【十九、白いカラダ】
毎年七月七日の七夕にSF短編を投稿するという『七夕一人企画』を実行しています。今年もなんとか「星に願いを・2016」をお届けできそうです。七夕の「織姫と彦星の物語」に因んだSF短編をご堪能くださいませ。【七夕一人企画・2016】
辺りはすっかり暗闇に包まれていた。しかし、コンテナ船に備え付けられたクレーンの照明で、罠場は明るく照らし出されていた。そこには、大きな捕獣袋をロボットアームから吊り下げた赤色のブタドックリと、仁王立ちのルキァと、ブタドックリのコントローラを持ったアクティと、そして、へたれ込んで座っている私がいた。
「かなりの時間が経過しているわ。もう溶けちゃったかもしれない……」
言葉をにごすルキァにアクティが応える。
「確保した時点で捕獣袋にはロボットアームから消化液を中和する薬剤を注入してあります」
「それにしてもこの状況なのよ……」
悲観的なルキァに、アクティが強く告げた。
「とにかく捕獣袋を開けましょう!」
意を決したルキァが、腰からコンバットナイフを取り出して捕獣袋に近づき、コンバットナイフを逆手に持った右手を左手で支えながら上から下へと一気に切り裂いた。切り口からは、ドロッとした白濁の液体が一気に、そして大量に流れ出た。その後に、白い何かが飛び出して地上にゴロンと落ちた。それは、ヒトの形をしていて、表面は真っ白なEPでカバーされていて、関節部分や首の部分からは配線やホースがのぞいていた。
「アンドロイド?」
「そのようですね」
ルキァとアクティの淡々とした会話のはざまで、私は突然、突き上げてくる激しい感情に襲われた。真っ白の物体に走り寄り、そのアンドロイドを抱きしめながら、私は泣き叫んだ。
「ケーン、死んじゃ嫌だ! 嫌だよ、ケーン!」
私の行動にビックリしたルキァとアクティは、私をアンドロイドから引きはがしながら言い聞かせる。
「オーリヒ、勘違いしないで。これは『ケーン』じゃないわ。人間じゃなくてアンドロイドよ。それに元は『キーン』だったの。だから違うのよ。しっかりして!」
「オーリヒさん、まだ消化液の影響があるかもしれませんので離れてください。大丈夫ですよ。不肖ながらこのアクティ、こういったモノの修理やメンテナンスは数をこなしております。早くコンテナ船のラボに持ち込んで修復を試みましょう」
泣きじゃくる私をルキァが抱え、アクティが白いアンドロイドをストレッチャーに乗せていると、ドッ、ドッ、ドッ、ドッと地面を鳴らす音が聞こえた。青色と黄色と緑色のブタドックリがネペンドンを追っ払って戻ってきたのだ。三体のブタドックリは罠場の中央で横一列に整列して止まった。まるで何かを見送るように。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【七夕一人企画の宣伝】
毎年七月七日に個人で勝手に騒いでいる『七夕一人企画』です。
今年で十年の節目を迎えるこの企画、一人で勝手に七夕SF企画なのですが、自分の小説が毎年一つずつ積み重なっていく楽しい企画です。




