視点混乱
物語を書くうえで重要なのが視点です。
視点とは、読者が物語を「誰の目で、誰の立場で見るか」を決めるものです。
この視点が途中で無秩序に変わると、読者は混乱し、物語の理解や没入感が損なわれます。
これを視点混乱と呼びます。
例えば、同じ章で主人公の心の内側を描いていたと思ったら、突然別の登場人物の考えや感情に切り替わると、読者は「誰の物語を追っているのか」と迷ってしまいます。
特に、重要な場面で視点が変わると、緊張感や感情移入が途切れ、物語の印象を大きく損ないます。
視点混乱を避けるためには、いくつかの基本ルールがあります。
1.章や段落ごとに視点を固定する
一つの章では一人の登場人物の視点に徹することで、読者は迷わず物語に入り込めます。
2.視点が変わる場合は明示的に区切る
番号を振ったり、章タイトルや段落記号で区切ると、読者は自然に視点の移動を理解できます。
3.無理に視点を切り替えない
複数視点は便利ですが、乱用すると混乱を招きます。
読者が追える範囲で計画的に切り替えましょう。
視点混乱は、設定破綻と同じく物語の読みやすさを大きく左右する問題です。
一度混乱すると、どれだけ文章が上手でも読者は置いてけぼりになってしまいます。
逆に、視点の移動が整理されているだけで、同じ内容でも物語は格段に読みやすく、面白くなります。
ある作家は始めに同級生を4人出して、4人の視点を同時に使っています。
視点混乱がひどすぎると、主人公不在の失敗小説になります。
これでは文学賞の2次で必ず落ちるので、ここが一番大事な点です。
ある電子書籍作家上がりの人は、最初に狼男の話を書いているのに、そのあと高校生の話を「俺」を主語にして書いている。
こういう書き方は絶対にしてはいけません。
その「俺」が狼男だと誤解されます。
もし本当に「俺」が狼男なら、それも許容範囲ですが、全くの別人なら、そこでもう読者は混乱します。
わたしが読んだ限りでは、勝目梓(芥川賞と直木賞の両方の候補になり、生涯に350冊出した)が、3人称複視点の名人と言えるでしょう。
お勧めの作品は「処刑」「悪女が目を覚ました」。
これを読むと、視点が移動しても、主人公が一貫していることがよくわかります。
ハードバイオレンスなので、松本清張や司馬遼太郎ほど人気がなく、お買い得でもあります。




