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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第14章『ほほえみデンタル、訪問診療とレセプト』

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01.レセプト、どうする?

技工物が頼めるようになった翌日。

ほほえみデンタルでは、いつものように診察をしている。

昨日、モニターに表示された『お知らせ』によって、これまでできなかった技工物の発注が可能になった。

だが、技工物の発注ができるようになったからと言って、すぐ対象の患者が来るわけではない。

診療室では、それぞれが目の前の患者への対応を続けている。

できることがひとつ増えたからといって、すぐに診療内容のすべてが変わるわけではなかった。


「う~ん……まぁ、一応できるようになったから一安心ではあるけれども……」


真人はそう言いながら、昨日のお知らせの内容を思い返していた。


「バンバン補綴とかできるようになったわけちゃうしな」


志帆の言葉に真人も頷く。


「そう。材料とかの注文はできないからね」


技工物の受注ができるようになっても、歯科材料についてはまだ待つように言われている。

技工物だけが作れるようになっても、それだけで何でもできるようになったわけではない。

今ある材料で対応できる範囲には限りがある。


「……う~ん……入れ歯を作ってあげてみたいけど……」


大地も考えるように呟いた。


「慣れるまでに時間もかかりそうですねぇ」


智子も続ける。

この世界では、これまで自分たちが行ってきた歯科治療そのものが知られていない。

治療の内容について説明するだけでも時間がかかる。

技工物が必要な治療となれば、患者にとってはそれも初めてのことになる。


「まぁ、そこは臨機応変に。必要な患者さんが来たときに考えようか」


真人はそう言って話をまとめた。

今すぐ対象になる患者がいるわけではない。

必要な患者が来た時に、その時の状態を見ながら考える。

それでいい。

ほほえみデンタルに来院する患者は少しずつ増えてきている。

今はまず、目の前の治療に専念する。

できることが増えては来たが、手放しに喜べる状態ではない。

それでも、以前は選択肢に入れることすらできなかった技工物が作れるようになった。

必要になった時に使える選択肢がひとつ増えたことには変わりなかった。


診療はそのまま続いていった。

それぞれが患者への説明や治療を行い、いつもの診療を進めていく。

しばらくして、直樹が真人へ声をかけた。


「院長、ところでそろそろレセ時期なんですが……」


真人の動きが止まった。


「………そうだった。レセプトがあった」


技工物のことで頭がいっぱいになっていたわけではない。

それでも、直樹から言われるまでレセプトのことが頭から抜けていた。

診療を続けている以上、当然その時期はやってくる。


「どうします?」


直樹に聞かれ、真人は少し考える。


「オンライン請求でやるつもりだったからなぁ……。いや、まぁ介護請求はCDでやるつもりだからCDでしか送れないって言われても問題ないけど……」


日本で開業する予定だった時には、オンライン請求をするつもりで準備を進めていた。

だが、今は日本にいるわけではない。

そもそも予定していた方法で請求できるのかどうかも分からなかった。


「そもそも送れるんですか?」


「そう、そこ!」


真人はすぐに直樹を見る。

問題は請求方法だけではなかった。

請求するために必要なものが、そもそも揃っているのかというところから考えなければならない。


「オンライン請求をするなら支払基金から初期設定用のものが来ないと何もできませんよ?」


「それはそう」


真人は腕を組み考える。

オンライン請求をするのであれば、そのための準備が必要になる。

日本で開業するのであれば、必要なものが届き、そこから設定をして進めていけばいい。

だが、ほほえみデンタルは今、異世界にある。

日本で予定していた流れをそのまま進められる状態ではなかった。


問題はまだ全部解決したわけではない。

昨日は技工物を頼めるようになった。

生活用品も注文できるようになった。

それでも歯科材料はまだ注文できない。

そして今度は、診療を続けていくうえで避けることのできないレセプトの問題が出てきた。


(そもそもレセプト請求できるのかな?……)


真人は腕を組んだまま考え込む。

診療した内容については、これまで通り入力している。

保険診療として行っている内容も、日本で行う予定だったものに沿って進めている。

レセプトを作成すること自体は、おそらく問題ない。

だが、作ったあとにどうするのか。

そこが分からなかった。


「とりあえず、現時点でのチェックだけでもしておきますか」


直樹の言葉に真人は顔を上げる。

今の段階で請求方法が分からなくても、入力した内容を確認することはできる。

間違いがあるのなら、それはそれで先に確認しておいた方がいい。


「ま、何もしないよりましだね。おかしな点がないか確認したいし……。紙レセあとで作っておいてよ。点検するから」


「わかりました」


直樹は事務室に向かいレセプトの準備をする。

真人はその後ろ姿を見送りながら、もう一度考える。

保険診療の入力に誤りがないか。

レセプトがきちんと作成できているか。

そこまでは確認できる。

だが、その先については今のところ何も分からない。


(う~ん………。保険診療の誤りはたぶんないと思うんだけど、レセプトの作成自体も問題ないとは思うけど……。請求するとしたらどこに請求するの?)


真人は深いため息をついた。


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