第3話 魔法使いの挑戦(後)-13
「わっ私…短い間ですけど、今までこんなふうにがんばってなにかを成し遂げようとしたことなくって……、だから、その――」
パララさんの言葉を聞きながら、私は考えた。わずか3日間ではあったがパララさんは面接の練習を必死に取り組んでいた。自分から苦手を克服しようと酒場の仕事を手伝ってくれたりもした。
私はてっきり、魔法学校などのこれまでの生活でも同じように努力を重ねてきた人なのだとばかり思っていた。
「が…がんばって…けど結果ダメでこんなに『悔しい』って思えたの初めてなんです。今まではなんていうか、ダメでもそんなもんかって諦めてて……、悔しいと思えなかったんです」
なるほど、パララさんは恐らく魔法に関しては凄まじい才能の持ち主なのだ。だからこそ努力を重ねなくてもそれなりの結果を残せていたのだろう。
ただ……、だからこそ、がんばっても結果を残せなかった時の「悔しさ」を経験したことがなかったのかもしれない。
「くっ、悔しくって涙があふれて止まらないんですけど……、もう一度がんばろうって今は思えるんです。こんなふうに思えたのは初めてで……、皆さんのおかげなんです!」
ラナさんとブルードさんはお互いに目を合わせて、その後笑って2人でパララさんの頭に手を置いた。
「そうですね。またこの次がんばりましょう!」
「この間のみたいなのでよければまた飯つくってやるから、がんばろうぜ!」
「あっありがとうございます! ブルードさんのお料理とてもおいしかったです!」
ここに来た時のパララさんの笑顔を、私は無理してつくったものだと思っていた。しかし、心が満たされたゆえの本心の笑顔だったのだ。今、話している彼女を見ているとそう思える。
「ゆっユタタさん! 本当にありがとうございました! こっ…今回はダメでしたが、必ずお仕事をみつけてお礼をします!」
「いいえ。今回良い結果に導けなかったのは私にも責任があります。ですが、パララさんがこうして前向きに捉えてくれたのは本当にうれしく思います」
「わっ私、今の気持ちが冷めないうちに早速次のお仕事を探してみようと思います! きちんと魔法ギルドに所属できるようにいくつかまわってみようと思っているんです!」
今回の面接試験の結果は実らなかった。だが、パララさんの中で壁をひとつ越えたような気がする。曇りのない表情を見てそう思った。これならきっと近いうちに定職につくのも叶うだろう。
ラナさんがパララさんの手を握ったかと思うとなにかを手渡していた。
「これは少ないですけど……、先日働いてくれた時のお給金です」
「そっそんな…あ、えっと…ありがとうございます!」
一瞬、受け取るのを拒むような素振りを見せたが、なにかを思い出したような顔をした後、素直にそれを手にしていた。
「ボクも今回のようなギルドの求人がまたないか探してみますね」
パララさん、ラナさん、ブルードさんはそれぞれに言葉を掛け合っていた。気付けば彼女の涙は止まっている。
今回、結果だけ見れば依頼を果たせなかったのかもしれない。客観的に見ればそうだ。しかし、依頼主のパララさんも、私自身も心は満たされている。これもひとつの成果に違いない。私は満足した笑みをパララさんに向けた。彼女も満面の笑みを返してくれた。




