第3話 魔法使いの挑戦(後)-2
「……ローゼンバーグ卿?」
「私とはすれ違いでしたが、セントラル魔法科学研究院を飛び級で最年少、さらに首席卒業した方です!」
「それは興味深い人ですね」
「はい! ローゼンバーグ卿は私が通っている頃のセントラルではみんなの憧れでした。飛び級で卒業してますので年齢は私とそれほど変わらないんです!」
「なるほど、とても若い方なんですね」
「優秀な魔法使いを多数輩出しているセントラルでも、ローゼンバーグ卿は伝説の存在となっています。特に精霊とのコンタクトに関して桁違いの才覚があったという噂です!」
「精霊とのコンタクト……、と言いますと?」
「私たちが魔法を使う時は精霊とコンタクトをとります。呪文の詠唱もそれの一種なんです。ですが、そのコンタクトに要する時間や工程は人によって差が出るんです」
「つまり、同じ魔法でも長い呪文を言わないとできない人と一言二言でできてしまう人がいる、というような感じでしょうか?」
「そういうことです! ――で、ローゼンバーグ卿はそこが他の魔法使いと全然違ったそうです。私も見たわけではありませんが、学内の噂では中級魔法くらいでしたら詠唱過程をほぼすっ飛ばして使えたと聞いています!」
「詠唱過程をすっ飛ばす、つまりはなにも予備動作なしにいきなり魔法を放てる、という意味ですか?」
「そうなんです! そんなことができる人は世界中の魔法使いを探しても数人程度しかいないと聞いています!」
「世界中探しても……ですか、それはすごい」
「そうです、すごいんです! 私と近い年齢でそんなすごい人がいるなんて憧れます! セントラル卒業後、どうされているかは不明のようで謎に満ちているのですが、一度でいいからお会いしたいと思っています!」
「パララさん……、それです!」
「…え?」
「あなたは今、憧れのローゼンバーグという方の話をする時とてもイキイキとしていました。その感じで話せばいいのです」
ローゼンバーグ卿という人の話になると明らかに彼女の雰囲気が変わった。テンションが上がり、まだまだ言い足りないというように次々と言葉が出てくる。なにより彼女が楽しそうに話をしている。これが必要な要素だ。
しかし、私が今の感じで自分について話せないかというと途端に口ごもってしまった。
「そっそそ…そんな、むずかしいです……」
「今、パララさんは私に憧れの人について紹介してくれました。自分が好きなもの、気に入っているものは誰かに伝えたくなるものです。パララさんは自分の長所に自信をもって人に紹介すればいいんです」
こうは言ったが、頭で理解できたとしてもすぐにできるわけではない。「自信をもつ」が恐らくできないのだ。これを変えるために必要なのは「成功体験」である。
なにか彼女の魔法の力によって救われるような出来事があれば少し変われるかもしれない。話すこと自体はできるのだ。それがわかっただけでも大きな前進ではある。
私がパララさんと話している間にラナさんは、再び彼女によさそうな仕事の依頼を探していた。そして目を輝かせて私たちのところへやってきた。
「パララさん、数日先ですがこれを受けてみませんか?」
ラナさんは1枚の紙を差し出した。私が知っている依頼書とは様式が異なっている。
「私のところにこういうのが来るのは珍しいのですが、受けてみる価値はあると思うんです」
ラナさんから書類を受け取ったパララさんは目を見開いていた。
「ちっちち、『知恵の結晶』の採用試験ですか!?」
「ええ、募集要件は厳しいですが、パララさんのセントラルでの成績なら受ける資格はありますよ?」




