時点にも注意
時点を逆に戻す書き方は、読みにくいです。
文学賞を狙う小説において、この読みにくさは致命的になります。
物語を読んでいる読者は、常に「今、どこにいるのか」を無意識に把握しながら読み進めています。
現在の場面が積み重なり、その延長として次の出来事を待っているのです。
その流れが一度でも切断されると、読解の負荷が一気に上がります。
時点を戻す構成は、この把握を何度もやり直させます。
「これはいつの話なのか」「今の場面とどうつながるのか」を、何度も確認させられます。
物語そのものではなく、時間関係の整理に意識を取られるため、没入が妨げられます。
読者は足踏みを強いられ、読む速度が落ちます。
文学賞の選考では、多くの作品が短時間で読まれます。
その中で「立ち止まって考えさせる構成」は、不利に働きます。
文学賞を狙うなら、読者が迷わず前に進める構成を選ぶべきです。
時点を戻す書き方は、その前進を妨げる以上、避けたほうがよいでしょう。
ある元作家はネットの代表作に、別人の話を同じ日の朝まで時点を戻していますが、これほどひどい読書妨害はないと言えましょう。
それも何らかの理由があるならまだしも、ごく普通の高校生の朝の話です。
このような見込みのないものに言っても無駄でしょうが、視点と時点が同時に進行するような作品が理想的です。
つまり視点が変わっても、時間は経過するように書くべきです。




