「猫の額ほどの小さなベランダ」は、一次で落ちることがある
小説を書く上で、言葉の正確な使い方は読者の信頼を得るために極めて重要です。
特に慣用句や比喩表現は、軽い気持ちで重ねてしまうと、作品全体の信用を損ねることがあります。
例えば、「猫の額ほどの小さなベランダ」という表現。
初めて目にしたとき、読者は微笑むかもしれません。
しかし、よく考えてみてください。
「猫の額ほど」という比喩は、すでに「極めて小さい」という意味を持っています。
それに「小さなベランダ」と続けると、二重の小ささを表現する冗長さだけでは済まされません。
さらに問題なのは、比喩が文字通りに読めてしまう点です。
「猫の額ほど」と書かれると、読者の頭の中でベランダは本当に猫の額と同じ大きさと想像されます。
小説は想像力を喚起する芸術ですが、比喩の効力が現実と混同されてしまうと、読者の集中は言葉の意味を解釈することに奪われ、物語の世界に入り込めなくなります。
言葉の誤用は、文章の印象を軽くするどころか、新人賞一次選考すら通らないレベルの致命的なミスになり得ます。
「馬から落馬」「川の水が濡れている」といった表現と同じです。
文章の基礎を理解していないと見なされ、評価者に「言葉を軽んじている」と思われかねません。
ではどうすればよいか。
慣用句や比喩を用いるときは、まず一度立ち止まって考えることです。
比喩がすでに意味を持っている場合は、形容詞を加えて重複させない。
読者に文字通り解釈されるリスクがないか確認する。
文章全体のリズムや世界観と調和しているか考える。
結論として、「猫の額ほどの庭」だけで十分です。
余計な形容を付けず、比喩の効力を生かすこと。
それができれば、文章は自然で読者に伝わりやすくなります。
小説を書く者にとって、言葉の正確さは一次選考を通る最低条件であることを忘れてはいけません。




