理科
理科の時間に、近藤は例によって担任を受け持っているクラスの教室に現れました。
社会科のときに続いて今回の姿も通常着用しているスーツではなく、長い丈の白衣でした。
彼は、以前にもそうしたエピソードがありますが、科学者然としたその格好を、賢そうでかっこいいとやたらに思っているのです。
そして、気取った面持ちで、廊下側から窓側、窓側から廊下側へと、モデルのように行き来しました。
まさか、それでずっといくわけじゃないよね?
生徒たちの願いとも言うべきその心の声は、こっぱみじんとなりました。
教室の右から左、左から右へと、アホ丸出しなおすましフェイスで往復をくり返したのです。
「それが理科教師のパーフェクトな授業かよ!」とツッコまずにはいられませんでしたけれども、教え子たちはどうにか心の中だけにとどめることができました。お疲れさまでした。
授業が終了する時刻を迎え、近藤は生徒たちに言いました。
「よし。じゃあ、次回から二周目に入るぞ!」
えー! 嘘だろ? まだやるのかよ!
彼らは一揆を起こそうか本気で迷いました。
が——。
あの近藤です。飽きて、素知らぬ顔で自らやめてしまったのでした。
ただしその前に、ホームルームの時間でしたが、このような出来事がありました。
「では、私がPTになった授与式を行うぞ」
「はあ?」
生徒たちは思わずすっとんきょうな声を出してしまいました。
近藤は構わず続けました。
「職員会議で、全校による集会のときにやってほしいと申しでたのだが、あえなく却下されてしまったんだ。しかし、狭い空間のぶん、みんなは派手に私を祝福できるぞ。おめでとう!」
……。
生徒たちが呆れすぎて言葉を失ったなか、近藤は表彰する側とされる側の一人二役をやったうえ、なぜなのかそこで受け取ったチャンピオンベルトを腰に巻き、タオルを首にかけ、両手をグーの状態で上げて、プロレスラーが勝利したような態度で教室を後にしていったのでした。
近藤が去った教室で、生徒の一人がしゃべりました。
「教室にカギをつけて、あの人が入ってこれないようにしよう」
他のコたちは賛同し、もう少しで実行に移すところまでいきかけてしまったのでした。
続きを読みたい方は、「おかしなおかしな教師近藤が何やらとても悩んでいるご様子です」をご覧ください。




