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故郷を追われた元王女は宇宙艦隊の夢を見るか?  作者: 伊藤 詩雪
episode 1 銀河の汚点がまた一ページ
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上陸部隊は海賊?

 この最新鋭の戦艦スリップの艦橋には場違いな通信が響き渡っていた。

 それは間違いなく僚艦から発信された音声のはずなのだが、とてもそうとは思えない……


「野郎どもぉぉぉ! 上陸の準備はできてんのかぁぁぁ!」

「「「「「おぉぉぉう!」」」」」

「抜かるんじゃねーぞぉぉぉ!」

「「「「「おぉぉぉう!」」」」」


 装甲車に分乗した上陸兵たちが散っていく。


「あれ、本当にアシュリーズのクルーなんですか?」

「残念ながら……。あれ二番艦の連中なんだけど、宇宙海賊カブレでね」

「あ〜」


 地上を走り抜けている奇妙奇天烈な上陸部隊。ドン引きである。

 なんだろう、この残念な感じ。


「あんなんで、大丈夫なんですか?」

「平気平気、少なくとも一番艦にはあんな人いないから」


 私が聞きたかったのはそう言うことじゃない!

 あんな人たちが外で暴れてたら、ウチの艦隊のカブが下がんないか、っこと。



 まあ、いいや。

 オーリンズさんが大丈夫というなら、問題ないんだろう。


 それより上陸部隊がどうなっているか確認しないと。

 どうやら市街地に向かって進軍中らしい。


 それにしても……

 ドクロマークの海賊帽にジャラジャラしたアクセサリー。

 反り返った大ぶりの刀に眼帯、そして鉤爪。

 かつて地球の海にいたという海賊そのもの。


 ガガガガガガ

 ドーーーン


 政府軍のバリケードを正面突破。

 あっ、蹂躙してる。あんなカッコでもやっぱ強いんだ。



 これなら、少し暇があるな。

 艦橋にいる私の数少ない友達に聞いてみよう。


「イシュタル。どうしておとぎ話に出てくる海賊みたいな格好してるの?」

「ああ、それねー。誰かが大昔のビデオをジルに見せたらしいの。それが流行ったらしくて、キャシーにその中に出てきた海賊のカッコがしたいって頼んだらしいわ」


 キャシーというのはイシュタルの上司。二人ともとっても偉い人なんだけど説明は後で。

 サブリナ艦長が話しかけてきたんだもの。


「今の話、本当?」

「ええ」


 やばいかも。

 ジルの発案だとは知らなかったらしい。


「あれ、安くはないわよねぇ」

「えっ?……えぇ、そう……かもしれないです」


 思わず敬語で返す逃げ越しのイシュタル。

 技術部副部長の威厳ゼロ。


「イシュタル。後でキャシーとジルには一番艦にくるよう言っておいて」

「は、はい。でも……ちゃんと伝えてもあの二人聞いてない……って言うかも」


 それを聞くと、サブリナは通信ウィジットを立ち上げた。

 ウィンドウにはすでに全艦最上位指令の使用許可が出ている。

 チェックを入れて、通信範囲にallを指定してマイクを確認する。


 全艦最上位指令は全艦艇全部署に一斉通達をする場合に使用する最上位指令だ。

 要するにサブリナ艦長は、全乗組員に聞こえるように『公開処刑』をするつもりなのだ。


「全艦最上位指令。二番艦艦長ジル・メイフォン、技術部門長キャサリン・マックスウェル、明朝8時、スリップ第一艦橋に出頭されたし。繰り返す。

 全艦最上位指令。二番艦艦長ジル・メイフォン、技術部門長キャサリン・マックスウェル、明朝8時、スリップ第一艦橋に出頭されたし。以上」


 きっと、すごい勢いで怒られるんだろうなあ。

 ジル艦長、キャサリン教授、御愁傷様。


 まあ、仕方ないよね。

 あの海賊装備、金かかってそうだったもん。



 今日は本当に意外なことだらけ。

 この艦隊に来てもう四ヶ月も経ったのに。


 まあ、この一番艦第一艦橋に配備にされたのはつい最近だから仕方がない。

 最初は避難民とし過ごしてたから。



 私がこの艦隊について知っていることと言えば、三艦の超級宇宙戦艦を主力としていること。

 艦長が全て女性で、艦名が女性下着の名前になっていること。


 一番艦スリップ、本艦隊の旗艦、主砲の威力は三艦の中で一番。

 艦長は言わずと知れた私の憧れのサブリナ・ベルトーネ様。

 年齢は26歳、身長165cm。金髪のウェーブのかかった髪、ヘーゼルの瞳、鼻筋も通っていて、艶のある唇も美しい。


 二番艦キャミソール、特殊装備を積むことが多く、キャシー教授が妙な装備を作る場合、大抵この船に搭載する。

 艦長はジル・メイフォン。

 年齢は24歳。身長は170cmで、体型はモデル並みで本当に綺麗なんだけど、性格と艦隊指揮にはちょっと難ありの残念美人。


 まだ紹介してない三番艦ペチコート、スピード特化艦、特殊任務もこなすが装備は常識的。

 艦長はケリーちゃん……あっ、ケリー・エアハート艦長。

 年齢はなんと16歳。身長は156cm。とっても可愛い私より二つ年下の女の子。うん、艦隊一の美少女かも。


 そして忘れていけない人がもう一人。


 技術部門長キャサリン・マックスウェル教授。

 年齢は艦長と同じ26歳で、この艦隊をサブリナ艦長と二人で立ち上げたらしい。

 この艦隊の設計および製造主任というだけで、どれだけすごい人か……


 けれど、いろいろと問題があるらしく、おかしなエピソードに事欠かない。


 大型艦に戦闘機並みの高機動を可能にしたはいいけど、1時間で1年分の燃費の悪さでとても使えなかったとか。

 一発撃つだけで建物ごと吹っ飛ばせるけど、発熱がすごくて二発目が撃てないハンドガンとか。


 性能は驚異的だけど、なんか残念なものを作っちゃう。

 興が乗って研究に没頭すると人の言うことを聞かない。


 人呼んで「キャシー・ザ・マッド・アームス」。

 天才の名につられて船や装備の依頼をして破産した顧客は数知れず。あらら。


 サブリナ艦長がこの艦隊の技術顧問に誘わなかったら、路頭に迷っていたかも知れないとか。



 あっ、通信が入った。

 スイッチに手を伸ばす私をサブリナ艦長が制する。

 自分で応対するようだ。


「こちら第一戦艦艦橋」

「地上部隊は政府官邸、国会議事堂、軍務局関係各部門、主要放送局、警察及び各インフラ中枢の占拠に成功しました」


 あっ! この人たち、ジル艦長に話してた時と口調が違う。

 あのノリじゃあ、流石にサブリナ艦長に怒られるもんね。


「ご苦労様、いい仕事だわ。首謀者と小惑星帯に関する鉱物関係の資料を探して」

「了解」


 やっぱり優秀なんだ……。

 上陸してから二時間も経たず、この星の政府中枢の制圧が完了した。


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