読者を騙してはいけない
小説を書く際、読者の先を読ませない意外性や、予想外の展開は確かに重要です。
読者の興味を引き、ページをめくらせる力になります。
しかし、意外性と読者を騙すことは、明確に区別しなければなりません。
ある作品では、物語の視点がある男性に設定されているにもかかわらず、女性の依頼者を「依頼者」「希望者」とだけ表記し、あえて読者に性別を知らせません。
その後、明確な区切りなく、占い師の視点に切り替え、「姿を現したのは女性客だった」と説明します。
これはいけません。
この場合は初めから女性と書くべきです。
ある元作家のネット小説では、犯人が女であることを次にもっていくために、その前の逮捕の場面が女装した探偵の男と影としか書いていないので、その影が何のことかわからずに、状況描写が不十分になっています。
よく読むと、その影が犯人の女であることがわかるのですが、わたしは何度も読み返してやっとわかりました。
何度も読まなければわからないように犯人のことを、ただ「影」としか書かないのは非常に悪い例です。
評価人数がわずか1人なのは、その辺りで筋がわからなくなり、読むのをやめたからでしょう。
この手法では、読者は故意に誤解させられ、情報を隠されていたことになります。
確かに短期的には意外性を生むかもしれませんが、文学的な評価や文学賞を狙う作品としては好ましくありません。
ある作家の小説には、主人公の女子学生、不審者、近所の女子小学生、少年の4人が出てくる場面があります。
その少年が不審者を追い返すのですが、その少年も近所の高校生であり、主人公がよく知っている事があとで書いてあります。
読者は主人公の視点で読んでいるのですから、このような情報の後出しは、何の意味もなく、ただの手抜きだと思います。




