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伍人衆変化<ごにんしゅうへんげ>見参!!  作者: 柿ノ木コジロー
敵か味方か、仲間かタコか。
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55/120

地球を大切にね 01

 その戦いは楽勝、のはずだった。


「この世の闇を斬り裂く、破魔の刃受けて……」

 バラ変化が大見得きって光り輝く太刀を振り上げた瞬間、敵が大声で

「待あぁっっった!!」

 をかけた。


 今日の敵は、環境を考えないアンドロイド、正式の名を『環境不適応型ロボット・オゾーンⅢ』。

 手足の指先や、体中のいたる所にフロンスプレーのノズルがくっついていて、何かの拍子にそれが押されるたび、しゅーしゅーと音たててフロンガスが噴き出るようになっている。

 しかも、体全体が巨大タンクとなっており、背中にはフロンガス製造機まで装備。いつ、いかなる時でも好きな時に好きなだけ、ガスを出すことができるのだ。

 始め見た時、バラ

「なんだかなあ……」思わずため息。

「セーギって、何だろな? って思わない? 時々」

 急に話しかけられて隣のワカクサ、軽く彼の肩をたたく。

「ま、オセンチな話はオシゴトの後でゆっくり、ね」


 それでも気力を振り絞り、こんな敵相手でも一生けんめい戦いはしたのだ。

 それがいきなり「待った」ときたもんだから、バラ、斬り込みの態勢を崩し

「何だよ」休めの姿勢になった。

「斬っちゃいなさいよ、早く」イラチのあかね・サクラが横でせっつく。

 いばりくさった口調で、オゾーンが言った。

「私を斬ることはできぬぞ、変化たちよ」

「くっそー」アサギもムカついた様子。

「たかだかタンクのクセして、デカい口たたきやがる」

 バラ、刃先をアンドロイドに突きつける。

「どーして斬れねえんだよ」

 敵は悠々と答えた。

「なぜならば、私を破壊すると大量のフロンガスが放出され、地球のオゾン層に多大なダメージを与えるからだ」

「おっきく出たわねー」サクラ、けっこう喜んでいる。

「大量って、どのくらいなの」ウコンが聞いた。

 オゾーン、少しばかり考えるように間をあけてから「かなりのもんだ」

「なーんだ」バラは安心したように太刀を構えなおした。

「大爆発でもすんのかと思った。そんじゃ、この世の闇を斬り裂く……」

「まてまてまてまてまて、聞いてください」敵はあわてた。

「お前ら、何とも思わぬのか」

「何を」

「オゾン層を護ろー、とか、地球を大切にね、とか」

「いや特には」バラ、左側にいたアサギをちらとみる。アサギ、軽く肩をすくめる。

 バラは代表して答えた。「そんなコトまで、考えてねーよ」

 急にオゾーン、低く嗤い出す。伍人衆、ぎょっとして身構えた。

「お前ら、知らぬとみえる」

「何をだ」

「伍人衆の掟をだ」

 バラ変化、首かしげて他の変化と顔を見合わせる。

「なにそれ」

「教えて、ほしいか」

 敵の声がぐん、と下がり、バラは思わず身を乗り出す。

「ああ」

「伍人衆の掟、其の一」他の変化も知らず知らず、もう一歩ずつ前に出る。

「『世のため、人のため、正義に反することをするべからず』」

「してねーし」

「いや、オゾン層破壊は、正義に反することだ。それは、解るな」

「ったってなー」バラはあやふやな声をあげる。

「ゴチャゴチャ言わせてねえで、はよ斬れや」アサギ、とうとう堪忍袋の緒が切れたようだ。しかしオゾーンは動じた様子がない。

「斬ってみるがよかろう。その代わり、刃が私に触れるか触れぬかのうちに、オマエらは消滅するぞ」

 ロボットの声は、今や聴き取れるか聴き取れないかくらい。そしてゆっくりと一定のリズムをもって響いてくる。

「どうした、斬ってみるがよい」

「うーん」

「やれ」

「なんか……」ウコンがぼんやりとつぶやいた。

「なんかさ、頭痛くなってきた」

「アタシも」サクラが頭を押さえている。

「オイ、ウメボシ」アサギの声も、どこか不明瞭だ。

「ヤバイぜ、なんか、これ……」

「うん……」バラ変化、じりじりと敵との間を詰めつつも、やっとのことで声を出す。

「オレも頭痛え。何だかヘンな感じするな」

「オメエが狙ってるからじゃねえのか?」え、何を? という顔でふり向くバラにアサギが続ける。

「あのクソタンクを」

「マジかよ」

 オゾーンはその間にも、骨の髄まで響くような気味の悪い唸りをたてながら、少しずつ、にじり寄って来ている。

「その通りだバラ変化。お前が掟に反する行動を取り続ける限り、お前らのパワーは少しずつ無くなって」

「嘘だ」今まで黙っていたワカクサが急に叫んだ。

「バラちゃん、早より、早よ斬って、間に合わんくなる。コレは……」

「ダメよ」サクラもひとり言のようにつぶやく。

「斬ったら、みんな死ぬわ」

「死なへんて」

「いや」アサギも額に手をやっている。「オマエ、掟も忘れたのか? ワカ」

「ヤツの言うこと、嘘や」そう言うワカクサの声も、苦しげだ。

「どうして分かる?」

 バラ変化、すっかり人が変わったような冷たい声でワカクサに向き直った。手には、しっかり破魔の刃を握ったまま。


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