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読者を騙してはいけない

小説を書く際、読者の先を読ませない意外性や、予想外の展開は確かに重要です。


読者の興味を引き、ページをめくらせる力になります。


しかし、意外性と読者を騙すことは、明確に区別しなければなりません。


ある電子書籍作品では、物語の視点がある男性に設定されているにもかかわらず、女性の依頼者を「依頼者」「希望者」とだけ表記し、あえて読者に性別を知らせません。


その後、明確な区切りなく、占い師の視点に切り替え、「姿を現したのは女性客だった」と説明します。


この手法では、読者は故意に誤解させられ、情報を隠されていたことになります。


確かに短期的には意外性を生むかもしれませんが、文学的な評価や文学賞を狙う作品としては好ましくありません。


なぜなら、読者を欺く行為は、物語の信頼性を損ない、文章の誠実さに疑問を持たせるからです。


文学賞において評価される作品は、意外性を持たせながらも、物語としての筋の整合性や登場人物の心理の一貫性を重んじます。


読者は、キャラクターの行動や選択を理解し、共感できることで物語に没入します。


それを裏切るような「故意の隠蔽」は、意外性ではなく混乱を生むだけです。


では、どうすれば読者の興味を損なわずに意外性を演出できるのでしょうか。


答えは、情報の提示の仕方を工夫することです。


登場人物の行動や視点を丁寧に描写し、読者に推理の余地を残すことで、最後に自然に驚きを感じさせることができます。


重要なのは、驚きが「読者の予測の裏切り」によるものであり、「情報隠蔽」による欺きではないという点です。


文学賞狙いの作品を書く場合、読者を騙さず、しかし先の展開を予想させず、登場人物の心理と行動の自然な連鎖によって意外性を構築する。


このバランスが極めて重要です。


読者が物語を信じ、登場人物を理解した上で驚く──その瞬間こそ、文学としての価値が生まれます。


読者を欺くことは、一時的な興味は引けるかもしれません。


しかし、文学賞や批評的評価を意識するなら、誠実で論理的な物語運びこそが最も強力な手段です。


意外性は欺きではなく、物語の構造と心理描写によって生まれる自然な驚きであることを忘れてはいけません。


また「真っ暗だったのに、実は真っ暗ではなかった」という書き方もよくありません。


読者は読む気を一気になくします。


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