渡る世間にハイレグなし
ときどきこんな「ふぁいと」が幕間で挟まります。
「伍人衆変化、見参!」
今日も快調。声もしっかりそろってる。しかもちゃんと五人そろってる。
群がる敵を投げ飛ばし、薔薇変化、久々の満足感を味わっていた。と、
「あっ」
桜変化が突然叫んだ。みんな、どきっとしてふり返る。
「タイヘン! もうこんな時間!」
今日の変化はあかねの番だ。薔薇変化、なんだかイヤ~な予感がしてきた。
「アタシ、行かなくちゃ。じゃね」
「ちょ、ちょっと待てよ何だそりゃ」薔薇変化あわてて、走り去ろうとしていた桜変化の袖をつかむ。
「離して。間に合わなくなっちゃう」
「だからなに」
「今日さ、新聞部の先輩に映画に誘われてんの」
「だから」
「行かなきゃ」
「あ、の、なあ」今や味方はおろか、敵の『ものから団』の連中まで、なりゆきをじっと見守っている。
「オマエ、セイギの味方としての自覚、あんの?」
「はぁ?」桜変化、声のトーンをあげた。険悪な雰囲気。
「別に、アタシは好きでこんなコトやってるわけじゃないのよ。元はと言えば、みんなアンタのせいじゃん」
「うう」薔薇変化、言葉につまる。
チーム完成まであと一人と言う時、切羽詰まった薔薇変化は幼馴染みの織部ユキを仲間に入れることになった。だましたも同然。そして、変化改造の瞬間、ことを嗅ぎつけた双子の妹・あかねが場内に乱入、ユキを救おうとしてついでに『変化』に改造されてしまったのだった。
薔薇変化は、この世の終わりが来ようとも、あかねだけはチームに入れるつもりはなかった。
転校してきた時、同じクラスで彼女に再開したことだけでも、彼は、前世での業の深さを思い知った。
水と油、塩素系漂白剤と酸性カビキラーのごとく、昔からあかねとは全く相性が合わなかったのだ。
だが、運命って皮肉。まさか一緒にお仕事することになるなんて。
とりあえず、ここまでは大きな破局もなくなんとかタグを組んでやってはきたのだが、ここにきて、とうとう来るべきものが来てしまった感も。
「4人だけだと、どうなるか知ってて言ってんだろうな」
声にすごみをきかせてみる。でも見上げて言うのは迫力欠ける。
「当たり前じゃない。でも、図体のデカい男4人なら(チビに対する嫌味が薔薇変化の胸に突き刺さる)、あたし一人が抜けたって、どうってことないでしょ」
「それとこれとは……」
「それにさ、別に金になるワケじゃなし」
「わかった!」薔薇変化、大声をあげた。
「映画ってのは、オゴリだなぁ??」
「もち。その後マックでごちそうになるんだから」
桜変化、けろっとした顔で言い放つ。金が絡むと、彼女の右に出る者はいない。彼女の前では、金額の高い物ほど、この世では価値があることになっている。
「だから、さ、どいてちょうだい」
「ずぅぇええったい、ダメだ」
いつになく強い調子の薔薇変化に、桜、少々めんくらった様子だったが、急に彼の背後を指さして
「あ、今日のものから団、すげえハイレグの人がいる!」
「ええっ」敵も味方も、みんな指さす方にぱっと顔を向けた。と、そこに桜変化の会心のアッパーカット、まともにくらって薔薇変化、仰向けにふっ飛ばされる。
「じゃ、ごめんあそばせ~」
身も軽々と走り去る桜変化を、倒れたままの薔薇変化、呆然と見送る。
「な、なんなんだ、あのオンナ~」
だんだん、腹の底から怒りがわいてくる。そこへ若草変化あっさりとコメント。
「ま、バラちゃん。あの方はそーゆーおひとですから、そない怒らんと」
「くー」薔薇変化を助け起こしながら、浅葱変化、手が震えている。おや、コイツも怒っているのかと思いきや、声をころして大笑いの最中だった。
「どいつもこいつも……あんなゴーツクバリのワガママ女を許しておけるのかよ」
「オメエが播いた種だかんな」浅葱変化、まだヒクヒク笑っている。
「おい鬱金変化、何とか言ってやってくれよ、コイツらに」
鬱金変化、ふと思いついたように
「そうだ」
「なに?」ヤツは、ふとした時にすごくいい事言う。薔薇変化、期待に満ちた目で鬱金変化を見やる。
「浅葱変化が、アサちゃんてこのごろ呼ばれてんだろ」うん、一応うなずく薔薇変化。
「で、若草がワカちゃん、桜変化はサっちゃん、ボクがウっちゃんだろ。てーことは」
「てことは?」浅葱変化は先が読めたのか、すでにゲラゲラ笑っている。
「薔薇変化だと、バーちゃんになっちゃうねえ」
とほほほほほ。
すでに、敵はびっしりとまわりを取り巻いている。
もち、ハイレグはおりません。
危うし、伍人衆! またまたマイナス一人! 日本の夜明けは近いぞ。
(続かず)




