよ。流石に、無血開城なんて無理だろうしね」
「政治家や軍人を殺すということか?」
「そんなところね。でもそれだと優しすぎるから、その家族も殺そうかしら。残忍さを見せつけておかないと。当然、大統領である貴方の家族は皆殺しにするわ」
「なんだと!ふざけるな‼︎」
「ふざけてないわよ。ショッキングな催しになるでしょうね。ギロチンなんかどうかしら」
「貴様‼︎‼︎」
大統領は恐怖など吹き飛び、今にも襲い掛かりそうなほどの怒りが込み上げる。
「そうなりたくないなら、頑張って攻撃してきなさい。今、この場で殴りかかってくるなんていう、馬鹿な真似はしないでね」
「クソが‼︎」
「さて、カウントダウン開始。今、12:36だから1:36までに出てってね。残ってたら、殺すよ〜」
少女は一旦お開きと言わんばかりに大きく手を叩く。
「全員退去だ!必要なことを済ませて、一刻も早くここを離れるぞ!」
大統領の命令により、聞こえた者たちは即座に動き出す。侵入者5人を横目にいそいそと部屋を出て行く。
廊下に出て、一人の男が大統領に詰め寄る。
「これからどうするんですか、大統領?」
「連中の望み通り、総攻撃だ。ここを消し去るつもりで徹底的に攻撃しろ。周辺住民の避難させ、軍に準備をさせろ」
「了解しました。すぐに連絡します」
「それと魔導師部隊も集結させておけ。ミサイル程の威力は出せない聴いているが、あの侵入者どもが魔法を使っているのなら、なんらかの役に立つかもしれん」
「分かりました。そういうことでしたら、ハリーさんにも声をかけますか?彼は軍に所属しているわけではないので、強制は難しいですが…」
「ああ、そうだな。奴ならどうにかできるかもしれん。連絡の準備だけしておけ」




