【九、陽動作戦】
毎年七月七日の七夕にSF短編を投稿するという『七夕一人企画』を実行しています。今年もなんとか「星に願いを・2016」をお届けできそうです。七夕の「織姫と彦星の物語」に因んだSF短編をご堪能くださいませ。【七夕一人企画・2016】
「それで、その『ブタドックリちゃん』はコンテナ船の中にいるわけね。さっそく見たいわ。早く見せてよ!」
席を立とうとするルキァをアクティは引き留めた。
「いえ、合計四体の『ブタドックリ』は、もうコンテナにはおりません。既に作戦行動に入っていますので」
「作戦行動って? それはどういうこと?」
真顔に戻ったルキァは、アクティをにらみつけた。
「これからご説明いたします。私とキーンは惑星の表面に降りる前にケケモモを周回、サーチ・センシングを行ってネペンドンの分布と動向を探りました。そして、ルキァさんたちが作る『罠場』に向かわせるのに最適な位置にいる二体のネペンドンを選定、それぞれにブタドックリを二体ずつを投下して配備し、二体は連携しながらネペンドンを陽動します。ネペンドンが動けなくなる明日の朝ちょうどにこの罠場へとたどり着くよう、ブタドックリのブレインに学習させてあります」
「えー、そうなんだ。ちょっとつまんないな」
ルキァはちょっと不満そうだった。
「やっぱり『草木染め』だからさ、自分の手で探し出して摘み取らないと実感が湧かないのだよねぇ」
アクティは、ルキァの意気消沈した顔を見るのがつらそうだった。
「分かりました。今回はやり過ぎたようですね。次回はご希望にかなうよう善処しますから」
アクティの言葉に、ルキァは力なく手を上げて合図をした。
「オーリヒを危険な目に遭わせたくないっていう思いもあるから、これはこれで仕方がないわね」
ルキァは自分の頬を両手でパパンとたたいた。
「ブタドックリたちが夜通しで懸命に仕事をしているらしいから、明日の朝には窓の外にペンドンを拝めるでしょう。だから、今夜は時間が空いちゃったからパーッと飲みましょう!」
私のグラスにワインをなみなみと注いたルキァは、アクティと腕を交差させてウォッカを一気飲みした。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【七夕一人企画の宣伝】
毎年七月七日に個人で勝手に騒いでいる『七夕一人企画』です。
今年で十年の節目を迎えるこの企画、一人で勝手に七夕SF企画なのですが、自分の小説が毎年一つずつ積み重なっていく楽しい企画です。