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おかしなおかしな教師近藤のPTへの道  作者: 柿井優嬉


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2/2

美術

 とある中学校の、とあるクラスで、次の授業は美術なので、生徒たちは美術室に移動しました。

「え?」

 一人の生徒が「またかよ」といった具合に声を発し、他のコたちもうんざりといった表情を浮かべました。

「どうしたんですか? 近藤先生」

 そう、彼らの担任教師は近藤なのです。しかし、なぜ美術室に彼がいるのかはわからず、問いかけたのでした。

「今日の授業は私が行うのだよ」

「ええ?」

 生徒たちはげんなりといった態度になりました。

 近藤の担当教科は謎ということになっています。この流れだと美術ではなかったのが確定してしまいますが、彼は面倒なのでそこは気にしないことにしました。

 そして、授業開始のチャイムが鳴りました。

 すると近藤は、生徒たちに言いました。

「本日行うのはデッサンだ」

 その言葉に続いて指示を受けて、子どもたちは画用紙を手に、中央に置かれた台を囲みました。

 台に乗った近藤は、当たり前のように描かれるモデルをやる気が満々で、それは生徒たちは予測していたのでなんとも思いませんでしたけれども、なぜか彼が手に中身が入ったどんぶりを持っているのは見過ごせませんでした。

「何ですか? 先生、それは」

 その問いに、近藤はそこでもやはり当たり前のような顔で返事をしました。

「何って、力うどんだよ」

 いやいや、百歩譲って食事する姿を描けというのは受け入れるとしても、マイナーと言っていいメニューである力うどんまで当然であるように振る舞われるのは、生徒たちは納得がいきませんでした。

「さあ、描くんだ!」

 近藤は勇ましく呼びかけて、力うどんの餅をくわえた状態で体を固定させました。

「……」

 生徒たちは迷いました。質問など馬鹿らしい、とはいえ、このままズルズル彼の言いなりを続けていいものか、と。

 そこで、一人の男子が訊いたのです。

「どうして力うどんなんですか?」

 ずっと当然のような振る舞いだったのですから、力うどんに対して問いただすのは好ましくないのかと思いきや、近藤はこう返しました。

「実に良い質問だ!」

 そして語りだしました。

「気づいてしまったのだよ。私もいい歳。正月にお年寄りが餅をのどに詰まらせたというニュースを目にするが、自分はあとどれくらい餅を食うことができるのだろうか? と。ゆえに、味わえるチャンスがあるときは逃すまい、なかでも、力うどんというネーミングも最高にイカしたこいつを食べているところを私の愛する教え子たちにぜひ見てほしい、いや、画に描いて一生大事にしてほしい、とな」

 えー、なに、じゃあ、描くだけじゃなく、一生その画を捨てずに持っていなきゃならないの? ふざけんなよ、と生徒たちは思いましたけれども、真面目なコばかりなので怒りだすような事態にはなりませんでした。

 そうして、近藤が力うどんの餅を今まさに胃に入れるので口にしたシーンの画を、彼らは黙々とデッサンし、終了時刻を迎えると、近藤はそれはそれは満足そうに美術室を後にしていったのでした。


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