景色の描写は心理描写も含む
景色の描写は、単なる背景説明ではない。
小説において景色の描写は、心理描写の一つである。
物語の中で描かれる景色は、客観的な風景ではない。
同じ場所であっても、人物の心理状態によって見え方は変わる。
明るく感じられるか、圧迫感を覚えるか、無関心に流されるかは、その時点の心の在り方によって決まる。
つまり、景色をどう描くかは、「人物が今、どういう状態にあるか」を示している。
景色の描写は、心情を直接説明する代わりに、それを外側に投影する手段である。
意味のない景色描写は存在しない。
物語の進行や人物の心理と結びつかない景色は、単なる情報でしかなく、読者の意識を散らす。
景色を書くということは、心を書くということだ。
何を選び、何を切り取り、何を省くか、そのすべてが心理の反映になる。
景色の描写を入れるなら、「この景色は誰の心を映しているのか」を自覚しておく必要がある。
それができていない描写は、背景説明で終わる。
例えば、芸能事務所の養成所の壁の色。
単にクリーム色では芸がない。
ここはデビューの直前の場面なのだから、「いつもは色あせているクリーム色の壁が今日はなぜか日を浴びて輝いているような気がした」と伏線にすると面白いと思う。
なおこの作品では、アイドルと歌手を区別しているが、オペラ歌手は例外として、両方やるのが普通である。




