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伍人衆変化<ごにんしゅうへんげ>見参!!  作者: 柿ノ木コジロー
敵か味方か、仲間かタコか。
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ユキ・ミーツ・ギター野郎 02

 次の週か、その次の週くらいのある日。

「見参!」サクラ変化、なんとなく惰性で戦っていた。いまいち、ノリきらない。

「ぎょ」突然、足にアンドロイドの一体が飛び付いた。

「イヤ、なによーコレ」サクラ、足をぶんぶんと振ってみるが、そのチビは振り切れない。

 ふっ、とジェイソンマスクの奥の目が自分と合った。

「え?」サクラの声は、ささやきに近い。

「今、何か言った?」

「ぎ」アンドロイド、絞り出すような声で

「ぎ、ぎたあ」

 ひるんで、動作が止まった一瞬、

  ざぐ

 足を掴んでいたアンドロイドの力が緩んだ。背中から、ばちばちと火花が散る。

 手をゆるゆると放し、ソイツはゆっくりと仰向けに倒れた。

「ダイジョウブか」アサギ変化が、剣を振りおろした形のまま、訊ねた。

 サクラ、ぼおっとしたように足下の機械クズを見おろす。

「ケガしたのか」

 ぎこちなく、彼女は首を横に振った。

 ちょっとばかりためらったアサギだったが

「アサ、後ろっ」

「おぅ」

 すぐに次の敵に立ち向かうべく、くるりと向きを変えて行ってしまった。


「おい」

 後ろから呼びとめられたので見ると、スーちゃんがバイクにまたがって立っていた。

「今日、どーかしたのかよ」

 ユキ、戦闘後のミーティングでみんなに何か言われるんじゃないか、と少し心配はしていた、が、誰も気にしていないようだった。


 いいのよ。アタシにだってたまには欝になる権利はあるわ。


 スーちゃんも黙ってはいたが、やはり気にはなったのだろう。

「ううん、何でもない」ユキはそう答えて、唇を噛んでから

「調子悪かったの、ごめんなさい心配かけて」

 少し目を上げても、スーちゃんはじっと見つめている。

 居心地悪い。普段一緒に戦うことはあっても、こうして素のままで二人きりになるなんてコトは、ほとんどないから。

「そーか」スーちゃんはまだ納得していないみたいだったが、ふと視線を外し

「ならいいけど」少し考えてから

「ちょっとさ、つき合ってほしーとこあんだけど」これはいよいよ珍しい。

「チョーシわるいなら、いいけど」

「どこ」

「オンナにさ、ちょいとやるモンがあって、アクセサリーってヤツか? オレにゃ全然分かんねえから、一緒に見に来てほしーんだけど」

「うわ」ユキ、思わず笑い出す。

「スーちゃん、なかなかイイヒトねえ」

「るせーんだよ」

 ゆき、ふと思い当る店があった。「駅前の方で、近頃オープンしたトコ」

「よし行こう、後ろ乗れ」


 早速行ったお店でピアスを一組、それにユキがじっと見ていた小さなムーンストーンの指輪を

「こんなのが、いーのぉ?」とか言いながらスーちゃん買った後、ユキ、何気なく

「ね、ちょっと裏回ってくれない?」

 頼んでみた。

「いーけど」乗せてってもらったのは、この前の小路のところ。

「ちょっとごめん、そこ入って、左」

 道路から、あのアパートが見えた。「停めて」

「え、何ここ」

 じっと、ユキはアパートの窓をみつめる。スーちゃんは「マフラー、ヘンだよなあやっぱり」とか言って、しきりに下を覗き込んでいる。

 ユキの目が涙でくもった。


 アナタだったのね、きょう。何かもっと言いたそうだった。襲ったワケじゃないのは、アタシはよく分かった。ごめんなさい。忘れないわ、アナタのギター。


 その時、部屋の窓が開いた。ユキ、そのまま凝視。

 小さな洗濯リングにくつ下やらハンカチやら下着やらをごちゃごちゃにくっつけたのを、ちょうど軒下にぶら下げようとしていたのは、まさしく、ものからアンドロイド改良B―3号だった。

 ぽかんと見上げていたユキに気づくと、ソイツはぺこりと頭を下げた。

 頭の中がごちゃごちゃになったユキ、

「ねえ」

 スーちゃん顔を上げた。「あんだよ」

「もーいいわ、ありがとー」

「へ?」すでにアンドロイドは部屋に引っこんで影も形もなかった。まるで事情の分かっていないスーちゃん、それでも素直にアクセルをふかした。


「んじゃーな」

 ユキを家の近くで降ろし、スティーヴン、意味無く何度かアクセルをひねってから

「オマエ」唐突に切り出した。

「なんか、心配ごとあるんだったら、ソーダンしろよ。その、別に、オレでなくても、拓人とかサクとかデンとか、イロイロいるんだから。アテにはなんねえけどよ」

「うん」くすっと笑って

「そーよね、イロイロいるんだから」

 そこでスーちゃん、ポケットから先ほどの包みを一つ、取り出した。

「これ」

「え」意外そうに、ユキは目をしばたかせた。

「アタシに?」

「今日つき合ってくれた手間賃」

「ええ? いいの? 誰かにあげるつもりだったんじゃ……」

「ピアスはね。それはやる」照れている。柄にもなく。このオトコが。

「じゃ、またな」くるりとバイクの向きを変えて、ふり向いて最後に一言。

「言うなよな、アイツらには絶対」

「うん」走り出したスーちゃんの後ろ姿に、ユキは手を振る。

「ありがとー」

 ピアスより、指輪の方が150円高かったんだよな、ユキ、なんとなく心の中にそうつぶやいていた。


 それから少ししたある日。

「あのさ」サク、ファミコンの手を止めてデンちゃんに言った。

「不思議なコトあるんだけど、近頃さ

 ものからの手下のアンドロイドで、小さいのいるじゃん?」

「あー、ビーサンとかいうのね」

「うん」サク、首を傾けて画面を見ながら続ける。

「アレさ、近頃何となく『ぎ、ぎたあ』とかって言ってるみたいに聞こえない? ボクだけ?」

「えっ?」デンちゃん、髪をかき上げた。

「一コだけ?」

「……ううん、小さいのぜんぶ」

 デンちゃん、優しい目をしてサクの肩を抱いた。

「それはね、きっとサクちゃんが疲れすぎなんよ」ふう、と息をしてつぶやいた。

「可哀そうなサクちゃん」

 朔太郎は、尚も首をかしげたまま、コントローラーを操っていた。


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