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幸福の花は静かに笑う  作者: 武尾 さぬき
第1章 異世界営業
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第2話 大剣の価値(前)-8

 この重たい大剣をトレーニング器具として売る。武器として売るよりは可能性があるような気がした。問題は価格設定だ。ハンスさんの希望を鑑みるとかなりの高額で売る必要がある。


 しかし、トレーニング器具にそれほど高額の投資をする人が果たしてどれほどいるだろうか。




 試しにブルードさんに筋トレの器材が売っていたらどれくらいの値段で買うか聞いてみた。よほどいいものなら数千ゴールドは出してもいい、と筋肉を愛する人らしい回答が返ってくる。


 つまり、ブルードさんレベルで数千までなのだ。希望の価格は万を超えている。方向性はこれでいいのかもしれないが、まだこの剣を売るには条件が足りない。





 この日、ハンスさんの武器屋を訪ねて例の大剣の使い道について話した。すると、ハンスさんから意外な話が返ってきた。




「そもそも武器じゃないってことか……。うーん、なるほどなぁ……。実はスガさんに話そうと思ってたことがあってな?」




「この大剣についてですか?」




「あぁ、実は近々規模の大きい競りがある予定なんだ。そこにあの大剣を出品しようかと考えててな」




「武器として出品するのですか?」




「当然そのつもりでいたよ。まさかあの形で武器ではないとは思わんかったからなぁ」




 武器として出品し、仮に高額の値がついたとしても、手に入れた人は間違いなく扱いに困るだろう。


 私がなにかを売る上で、買った人を不幸にすることだけは避けたいと思っていた。それをもっとも大切にしている。




「遺跡の発掘品で一度武器屋が買い取って……、もう一度競りに出てくる商品は正直値がつきにくい。普通に売れない理由があるんだろう、って誰もが思うからな。それでもこのまま不良在庫にするよりはいいと思ってな」




「それなら『武器』と言わずに、『鍛える道具』として競りに出しましょう」




 その時、私の脳裏にある考えが浮かんだ。




「いやぁ……、さすがに鍛える道具では値がつかんだろう? 買いとった額ほどではなくても、ある程度は高値がついてほしいからな」




「武器として売ってしまったら買いとった人がハンスさんと同じように頭を抱えることになります」




「それはそうだが……、競りでそんな商品いくらでもあるからなぁ」




「わかっていて売りに出すのと知らずに出すのは全然違います。それに――」




「それに?」




「本来の用途で競りに出すのであれば、条件次第では値がつくと思います」




 私はハンスさんに、競りについていくつかの点を確認した。そして、想定した条件がほぼ満たされるであろうことが判明する。




「その競り、私に任せてもらえませんか? 期待に応える額で、買い取った人を不幸にせず売ってみせましょう」

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