26話 金盞花
命からがら帰った3人はすぐさま治療される。しかし氷骨病を治せる者は忍村にはいない。マハナの病気は血が抜け体温が下がった事で容態が急変してしまい、ベッドで寝たきりの状態となった。
ナギ「タケルさん本当にすみません。私のせいでマハナが」
タケル「ナギが森でマハナをおぶって帰ってきてくれたみたいだね。ナギがいなければ帰ってくる事は叶わなかったと思うよ」
マハナ「ハァハァ…そうだよー。ナギ。ありがとう。ねぇパパ。ママに会いに行ってもいい?」
マハナは人前ではお父さん、お母さんと呼ぶがもはやそんな事を気にする必要はないと思い、さらに父の事を思って家での呼び方をしている。
タケル 「……分かったよ。明日連れていこう」
マハナ 「じゃあみんなに感染はさせられないから、今日でお別れだね。ナギ、私の生け花会の後輩達とクラスメイトに手紙渡してくれないかな」
枕元に置いてあった手紙を震えた手で掴み、ナギはそれを涙を流しながら受け取る。
ナギ「まか…せろ」
ナギはしゃっくりを出しながら答える。その部屋にはシノブもいるがずっと静かにすすり泣いていた。
マハナ「私の人生ほとんどナギと一緒にいるね」
ナギ「うん…そうだな」
マハナ「私と出会ってくれてありがとう。シノブもワカ先生も学校の皆にも感謝してる。私沢山友達できたし色んな所で頼って貰えたけど、小さい頃はずっと自分の命が長くない事実に泣いていたの。ある日散歩していたら急に寂しくなって泣いてたらある女の子が私に大丈夫?って話しかけてくれたの。それがナギとの出会いだったよね」
ナギは声を出そうとしたが叶わなかった。
マハナ「とっても人見知りのナギだけど、勇気を出して悲しみにくれてる私に手を差し伸べてくれた。そしてそれから同じ時を過ごした。いつからか私はこの子と死ぬまで一緒にいようって決めて親友になってた。学校入ってからはシノブとも仲良くなって放課後は毎日のように一緒にいたよね。たまにケンカして、でもすぐ仲直りして仲直りの為に用意したお菓子がお互い同じものだったり実は気が合ってたよね。2人共私と一緒にいてくれて本当にありがとう。2人のお陰で私の人生は素敵な色になったよ」
浅い呼吸を、続けながらシノブとナギに手を伸ばす。その手を2人は握る。
ナギ「お礼を…言うならこっちの…方だよ。親も兄弟もいない孤独なウチが…毎日楽しく明るく生きていけたのはマハナのお陰だ」
マハナ「私がいなくなっても楽しく生きてね。きっとまた素敵な出会いがナギを待っているはずだから。ナギが幸せにならないと私成仏できないからね!」
シノブ「学校に入った初日に、2人に生意気にも宣誓したのは、それ本当はただ仲良くなりたかったんだ。でも私不器用だからさ。そしたらマハナが友達になろうって言ってくれてさ」
マハナ「私も一目見てこの子と仲良くなりたいって思ってた。そしたら授業終わったあとシノブの方から来てくれて私も嬉しかったんだよ」
マハナ「2人とだったらいくらでも話せるなぁ。明日ママの所に行くまで一緒に話してくれる?」
ナギ「もちろんだ」
シノブ「いっぱい話そう」
タケル「(俺も明日、マサキとマハナと同じ部屋で過ごそう。2人だけが俺の生きがいだったんだ。同じ花を咲かせそう)」
タケルは妻と娘と心中することを決心する。
3人は夜通し語り明かした。普段なら見張りなどをしており永遠にも感じる夜が、その日は一瞬で過ぎ去ってしまう。
―――翌日―――
マハナは担架に乗せられ寝たきりのまま部屋を出ていく。
マハナ「バイバイ皆元気でね。ナギ私の愛刀と真斬はナギに引き継いで貰うよ、花忍法はシノブに任せるね」
ナギとシノブは冷えきったマハナの手を握りながら頷く。
マハナはシノブに耳打ちする。
マハナ「シノブにはちょくちょくお父さんの武具屋に顔を出して欲しい。武具も修練場好きなだけ使っていいから、寂しくなって私達の後を追ったりしないようにしてほしい」
シノブ「わかった。任せて」
マハナ「マハナギシノ班ここで解散とする」
3人「(せめて最後は笑顔で)」
3人は大泣きしながらも笑顔を見せ合い別れる。
タケルは妻と娘のいる部屋に入ろうとしたが、壁1枚を隔ててマハナに説得される。 既に体の至る所から花が咲いているマハナは、もう立ち上がる力はなく壁に背をもたれさせながらタケルと話している。
マハナ「パパのお店はもう忍村で1番だよ。無くなったら皆が困るよ」
タケル「そんな事知らない。俺はマサキとマハナが1番大事だ。誰かが俺の店を継げばいいさ」
マハナ「マハナはパパの仕事誇りに思ってるし、強い人が集まるこの村で名を馳せる忍なんて自慢だよ。だからこれからも村を守ってあげて…」
マハナの葬式は学校の生徒ほぼ全員が訪れていた。皆マハナを尊敬し好きだったのだ。 棺はなく、生前マハナが大事に育てていた花と雷丸に皆は手を合わせた。
その葬式には顔が真っ白になったタケルがいた。ワカは終始タケルに声を掛けている様子だった。
後にナギは双剣を自在に扱えるようになり、シノブも花忍法を修練場に通いながら体得していた。
―――現在 宿―――
ナギ 「これが全てだ」
仲間の全員が静かにナギの話を聞いていた。リクとハルもさらにナギが言葉を紡ぐまで口を閉じつつ、背で咽び泣くマナとルカの感情を感じていた。
ナギ「聞いてくれてありがとう。だからこの刀はウチの宝なんだ。真輪斬が得意技な理由もマハナだ。ウチのほとんどの要素があいつに関わってるんだ」
ナギ「マハナの言う通り素敵な出会いがあって、今4人と一緒にいれる。これからもよろしくな」
マナとルカはナギに抱きつく。リクとハルも近寄る。
ルカ「2人も」
近寄りたいが距離感に戸惑うリクとハルをナギ中心に引き寄せる。
ハル「改めてよろしくナギ」
ナギ「おう。あと1つ伝えたかったことがある。ウチの特技についてだ。今の話の中にもマハナの心情を読み取っているような表現があったと思う」
マナ「うん」
ナギ「ウチは信頼し合っている人の心や考えが少し読めるんだ。でも悪用とかしたことないし、黙って読んでたのは悪いと思ってる…この特技が気持ち悪いと感じさせてしまったらすまん…」
リク「この中で誰か1人でも、1回でもマナの特技を気味悪がったりしたことあるか?」
ナギ「……ない」
リク「ナギの特技に対しても思うはずがないだろ」
ハル「コンビネーション力高いと思ってたけどそういう事だったのか」
ルカ「ナギと連携した事で突破できた戦いも沢山あったしね」
ルカがナギを呼び捨てにしていることをナギとリクだけが気づいていた。
マナ「信頼し合ってるとって条件が逆に嬉しくなるね」
リク「本当だな。ナギも俺らの事信頼してくれていたか」
ナギ「当たり前だろ」
ナギはマハナと過ごした時間を忘れず意志を継いでこれからも生きていく。




