001 古賀可憐
私は古賀可憐。
17歳の引きこもりである。
引きこもりになったのは小学生の物心がつき始めたころ、私がかなり強い魔法適性があることを知った頃からだ。
厨二病に目覚めたとかではなく、100年ほど前からその存在は噂されていて、現在では周知の事実だ。現在では、ほとんどの国が魔法使いを編成した軍隊を作っているほどだ。
しかし、魔法使いはそこまで多くはいない。少し能力が使えるくらいの人間でも100人に1人くらい。ハンドガン程度の能力を使える人間は1万人に1人。大型の重火器程度の能力を使える人間は100万人。そして1億人に数人ほどが人間兵器と呼ばれるほどの怪物である。少ない順からクラスS、A、B、Cと分類される。
幸か不幸か…いや、私にとっては最悪に不幸なことに、おそらく私はそのクラスSに分類される能力を持って生まれてしまった。
私が怖かったのは自分の能力というより、周りの人達だ。
各国の政府は異常な程の好待遇を餌に、躍起になってその怪物達を管理下に置こうとしている。強い魔法使いの保有数は今や国力の1つだ。そして今現在、ほぼ全てのクラスBまでの魔法使いは国に登録されていると言われている。
学校などで秘密裏に検査が行われているというのは、国が公式に発表していないだけで、人々の間では暗黙の常識となっている。
私は国や世間、かつて友人や実の親ですら自分を利用するつもりなのではないかと疑ってしまい、誰にも言えぬまま引きこもりになってしまった。
しかし、私はニートというわけではない。
私の魔法は物質変化に長けているので、その能力を使いフィギュアなどを作って売ってみたらかなりの値段で売れた。今では個人から注文がかなり入るようになり、両親より金が入るようになった。
「おっ!等身大フィギュアの依頼か。依頼料200万、受けるしかないね。このキャラは私も好きだし、とびきり凝って作るとしますか」
14歳頃から始めたこの仕事。温厚な両親もそろそろキレるんじゃないかと感じ始めたころだった。
父と母には多少魔法が使える、それが原因で引きこもったと説明した。そして、フィギュアと儲けたお金を見せつけて、「私はこの魔法の能力でフィギュアを作って売る仕事を通して、この能力と向き合っていく。」などといいうそれらしい事を言った。
おかげで公認の引きこもりになれたわけだが、お金もかなり溜まったので、そろそろ一人暮らしをしようかと思っている。
仕事いうのはやってみると良いもので、私に生きる活力を与えてくれたようだ。生活の質も向上し、黒いスウェットの一択だった私もかなりオシャレに目覚めた。
「ふふ。やっぱり、結構かわいいよね、私」
オシャレに着込んだ自分の写真を見るたびに自信がつく。パソコンのトップ画像は一番のお気に入りの写真にしている。イタイ奴だと自分でも思うが、自己満足をしているだけなので別にいいだろう。
仕事の依頼を見ている途中でもついつい気になってしまう。
顔は結構整ってると思うし、自分で切っている髪もちゃんと梳かせばそれらしく見える。引きこもりの割にちょうどいい肉付きだし、かわいい服を着ればなかなかいい女だと思う。
「この仕事がちゃんとできたら、また新しい服でも買おうかな。いやでも、先に減らしたい方がいいかー」
服は散在するほどあるわけではないが、このままでは使わない服まで出てきてしまう。お金があるとしても、少し慎重になるべきかもしれない。
しかし、服を買いたいという衝動を抑えられずに調べようとしていた時、なんとなく点けていたテレビから珍妙なニュースが聴こえて手が止まった。
「げ…現在、私は東京湾付近にいます。巨大な触手を持つ怪物が現れました!山のような大きさです!」
「はっ⁈」
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ある日の昼頃、東京湾周辺にあるビルの上、1人の黒い服を着た男がに立つ。
黒いコート、黒い服、黒い髪、黒い瞳、肌は白い少年と青年の間程の歳の男。
「そろそろか」
男は静かに自分の左腕を見る。そこには自分の主人から授けられた刻印が刻まれていた。
「ベル。始めるわよ。準備はいい?」
主人の声がいきなり頭に響いてきた。何度も体験していることだが、遥かに離れた主人の声をここまではっきりと聞こえるというのは未だに違和感を感じる。
「はい、シエラ様。いつでも準備はできています」
「よろしい。では、あれを送るわ。私が授けたその刻印で操れるから、上手くやってね」
「はい。ちなみにどれくらいの強さなのですか」
「魂エネルギー量は7800万程ね。鈍重でデカイだけだけど、魔法耐性と高い回復力を持つかなり面倒な奴よ」
「エネルギー量だけだと、私以上じゃないですか…」
「だから、私が授けたその刻印で操るんでしょ」
「はい。破壊規模はどれくらいにしますか?」
「そうねぇ。その国の首都である東京を潰すくらいにしときましょうか。流石に首都の崩壊前には強者が出てくるでしょう。その時は…」
「はい。即座に捉えます」
「よろしくね。良いのを捕まえたら、すぐに教えてね」
「はい」
通信が切れ、ベルは海を見る。
そこには特大の魔法陣が広がり出していた。そこからぬるぬると化物が這い出してくる。
「本当にでかいな。それに芳醇な魔力量を感じる。仮に私が倒そうとしたら丸一日は費やさねばいけないかもしれないな」
魔法陣から出てきたのは巨大なタコの怪物だった。ほとんど普通のタコと見た目は変わりがないが、その大きさと鋭く禍々しい姿は見る者に圧倒的な絶望感を与えた。
「さあ、この都市を破壊し尽くせ化物よ。機械文明と共に堕落し続けた雑魚どもに、魔界の偉大さを知らしめるのだ」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼︎‼︎」
響き渡る低い咆哮を合図に怪物は破壊を開始した。




