【二十、ゲームオーバー】
毎年七月七日の七夕にSF短編を投稿するという『七夕一人企画』を実行しています。今年もなんとか「星に願いを・2016」をお届けできそうです。七夕の「織姫と彦星の物語」に因んだSF短編をご堪能くださいませ。【七夕一人企画・2016】
四体のブタドックリが採集した分とルキァ自身が体を張って採集した分を合計した『カラフルグラヴィトン・マジカルレインボー』の量は、予定数量の約二倍だった。
「これで二年間は創作活動に打ち込めるわ!」
ルキァのよろこびはひとしおだった。アクティも十分に満足できる結果を残したようだ。
これで作戦は完了した。
ただ一つの「事故」を除いて。
洗浄室から出てきた白いアンドロイドはとても美しかった。
シリコン素子とプラスチック素子が緻密に融合したバイオ=クオンタムタイプのAIユニット、可動範囲を柔軟に設定できるEPで成形されたボディ、電力と流体とを高次元でマッチングさせたアクチュエータやセンサー類、さらに食物を分解して直接電気エネルギーに変える超小型のアッシマレイト・プラントといった最新のテクノロジーが惜しげもなく投入されていて、それらを均整の取れたヒト型のボディプロフィールにこの上ない完璧な実装技術で納められていた。
「むむ、これは……」
精密機械を扱えるようにクリーンルームの仕様に変更したラボで防じん服を着たアクティが腕を組んでうなったまま立ち尽くしていた。
「手が入るすき間がないですよ。いや、物理的な『間隙』はもちろん存在していますねぇ。ラジエター部分のエアインテークとか。そこから中和するまでの時間に流れ込んだネペンドンの消化液がダメージを食らわせたってイメージですかね。それにしても、分解する手立てが全くないですなぁ。ビスとかナットの類はもちろん、フックやラッチ、スナップを使っていない。おそらく接着もしくは溶着を多用している感じだ。うーん、これは困ったなぁ……」
アクティが独り言をつぶやいているラボのサブルームから、ルキァがガラス越しにネットで調べたことをアクティに伝えた。
「このアンドロイドのモデルとか型番とか年式はどこにも掲載されてないわ。唯一、全宇宙ボット協会のサイトに登録番号があって、備考欄に『プロトタイプ』と書かれているだけ。あ、待って。所有者の記載があるわ。えーっと。……え?『ケーン・ギュの個人所有』だって! これってどういうこと?」
ぼーっとルキァの横に座って、ずーっとすすり泣きが止まらない私だったけど、『ケーン・ギュ』の名前を聞いて色めき立った。
「ケーンがどうしたっていうの?」
私の変わり身の早さに驚きながら、ルキァは簡単に答えてくれた。
「この白いアンドロイドの持ち主はケーンなんだって。今のところはそれしか分かってないけど」
「そういえば私、キーン君のことを時々、ケーンじゃないかって思うことがあったのよね。ひょっとして『キーン』はケーンのコピーロボットだったという可能性もあるのかな?」
「それは分からないわ」
私とルキァがしゃべっている間にも、アクティは白いアンドロイドを丹念に調べていた。再度、全身のスキャンを試みて、その画像を精査していた。
「やはり有りましたよ! わきの下にあるから目視では見過ごしてしまったんだ」
アクティは喜々としていた。
「何を見つけたの?」
私の質問に、アクティはにこやかに答えた。
「端子です、接続端子。調整用とかデータ用とか制御用とかといろいろな種類がありますが、こうしたロボットの類には外部の機器と接続するための端子が必ず存在します。それのことですが……しかし、これは特殊な端子だなぁ。この種のプラグは持ち合わせてないので、自作するしかありませんねぇ……」
ブツブツ言いながら、アクティは船倉へと姿を消した。
「直るといいね」と私。
「そうね」とルキァ。
キーンと過ごしたのはたった三日間だった。その三日間を思い出しながら、私はキーンが修復することを切に願った。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【七夕一人企画の宣伝】
毎年七月七日に個人で勝手に騒いでいる『七夕一人企画』です。
今年で十年の節目を迎えるこの企画、一人で勝手に七夕SF企画なのですが、自分の小説が毎年一つずつ積み重なっていく楽しい企画です。




