恋に燃えぬ花
十二ページ。炎上花。
空気中の魔力と呼ばれるチカラを活用して、年中燃え続ける花がある。
和名を『炎上花』と名付けられたその花は、花など食い荒らされ、人間では到底及ぶことの出来ない『魔族』という種族が跋扈する世界に咲いている。
長い長い時間をかけてそのように進化したのではなく、ある偉大な魔族が自身の城の周りに咲き誇る美しい花々を見て『もっと畏怖の感情を掻き立てる花を』と創った花だそうだ。
もっとも、一度咲いた炎上花はその空間に漂う魔力を吸い尽くし燃やし続ける為、魔力を糧に生きる多数の魔族が嫌がって近寄らない『人も魔族も忌み嫌う花』として有名になってしまったが。
「花言葉は『嫌われ者』……この花ってどんな風に燃えてるの?」
「綺麗なものだよ。こぶし大の花が燃え上がっててね、花弁は熱に強くて、正確には花弁の周りの空間が燃えてるんだ。魔力のない空間に持っていくと黄色の可愛らしい花になる」
そういって少し遠くにあった花瓶を取ってきた彼女の手には、一輪の黄色の花。
「ほら」
何処からかとりだしたライターで花弁に火を近付けるものの、燃えることはない。
本物なのだ。
「あまり持ち帰ってくることは無いんだけどね。こっちの世界だとただ燃えない黄色の花だし、『嫌われ者』なんて可哀想じゃない」
彼女は花瓶を大事そうに持っている。
その姿は孫を愛でる老婆そのものだ。
「『決して実らぬ恋』」
「ん、どうしたんだい?」
「私ならこうかなと思って」
「いいじゃないか、素敵だねえ」
彼女の姿を見ていると、とても『嫌われ者』なんて思えなかったのだ。
ただそれだけの話。
花火という単語を考えた人は凄いですよね。火は花のように見える、花は火のように見える。それを綺麗と感じる心が、とても素敵だなと常日頃思っています。花火がみたい……




