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先生と私の恋愛事情  作者: 羽鳥藍那
高校編 - 後
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 二月に入ると学校は自由登校になり授業は無く、三月一日の卒業式までは登校する必要がなくなってしまいます。

 新しい家は圭祐さんが生活しているくらいだから、電話や電気などのライフラインは通っているけど、日中はヒマになってしまうので土日と水曜日にしか行っていません。それだって、食事を作り置いたり揃そろって夕食を取ったりするくらいで、翌日の仕事に支障が出ない様に配慮しています。

 なので、好きな時間に登校しては自習だったり筋トレをしたりして、部活で後輩相手に汗を流す日が続いているのです。


 そんなある日、廊下で校長先生からすれ違い側に声を掛けられました。

「橘さん。少しお話をしたいのですが、校長室に来れますか」

 否は無いので「はい」と返事をして付いて行きます。

 校長室に入ると来客用のソファーを勧められて、応接セットに向き合うように座り、間をおかずに話し始められました。

「井口先生とは、いつ頃から付き合っているのですか?」

 単刀直入のその問いに、迷うことなく端的に答えていく。

「告白したのは二度、高校受験前と昨年の四月初めです。一度目は断られましたが、私が成人するまでは彼女は作らずにいるから、と諭されました。二度目は一線を超えないからとお願いして、やっと受け入れてもらいました」

「無理強いされた訳では、ないのですね」

「むしろ、無理強いを敷いているのは私の方です。いろいろと我慢させていますから」

「ご両親は何と」

「うちも彼の方も、了承してくれています。卒業して直ぐに入籍する予定です」

「ならば、幸せになりなさいね」


 退室を促されたので、一つ質問をしてみます。

「私たちの事や相羽さん達の入籍を認められたことが、不思議でならなのですが」

「私が学生の頃は、今ほど情報が溢れていませんでしたが、それでも学生同士で妊娠して退学処分を受けた子を何人も知っています。教師から迫られて抵抗できずに傷付いた子の話も聞きました。ですから教育者として正すものは正し、抑圧するだけでなく当人たちの気持ちを汲んで導く。そう在りたいと思っているのですよ。万人に受け入れられる方針ではないかもしれませんがね」

 微笑みながら答えた先生に、この学校で学べて良かったと返して退室しました。

 私たちを信頼したうえで許してくれているのでしょうから、その信頼を裏切らない様にしなければなりません。だからこそ、卒業の日までは自宅から通うのです。

 

 ダンボール箱を買っても良かったけれど、時間も有る事だからとスーツケースを使ったりして衣類を運んでいます。運んだそばからクローゼットに詰め込んで行くと、やはり入りきらない物が出てきて、今使っているローチェストを持っていくことになりました。

 調べてみると家具の直しをしてくれる店があるので、引取りに来てもらって色を塗り替えてもらい、新居へ運び込んでもらう事にしました。汚れていたのもそうですが、色合いがそれだけ浮いてしまうので、周りに合わせる様にしたわけです。

 机と本など重いものは、圭祐さんが軽トラを借りてきて運んでくれました。手伝ってくれた翔真君に感謝です。そして、真理佳ちゃんには謝罪を。


「真理佳ちゃん、ごめんね。休日なのに旦那さんを借りちゃって」

「気にしないで使って。でも先生と同じ台詞だね」

「なにが?」

「『悪いが、旦那を貸してくれ』って私に電話してきたんだよ。もっとも、本人に直接だと断られるのが分っていたんだろうけどね」

「知ってる? 中学に上がって直ぐなんだけど、道着を買いに行くので圭祐さんを頼ったら翔真君が付いてきていて、『僕まで巻き込むな』ってメモを貰った事があるの」

「知ってる、知ってる。『変な噂が立ったら可哀想だから、頼むから来てくれ』って頼まれてたね。『ロリコンの大学生が……』って噂しか立たないよって話してたんだ」

「その頃から好きだったって言ったら引く?」

「別に大学生を好きになったって変じゃないよ」

「うんと、逆……」

「……、ちょっと引くかも」

「やっぱりそうだよね。私だってビックリだったもの。でも、嬉しかったな」

 そんな話をし、お客様第一号としておもてなしする事を約束して電話を切りました。

 素敵な出会いを与えてくれて、圭祐さんを助けてくれて、背中を押してくれた、そんな翔真君にはずっと頭が上がらないでしょう。


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