第3話 魔法使いの挑戦(後)-12
パララさんの面接の日から3日経った。
面接当日にひょっとしたら顔を出すかもしれないと思っていたが、その日、彼女が酒場に顔を見せることはなかった。
面接の練習をしている期間はいつもより賑やかだったので、少しの寂しさを感じる。ラナさんもブルードさんも、「面接どうだったかな?」を口癖のように言っていた。
いつものように昼の開店時間が終わり、扉に「close」の札を出した。ブルードさんは仕込みを行い、ラナさんは新しい仕事の依頼書に目を通している。私もなにか手伝おうと思った時に扉の外に人影を見つけた。
「パララさん!」
私は扉に向かって声を思わず声を出していた。外にいる彼女に聞こえたかはわからないが、ラナさんとブルードさんには聞こえたようだ。2人はすぐに私のところへやってきた。私は酒場の扉を開けてパララさんの顔を見た。笑顔の彼女がそこには立っている。
「あっあの、遅くなってすみません! 面接の結果が出ましたので……その、皆さんにご報告にきました」
パララさんは笑顔でそう言った。
「中で聞きましょう。さあ入って下さい」
ラナさんがいつの間にかパララさんの後ろにまわっていた。背中を押して店の中へ招き入れる。私は改めて「close」の札を確認したあと、ゆっくりと扉を閉めた。
ラナさんに背を押されていたパララさんだったかがくるりと振り返り私たちの方を向いた。
いつも戸惑っている表情を見せていた彼女だったが、今見せてくれたのはこれまで見たこともないような明るい表情だった。
「面接の結果が届きまして……、その――」
私を含めここにいる皆が息を飲んだ。
「ふっ……ふ、不合格でした!!」
一瞬時が止まったように私たちは固まった。次の言葉が思いつかず、目が泳いでしまう。パララさんの表情を見て、きっと合格、これで魔法ギルドに所属できるのか、次の試験があるのかはわからないが……、とりあえず良い結果が聞けるものだと思っていた。ゆえに面食らったしまったのだ。
パララさんは立ったまま笑顔でいたが、やがてその表情は崩れていった。そして目に涙が溢れているのが見てとれた。その涙がこぼれようとする瞬間、ラナさんが彼女を抱きしめていた。
「ごっごめんなさい、あんなに皆さんに協力してもらったのに……私、こんな結果で……、うっぅぅ…」
彼女はラナさんの胸に顔をうずめながら嗚咽をもらしていた。彼女の頭をラナさんが優しく撫でている。
「いいえ。パララさんはよくがんばりました。今回はたまたま縁が無かっただけですよ?」
「そうだな。こんだけがんばったんだ。今は休んでまた次を探したらいいんだよ」
ラナさんとブルードさんが声をかける。私はなかなかうまい言葉を見つけられなかった。彼女の涙が私にはとても辛く見えた。しかし、次の瞬間、パララさんは顔をあげると私の方を見てこう言った。
「なっ泣いてしまってごめんなさい……。私、今とても悔しいんです……。ですが、とてもうれしくもあるんです」
私はその言葉の真意をはかりかねた。悔しいのはわかる、だがうれしいとはなんだろうか?




